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【初心者向け】
freee人事労務
設定から給与計算まで完全解説!
はじめまして、長年IT大手上場企業で財務経理を担当してきた経験を活かし、現在は「エンジョイ経理編集長」として企業のバックオフィス業務効率化を追求している筆者です。本記事では、オンラインで労務管理ができるクラウド型ソフトウェア「freee人事労務」を活用し、日常の人事労務業務を効率化する方法を詳しく解説します。
この記事では、導入から初期設定、従業員管理、勤怠管理、給与計算・年末調整に至るまでの流れを段階的に理解できるよう、ポイントを押さえながら総合的に説明いたします。
組織拡大によって人事労務や給与計算の手間が増える一方、事務に費やせる時間やコストには限りがあります。特に初めて「freee人事労務」を導入する場合、画面構成や設定項目を正確に把握しないと、せっかくのクラウドシステムを使いこなせず非効率になりかねません。そこで本記事では、はじめてfreee人事労務を利用する方でも分かりやすいよう、重要な設定事項や活用ポイントを強調しながら、運用手順を詳解します。
本記事を一読するだけで、自社の状況に合わせた導入プランの作成から、実際の運用フローまで体系的に把握できるでしょう。最終的には給与明細の発行や年末調整など、年間を通じた労務関連作業を一元管理できるようになるはずです。どうぞ最後までお付き合いください。
1. freee人事労務とは
まずは「freee人事労務」の概要を理解しましょう。
freee人事労務は、従業員の入退社手続きから勤怠管理、給与計算、年末調整など一連の労務業務をクラウド上で行えるソフトウェアです。経営者や人事・総務担当者の負担を軽減し、ミスを最小限に抑えながらスピーディーに業務を進めることを目指しています。
クラウド型のメリット
- どこからでもアクセス可能:オフィスだけでなく在宅や出張先でも作業ができます。
- 自動アップデートによる最新法令対応:法改正時の対応や保険料率などがシステムの更新で自動反映されるため、利用者が複雑な手続きをする必要がありません。
- セキュリティ管理の負担軽減:クラウドサービスとして提供されるため、データはセキュアな環境で保管され、従業員の個人情報を安全に管理できます。
主な機能
- 従業員管理:入退社情報や基本情報を登録・一元管理
- 勤怠管理:打刻や日々の勤怠情報をオンラインで管理
- 給与計算・明細発行:登録された勤怠や賃金情報をもとに自動計算、WEB明細の配布や紙印刷にも対応
- 年末調整:保険料や控除申告などの書類手続きを簡便化
これらの機能を有機的に連携させることで、事務担当者の工数削減はもちろん、ミス防止にも寄与します。また、従業員ごとにマイページを作成しておくことで、給与明細や勤怠情報を各自が確認・入力できる体制を整えられるのも大きな特徴です。
2. 導入前に準備すべきこと
freee人事労務を導入する前に、最低限クリアしておきたいポイントをご紹介します。ここを疎かにすると初期設定時に混乱し、後から修正が必要になるケースが多いため注意が必要です。
2-1. 行政手続きの完了
会社設立直後や初めて従業員を雇用する場合、社会保険・労働保険関連の手続きがまだ済んでいないことがあります。給与計算の基礎となる健康保険・厚生年金・雇用保険の事業所手続きは必ず事前に完了しておきましょう。
2-2. 社内規定や就業規則の整備
- 基本給の算定方法
- 各種手当の設計(通勤手当や住宅手当など)
- 勤怠ルール(残業代の割増率、所定労働時間、休日出勤など)
これらをあらかじめ確定させた上でシステムに設定を反映すると、後々のトラブルを防ぐことができます。特に労働時間や休憩時間のルールは就業規則上の必須項目でもあるため、導入前に労務コンサルタントや社会保険労務士と相談して整合性をチェックしておくと安心です。
2-3. 従業員の個人情報リスト
給与計算に必要な従業員の基本情報(氏名、住所、生年月日、雇用形態、社会保険番号、マイナンバーなど)を一括管理できるようにしておきましょう。あらかじめリスト化しておくと、システムへの登録作業がスムーズになります。
3. 初期設定1:給与規定の登録
システムにログイン後、まず着手すべきは「給与規定」の登録です。給与規定では、締め日や支払日、社会保険の適用有無など事業所の基本となる給与・保険情報を設定します。ここでの設定がすべての計算のベースになるため、慎重に行いましょう。
3-1. 締め日・支払日の設定
- 締め日:月末締め、20日締めなど実際の労働時間集計を終了する日付
- 支払日:給与の振込日(末日払い、翌月○日払いなど)
ここが誤っていると勤怠集計や支給額計算に支障が出るため要注意です。
3-2. 保険・税情報の登録
- 社会保険(健康保険・厚生年金)の適用開始年月
- 雇用保険被保険者の有無や事業所番号
- 労働保険番号
- 源泉徴収税の計算方法(甲欄・乙欄などの設定)
行政手続き済みの正しい番号・適用情報を登録することが大切です。間違いがあった場合、未納や過誤納を引き起こす可能性があるので、最新情報を確認しながら慎重に入力しましょう。
3-3. 扶養控除や保険料率の確認
給与計算では、従業員の控除対象扶養親族の有無や健康保険料率、厚生年金保険料率、雇用保険料率が月ごとに連動します。通常、freee人事労務ではシステム側で最新の保険料率が反映される仕組みになっていますが、念のため導入時には正しい料率が適用されているかを確認しておきましょう。
4. 初期設定2:勤務・賃金の設定
給与規定の登録を終えたら、「勤務・賃金」設定に進みます。ここでは正社員、アルバイト、パート、派遣社員などの雇用形態別に勤務体系を登録し、どの時間帯を所定労働時間とし、残業発生時の割増率をどうするかなど、労務管理上重要なルールを設定します。
4-1. 勤務形態のグループ設定
- 正社員:9:00~18:00(休憩1時間)などの所定時間
- アルバイト:シフト制(早番8:00~17:00、遅番14:00~23:00)
- 派遣社員:請負先によって異なる場合など
勤務形態ごとにグループを作成し、それぞれの所定労働時間と休憩時間を明確にすることで勤怠計算が正しく行われます。
4-2. 時間外割増率の設定
- 残業(法定内・法定外)
- 休日出勤
- 深夜割増(22:00~5:00)
日本の労働基準法に準拠した割増率をシステムに入力します(例:時間外労働は25%、休日労働は35%、深夜労働は25%など)。大企業・中小企業での割増率特例が適用になる場合もあるため、必ず自社規模と実態に合わせて登録しましょう。
4-3. 賃金項目の確認
この段階では各従業員に共通する賃金項目(役職手当、通勤手当、住宅手当など)を設定します。実際の金額は従業員ごとに後で設定できるため、まずはどのような手当・控除項目が必要になるかを洗い出すことがポイントです。
5. 初期設定3:従業員登録と招待
次に行うのが「従業員管理」ページを通じた従業員情報の登録です。事業所側(管理者側)が入力する必須情報と、従業員本人が入力する個人情報の大きく2種類があります。
5-1. 管理者側が登録する情報
- 氏名、雇用形態、給与支給形態(時給・月給・日給など)
- 雇用保険や社会保険の加入有無
- 役職手当や基本給、時給単価などの設定
重要なのは、従業員の報酬単価や手当額を正確に設定することです。あいまいな状態だと給与計算に誤差が生じ、後から手動で修正する手間が増えてしまいます。
5-2. 従業員本人のアカウント登録(利用招待)
freee人事労務では、従業員一人ひとりに対してログインアカウントを発行できるようになっています。会社側で従業員のメールアドレスを登録して招待を送ると、各自がWEB上で以下の情報を直接入力できます。
- 生年月日、住所、マイナンバー
- 扶養家族情報
- 銀行口座情報(給与振込先)
また、従業員自身が出退勤の打刻やシフト登録を行えるため、管理担当者の入力負担が大幅に軽減されます。給与明細や源泉徴収票もWEBで配布できるため、ペーパーレス化も期待できます。
5-3. 従業員リストの確認
登録を完了すると、画面下部に従業員リストが表示されます。リストを見ながら各従業員の情報に抜けや誤りがないかをチェックしましょう。
注意点:登録時にどの月(年度)で情報を反映させるかを誤って設定すると、給与計算のタイミングがずれるおそれがあるため、事前に選択している年月を確認してから登録する習慣を付けるとトラブルを防げます。
6. 日々の勤怠管理方法
freee人事労務を導入したら、日々の勤怠管理が自動化または半自動化できます。特に従業員に利用招待を行い、各自でスマートフォンやPCから打刻してもらうのが効率的です。
6-1. 打刻方法
- 従業員個人のPCやスマートフォン:自宅作業やリモートワークにも対応可能
- 会社に設置したタブレットやPC:一元管理を行う場合に便利
- 管理者側で一括修正・入力:従業員が打刻をしなかった場合の救済措置
打刻内容は自動的にfreee人事労務上に記録され、勤怠ページでひと目で確認できます。時短勤務や休暇申請のデータもオンラインで管理可能です。
6-2. 勤怠締め日後の確認
勤怠締め日(例:末日締め)が過ぎたら、各従業員の勤怠を確認しましょう。
- 残業時間:割増対象となる時間外労働が正確に記録されているか
- 休暇申請:有給休暇や欠勤日数に誤りがないか
- シフト通りに勤務しているか:アルバイトやパートタイマーの場合は特に注意
ここで勤怠データを確定してから給与計算に進むのがベストです。修正が必要な場合は、管理者または従業員本人が訂正を行い、確定するようにしましょう。
7. 給与明細作成と確定手順
勤怠情報が揃ったら、いよいよ給与計算に移ります。freee人事労務では、「給与明細」のページから計算結果を確認し、最終的に明細を確定させるフローになっています。
7-1. 給与計算の自動集計
勤怠ページで登録された労働時間や残業時間、深夜時間などのデータが、「勤務・賃金」設定で定義したルールに基づき自動計算されます。加えて、社会保険料や雇用保険料、源泉所得税なども天引き額がシステム上で算出されます。
7-2. 計算結果のチェック
管理者は給与明細ページで以下をチェックします。
- 支給額の内訳(基本給、手当、時間外手当など)
- 控除額の内訳(健康保険、厚生年金、雇用保険、源泉所得税など)
- 差し引き支給額(実際の振込額が正しいか)
もし支給額や控除額に誤りがある場合、従業員の登録情報や勤怠データを再確認し、必要に応じて修正しましょう。
7-3. 給与明細の確定
全従業員分の給与計算が正常なことを確認したら、「給与明細を確定」ボタンを押します。これにより、その月の給与計算が締められ、確定された状態となります。
確定後に修正する場合は、再度確定解除の処理が必要になるため、漏れがないように注意しましょう。
7-4. 明細の配布方法
freee人事労務では、給与明細をWEB上で各従業員に公開し、メールで通知する機能があります。公開日を指定できるため、たとえば振込日当日に自動で明細が閲覧可能になるよう設定可能です。
紙の明細が必要な場合は、印刷用のPDFをダウンロードして社内プリンタから出力し、従来どおり封入して配布することもできます。
8. 年末調整と保険料率改定への対応
8-1. 年末調整の流れ
freee人事労務には年末調整を補助する機能が備わっています。従業員がWEB上で保険料や配偶者控除、生命保険料控除、住宅ローン控除など必要な情報を入力すると、システムが控除額を自動計算し、源泉徴収票を作成します。
従業員が自分のスマホから申告内容を入力する形で完結するため、紙の書類が行き来する手間が大幅に減ります。計算結果や書類の不備をシステム上でチェックできるため、担当者の確認工数も削減できます。
8-2. 保険料率改定への対応
毎年のように健康保険料率や厚生年金保険料率が見直されることがありますが、freee人事労務の場合はシステムの自動アップデートで対応しているため、通常は利用者側が個別に料率を変更する必要はありません。
ただし、年度途中での増額・減額が必要なケースや事業所独自の特例がある場合は、設定変更が必要になるケースがありますので、しっかり確認するようにしましょう。
9. 運用をさらに効率化するヒント
ここからは、freee人事労務を使いこなし、よりスピーディーで精度の高い労務管理を実現するためのポイントをいくつかご紹介します。
9-1. 他のfreee製品との連携
freee株式会社が提供している「会計ソフト(freee会計)」や「経費精算ソフト(freee経費)」と組み合わせると、給与仕訳や従業員の立替経費精算をスムーズにデータ連携できます。二重入力やミスが減り、経理・総務間の業務がシームレスに進みます。
9-2. 社内での利用マニュアル整備
- 勤怠打刻の方法
- 休暇申請フロー
- 従業員が自身のページで確認する手順
これらを分かりやすくまとめた独自の運用マニュアルを用意することで、問い合わせ対応やトラブルシューティングが格段にスピードアップします。
9-3. 定期的なシステムチェック
- 従業員情報の更新漏れ
- 人事異動や雇用形態変更時の設定
- 給与テーブルの改定
システムをフル活用するためには、人事イベント発生時の設定変更を怠らないことが大切です。月に一度は全従業員の情報を一覧で確認し、異動や変更があった場合はすぐ反映する体制を作りましょう。
10. よくあるQ&A
Q1. 導入コストはどれくらいかかる?
A. freee人事労務の料金プランは従業員数や利用機能に応じて変わります。必要最低限の機能を利用するプランと、社会保険手続きなど多機能を利用するプランがあるため、まずは公式サイトで最新の料金プランを確認しましょう。
Q2. 過去の給与明細や年末調整結果の履歴は保存されますか?
A. freee人事労務では、過去の給与明細や年末調整書類をクラウド上で一定期間保存できます。紙で保管する必要がなくなるため、事務負担や紛失リスクを減らせます。
Q3. 従業員が退職した後の管理はどうなりますか?
A. 退職日を登録し、被保険者資格喪失手続きを行った後、従業員管理から「退職済み」ステータスに切り替えることで管理が可能です。過去の給与明細や源泉徴収票はそのまま記録されるため、再発行にも対応できます。
Q4. 休日に出勤した従業員の勤怠管理はどう設定する?
A. 「勤務・賃金」の設定で**休日出勤時の割増率(35%や1.35倍など)**を設定しておくことで、休日労働時間が自動計算されます。法定休日と所定休日で割増率が異なる場合は、その区別も忘れず設定しましょう。
11. まとめ
freee人事労務は、事業所の労務管理を一元化できる非常に強力なクラウドサービスです。
- 初期設定:事業所情報や給与規定、勤務・賃金設定、従業員登録を正しく行うことがスタートライン
- 日々の運用:勤怠打刻をオンラインで行い、給与計算は自動化できる
- 年末調整などの季節業務:システムが自動サポートしてくれるため、ミスと手間を大幅削減
- さらに効率化:会計ソフトなどとの連携や社内マニュアル整備で業務全般の負荷を軽減
人事・総務担当者が本来取り組むべきコアな業務(従業員とのコミュニケーションや組織開発など)に集中できる環境を整えるためにも、ぜひfreee人事労務を最大限に活用してみてください。
12. 免責事項
- 本記事で紹介した内容は、筆者が執筆時点で確認した情報に基づきます。法令・制度変更や、freee人事労務のバージョンアップなどにより画面仕様や操作方法が異なる場合があります。
- 本記事はあくまで一般的な利用方法を案内するものであり、個別ケースに応じた法的・税務的アドバイスを提供するものではありません。具体的な運用や手続きに関しては、社会保険労務士や税理士、弁護士など専門家へご相談ください。
- 料金プランやサポートサービスの内容は予告なく変更される可能性があります。最新の情報は必ず公式サイトや契約書類でご確認ください。
以上を踏まえ、freee人事労務のメリットと運用ポイントを理解し、自社に適した形で導入・活用いただければ幸いです。