AI活用で有価証券報告書作成は「劇的に」変わる!担当者のための高速化・効率化マニュアル
想像してみてください。
今年もあの分厚い… いや、年に一度の大仕事、有価証券報告書の作成時期がやってきました。山のような資料、膨大な量の文章作成、刻々と迫る締め切り。法改正への対応、子会社からの連結パッケージの催促、監査法人との調整… 考えただけで、すでに肩が重くなる… そんな担当者の皆さん、本当にお疲れ様です。
「去年と同じようにやっても、今年も終電続きかな…」「なんとかして、もっと楽に、もっと速くできないものか…」
そうですよね、私も毎年同じように感じていました。この定型的な作業の繰り返しなのに、なぜこんなにも大変なんだろう、と。
しかし、ここにきて、有価証券報告書の作成プロセスを劇的に、本当に「劇的に」高速化・効率化できる強力な武器が登場しました。それが 「AI(人工知能)」 です。
「AIで有報作成なんてできるの?」と思われるかもしれません。もちろん、AIに全てを丸投げできるわけではありません。しかし、AIを「あなたの最高の、超有能なアシスタント」として賢く活用すれば、これまで何時間、何日もかかっていた作業が、驚くほど短縮される可能性があります。特に、毎年繰り返される定型的な文章作成や、過去の情報を元にした修正、そして厄介な注記や連結パッケージ関連の作業において、AIはその真価を発揮します。
この記事では、「有価証券報告書 作成 AI」というテーマで、私が実際に試行錯誤する中で見つけた、AIを最大限に活用して有価証券報告書作成を乗り切るための、超実践的なマニュアルを惜しみなく公開します。特に、AIへの指示(プロンプト)をどう使うか、「プロンプトだけで完結」に近づけるための具体的な対話術、そして皆さんが最も困るであろう「毎年の開示項目の変更対応」や「連結PKG修正」「注記作成」といった、かゆいところに手が届く具体的なAI活用術に焦点を当てています。
この記事を読めば、あなたはAIと共に、あの苦行を「スマートな作業」に変える第一歩を踏み出せるはずです。さあ、始めましょう!

【はじめに】AIは魔法使いではない、最高の「有能なアシスタント」だ
ステップ1:有価証券報告書作成AI活用マニュアル – 準備編
AI活用を始める前に、まずは足元を固めましょう。闇雲にAIに投げかけるのではなく、AIが最も力を発揮できる環境を整えることが成功の鍵です。
1-1. 「型」を知る・用意する
有価証券報告書作成におけるAI活用の最大の強みは、「既存の型(テンプレート)」を活用できる点です。そして、その最も強力な「型」こそが、他でもない「去年の有価証券報告書」です。
去年の報告書には、自社のビジネスモデル、歴史、リスク、設備、そして複雑な財務情報に関する開示の「骨格」が詰まっています。AIは、この骨格を与えられることで、ゼロから考えるよりもはるかに効率的に、今年の血肉(新しい情報)を盛り込んだドラフトを作成できます。
- 準備物リスト:
- 前年度の有価証券報告書(EDINET提出版のPDFまたはXBRLデータ): これがあなたのAI活用の中心となります。PDFから必要なセクションをコピー&ペーストするか、XBRLデータからテキストを抽出して利用します。
- EDINETタクソノミ(最新版): 金融庁のウェブサイトから入手できます。これは、開示項目やタグの変更点を確認するために不可欠です。AIに直接タグ付けはできませんが、タクソノミ変更が記述項目にどう影響するかをAIに質問する際に役立ちます。
- 確定版 連結・単体財務諸表データ: 会計システムから出力される、監査済みの信頼できる数値データです。MD&Aや注記作成の根拠となります。
- 会社の最新情報が記載された資料群:
- 中期経営計画、事業計画
- 決算説明資料、株主総会資料
- 最新のプレスリリース、IRニュースリリース
- 重要な取締役会議事録
- 内部統制報告書
- 子会社からの情報収集資料(後述の連結パッケージ含む)
- 事業部門からのヒアリング結果、レポート
これらの資料をデジタル形式(テキスト、PDF、Excelなど)で準備しておくことが、AIへのインプットをスムーズにする上で非常に重要です。
1-2. 使用するツールを選定する
AIとの対話を中心とした「有報作成の高速化」を実現するためには、適切なAIツールを選ぶことが第一歩です。
- AI対話ツールの選定:
- ChatGPT (OpenAI): 多くの人が使い慣れており、インターネット上の広範なデータで学習しています。有料版(ChatGPT Plus)では、より高性能なGPT-4モデルが利用でき、無料版より長い文章も扱えるため、有報のような長文ドキュメントのドラフト作成・修正に向いています。プラグイン機能なども活用できる場合があります。
- Gemini (Google): Google検索との連携に強みを持つ場合があります。こちらも有料版が提供されており、長いコンテキスト(対話履歴や入力テキスト)を保持する能力に優れているとされています。有報の複数のセクションを跨いでの整合性チェックなどを依頼する際に有効かもしれません。
- Claude (Anthropic): 特に長い文章の読解や生成に非常に強いと言われています。有報全体の構成を把握させたり、長大な注記のドラフトを作成・修正したりする際にその能力を発揮する可能性があります。
- AI以外の必須ツール:
- 文書作成・表計算ソフト (Microsoft Word, Excel, Google Docs, Sheets): AIが生成したドラフトの最終調整、情報の整理、数値データの管理に使用します。
- PDF編集・変換ソフト: 過去の有報PDFからテキストを抽出したり、必要な部分だけを切り出したりするのに便利です。
- XBRL作成・編集ツール: AIはXBRLタグ付けはできません。これは専門ツールが必要です。
- RONEXUS WORKS(株式会社プロネクサス): 法定開示書類の作成から提出までを一元管理できるシステムとして広く知られています。
- 宝印刷さんの決算開示支援サービス / WizLaboなど: ディスクロージャー専門家のサポートと連携し、自動化ツール等も活用しながら作成・チェック・提出をトータルで支援するサービスの一部として提供されるプラットフォームやツール群です。
- EDINET: 金融庁が提供する提出システムです。最終的な提出はこちらで行います。
- 開示支援会社(印刷会社)のサービス/システム:
- 宝印刷、プロネクサスなど、専門の開示支援会社は、ドラフト編集、XBRL化、提出サポート、そして法改正への対応情報提供など、高品質な有報作成には不可欠な存在です。AIは、彼らに「より完成度の高いドラフトを渡す」ために活用し、彼らとのやり取り回数を減らすことで、全体の効率化を図ります。
1-3. 開示項目の洗い出し方(AIをどう使うか)
有価証券報告書で何を記載すべきか、その「開示項目」は金融商品取引法や内閣府令、そしてEDINETタクソノミによって定められています。この「何を出すか」という根本の判断は、人間(特に法務や経理の専門家)が行う必要があります。
しかし、毎年発生する「開示ルールの変更点」をキャッチアップし、それが自社の有価証券報告書のどこに影響するかを特定する作業は、AIが強力にサポートできます。
AIによる法改正・開示ルール変更への対応例:
- 情報収集: 金融庁や証券取引等監視委員会のウェブサイトで公表される、法改正、府令改正、開示ガイダンス、Q&Aなどの公式情報を入手します。これは人間が一次情報として行います。
- AIに要約・影響分析を依頼: 入手した公式情報のテキストをAIに提供し、有価証券報告書に影響する可能性のある変更点を要約させたり、具体的にどのセクションに、どのような新しい記載が必要になるかを分析させたりします。
AIへの指示(プロンプト)例:
「以下の金融庁が公表した『記述情報の開示の充実に向けたガイダンス』に関する文書を読み、本年度の有価証券報告書作成にあたり、特に新規または拡充が必要となる開示項目とその概要を3点にまとめてください。[ここに文書テキストをペースト]」
「提供するEDINETタクソノミの変更点リスト([ここにタクソノミ変更点リストのテキストをペースト])と、去年の当社の有価証券報告書の目次([ここに去年の有報目次をペースト])を比較し、タクソノミ変更が記載内容に影響を与える可能性のあるセクションをリストアップしてください。考えられる具体的な影響内容についても言及してください。」
「あなたは経験豊富なディスクロージャー担当者です。今回の金商法改正により、サステナビリティ関連情報(気候変動リスク、人的資本など)の開示が重要になりました。当社の既存の有価証券報告書の構成を踏まえ、これらの情報を新たにどこに、どのような視点で記載すべきか、構成案を提案してください。」
ポイント: AIは法的な判断を正確に行えるわけではありません。AIの分析結果はあくまで参考とし、必ず最終的には人間が公式情報に立ち返って確認し、法務や監査法人とも相談して確定してください。AIは、情報量の多い改正内容の「理解のスピードアップ」や「影響範囲検討の叩き台作成」に使うイメージです。
ステップ2:有価証券報告書作成AI活用マニュアル – 実践・ドラフト作成編(プロンプト中心!)
いよいよ、AIとの対話で有価証券報告書のドラフト作成を本格的に始めます。ここがAI活用の核心であり、最も「高速化」と「効率化」を実感できる部分です。基本は、「去年の型+今年の情報=今年のドラフト」をAIに高速で生成・修正させるサイクルを回すことです。
2-1. 基本となるAIへの指示(プロンプト)の考え方
AIに期待通りのドラフトを作成させるためには、明確で具体的な指示(プロンプト)が必要です。以下の要素を盛り込むことで、AIの応答精度が格段に向上します。
- 明確な役割指定: AIにどのような立場で回答してほしいかを指示します。「あなたは当社のIR担当者です」「あなたは連結決算の担当者です」「あなたは法務担当者です」など。これにより、AIの回答のトーンや視点が適切になります。
- 具体的な目的: 何のセクションのドラフトを作成・修正したいのか、その目的を明確に伝えます。「『事業の状況』セクションのドラフトを作成したい」「『重要な会計上の見積り』注記を修正したい」など。
- 十分な入力情報: これが最も重要です。
- 「去年の該当セクションのテキスト」:これがAIが参照する「型」となります。
- 「今年の関連情報」:今年の数値データ、事業の進捗、戦略変更、リスク要因、設備投資計画、子会社からの収集情報など、更新が必要な具体的な事実情報を箇条書きやテキストで提供します。
- 求める出力形式:
- 「去年のフォーマットを踏襲してください」
- 「〇〇字程度でまとめてください」
- 「箇条書きで出力してください」
- 「です・ます調で統一してください」
- Markdown形式の表で出力(注記の表形式など)など、具体的な形式を指定します。
- 制約・注意点:
- 「ネガティブな情報(リスクなど)も客観的に、事実に基づき記載してください。」
- 「専門用語は可能な限り避け、一般の投資家にも分かりやすい表現にしてください。」
- 「法的な正確性は保証できないため、最終確認は人間が行います。」といったAIの限界についても触れておくと、AIもより慎重な応答を生成する場合があります。
2-2. 各セクション別 AI活用術と具体的なプロンプト例
有価証券報告書の主要なセクションごとに、AIの具体的な活用方法と、コピペで使える(情報を置き換えればOKな)プロンプト例を見ていきましょう。これらのプロンプトは、前述の「基本となるプロンプトの考え方」に基づいています。
【重要!】 以下のプロンプト例の [ ]
部分は、必ずあなたの会社の実際の情報(去年のテキスト、今年のデータなど)に置き換えて使用してください。長文をAIにペーストする際は、AIの入力上限(コンテキストウィンドウ)に注意が必要です。上限を超える場合は、セクションを分割したり、重要な部分だけを抜粋したりする工夫が必要です。
セクション:第1部 企業情報 / 第2 事業の状況
事業の内容、経営方針、リスク、MD&Aなど、企業の「物語」を記述するセクションです。AIの文章生成能力が最も活かせます。
AI活用のポイント:
あなたは当社のIR担当者として、有価証券報告書のドラフト作成を手伝ってください。目的:前年度の「事業の状況」セクションの記述を、本年度の状況を反映して更新すること。
入力情報:
- 前年度の「事業の状況」セクション全文テキスト:
[ここに前年度の「事業の状況」セクション全文をペースト]- 本年度の主な変更点・追記・更新情報(箇条書きまたはテキストで):
- 本年度の連結売上高は〇〇円(前期比〇〇%増/減)、営業利益は〇〇円(前期比〇〇%増/減)でした。
- 主要事業である〇〇事業では、特に△△製品が好調でした。その要因は□□です。
- 新たな事業として〇〇分野に進出しました。(進捗や概要を記載)
- 市場環境として、主力の〇〇市場は〇〇(拡大/縮小/横ばい)、競争環境は〇〇(激化/変化なし)しました。
- 経営上のリスクとして、新たに「〇〇リスク」が顕在化する可能性が出てきました。その内容と当社への影響、対応策の概要を記載してください。(前年度リスクの更新情報もあれば追記)
- 経営戦略に変更があり、今後〇〇に注力します。(具体的な戦略内容を記載)
- 重要な子会社の異動(設立、売却など)がありましたら記載。(子会社名、概要、理由など)
求める出力:
- 前年度のセクション構成(事業の内容、経営方針、リスク、MD&Aなど)を維持してください。
- 提供した本年度の情報を自然に盛り込み、文章全体を更新してください。
- MD&A部分では、提供した財務データの増減要因や背景を分析する記述を含めてください。
- 客観的で、かつ読者(投資家)が当社の状況を正確に理解できるようなトーンで記述してください。
- 「将来に関する記述に関する事項」の注意書きも適切に含めてください。
上記情報を元に、本年度の「事業の状況」セクションのドラフトを生成してください。
セクション:第5 経理の状況 / 注記事項
有報作成担当者の最大の難所とも言える注記事項。会計基準の専門知識が必要ですが、記述部分のドラフト作成・修正はAIに依頼できます。特に連結PKGで集約した情報の文章化に役立ちます。
AI活用のポイント: 複雑な数値計算や会計判断はAIに任せられませんが、「ひな形となる去年の注記テキスト」と「今年の数値データや変更に関する情報」を元に、注記の「文章での説明」部分や「会計方針の変更に伴う追記・修正」を依頼します。連結PKGで集約したデータの説明文作成にも有効です。
具体的なプロンプト例
あなたは当社の連結決算担当者です。有価証券報告書の連結財務諸表注記のドラフト作成を手伝ってください。目的:以下の情報に基づき、「セグメント情報」に関する注記の文章部分ドラフトを作成すること。
入力情報:
- 前年度の「セグメント情報」に関する注記全文テキスト:
[ここに前年度の「セグメント情報」注記全文をペースト(会計方針、報告セグメントの概要、セグメント情報に関する文章部分)]- 本年度のセグメントに関する更新情報(集約済みの連結PKGデータ概要など):
- 本年度の報告セグメントは前年度から変更ありません。(もし変更があればその内容、変更理由、影響などを詳細に記載)
- 各報告セグメントの業績(売上高、セグメント利益など)は以下の通りです。
- 「〇〇セグメント」:売上高 〇〇円(前期比〇〇%増/減)、セグメント利益 〇〇円(前期比〇〇%増/減)。売上増減の主な要因は△△です。利益増減の主な要因は□□です。
- 「△△セグメント」:売上高 〇〇円(前期比〇〇%増/減)、セグメント利益 〇〇円(前期比〇〇%増/減)。売上増減の主な要因は▲▲です。利益増減の主な要因は■■です。
- (他のセグメントについても同様に記載)
- セグメント資産の状況に特筆すべき変更はありません。(重要な変更があれば詳細に記載)
- セグメント間取引に関する重要な変更はありません。(重要な変更があれば詳細に記載)
- 所在地別情報、主要顧客情報についても、前年度から特筆すべき変更はありません。(重要な変更があれば詳細に記載)
求める出力:
- 前年度の注記の構成(会計方針、報告セグメントの概要、各情報の記載順など)と表現を参考にしてください。
- 提供した本年度のセグメント業績の概要と増減要因を分かりやすく記述してください。
- セグメントに関する会計方針に変更があれば、その旨を追記・修正してください。
- 注記の表形式の部分は含めず、表の説明文や数値の解説、変更に関する記述といった文章部分のみを生成してください。
上記情報を元に、本年度の「セグメント情報」注記の文章部分ドラフトを生成してください。
別の注記の例(重要な会計上の見積り):
あなたは当社の経理部員です。有価証券報告書の連結財務諸表注記「重要な会計上の見積り」に関する記述のドラフト作成を手伝ってください。目的:前年度の記述と本年度の見積り状況に基づき、本年度の注記ドラフトを作成すること。
入力情報:
- 前年度の「重要な会計上の見積り」注記全文テキスト:
[ここに前年度の「重要な会計上の見積り」注記全文をペースト]- 本年度の見積りに関する更新情報:
- 繰延税金資産の回収可能性に関する見積り:本年度も引き続き、将来の課税所得の見積りに基づいて回収可能性を判断しています。将来の業績予測には不確実性が伴いますが、現在の事業計画に基づき〇〇円の繰延税金資産を計上しています。前期からの重要な変更点はありません。(もし将来予測に重要な変更があった場合はその内容と影響見込みを記載)
- 固定資産の減損に関する見積り:本年度、減損の兆候を認識した資産はありませんでした。(もし兆候があり、減損損失を認識した場合はその資産、内容、金額、見積りの不確実性について詳細に記載)
- 製品保証引当金に関する見積り:過去の保証費用実績と、本年度の製品品質に関する情報を元に見積りを行っています。見積り方法や重要な仮定に前期からの変更はありません。(もし変更があった場合はその内容と影響見込みを記載)
- その他、前期からの重要な会計上の見積りに関する変更点はありません。
求める出力:
- 前年度の注記の構成と表現を参考にしてください。
- 提供した本年度の見積り状況に関する情報を反映させてください。
- 特に「見積りの不確実性の内容」とその「翌年度の連結財務諸表に与える影響」について、分かりやすく記述してください。
上記情報を元に、本年度の「重要な会計上の見積り」注記のドラフトを生成してください。
セクション:子会社等からの情報収集(特に連結PKG)
有報作成の効率を左右する連結PKG。そのフォーマット作成や依頼文作成もAIは支援できます。
AI活用のポイント: 収集したい情報の種類を具体的にリストアップし、それらを盛り込んだフォーマット案(ExcelやCSVにコピペしやすい形式)や、子会社への依頼メール文案を作成させる。
具体的なプロンプト例:
あなたは親会社の連結担当者です。子会社から有価証券報告書作成に必要な情報を収集するための「連結パッケージ(連結PKG)」フォーマット案を作成してください。目的:子会社が報告すべき、連結財務諸表注記に関連する主要情報を網羅したExcelフォーマット案の元を作成すること。
収集したい情報の種類(箇条書き):
- 関連当事者との取引情報(取引先名称、関係性、取引内容、取引金額、取引条件、決済条件)
- 固定資産の取得・売却情報(資産の種類、取得・売却年月日、金額)
- 重要な偶発債務・訴訟情報(相手先、内容、金額、進捗状況)
- 重要な後発事象(発生年月日、内容、財務諸表への影響見込み)
- 報告セグメントに関連する売上、費用、資産、負債(セグメント別の内訳)
- 会計方針の変更や過去の誤謬訂正に関する情報
- その他、開示上重要と思われる、子会社で発生した個別事項
求める出力:
- 上記の情報を盛り込んだ、Excelに貼り付けやすいCSV形式のテキストで出力してください。
- ヘッダー行(項目名)は日本語で明確に記載してください。
- 各項目について、入力すべきデータの種類(例:「テキスト」「数値」「日付」)や簡単な入力指示も、ヘッダー行の下などに補足として加えてください。
- 複数行になる可能性がある項目(訴訟内容など)も考慮してください。
上記情報を元に、連結パッケージの情報収集フォーマット案(CSV形式テキスト)を生成してください。
2-3. 「プロンプトだけで完結」に近い、AIとの対話中心の作業フロー
AIを活用した有報ドラフト作成は、一方的な指示ではなく、AIとの「対話」を通じて進めるのが最も効率的です。目指すのは、「プロンプトだけで完結」とまではいかなくとも、人間は指示と確認・修正指示に集中し、文章作成の実作業はAIに任せるというフローです。
具体的な作業フローは以下のようになります。
- インプット準備: 該当セクションの去年のテキストと、今年の最新情報を手元に用意します。AIツールにコピー&ペーストしやすい形にしておきます。
- 初期ドラフト作成依頼: 用意したインプットと、前述のような具体的なプロンプトをAIに投げかけ、最初のドラフト作成を依頼します。
- AIドラフト受領: AIが数秒〜数十秒でドラフトを生成します。
- 人間によるレビューとフィードバック: 生成されたドラフトを読み、内容の正確性、不足している情報、不適切な表現、去年の記述との整合性などをチェックします。AIの出力は鵜呑みにせず、必ず事実と照合することが極めて重要です。
- 具体的な修正指示(追加プロンプト): レビューで発見した問題点を、AIに具体的に伝えます。「この部分の数値が間違っています。正しくは〇〇です、修正してください」「△△に関する情報が抜けています、これを追加してください。[追加情報テキスト]」「この段落は表現が硬すぎるので、もう少し分かりやすくしてください」「去年の〇〇という表現に戻してください」など、具体的な指示を箇条書きなどで投げかけます。
- AIによる修正ドラフト受領: AIはあなたの指示を受けてドラフトを修正します。
- ③~⑥を繰り返す: あなたが納得できる、関係部署に見せられるレベルのドラフトになるまで、AIとの対話(指示→修正→確認)を繰り返します。このサイクルを高速で回せるのがAI活用の最大のメリットです。
この対話中心のフローを、有報の各セクション(事業の状況、リスク、MD&A、設備、注記など)で並行して進めることで、文章作成にかかる時間を大幅に短縮し、人間は「考える」「判断する」「確認する」といった、より高度で人間にしかできない作業に集中できるようになります。
ステップ3:有価証券報告書作成AI活用マニュアル – 情報収集・連携編
有価証券報告書は、社内の様々な部署や子会社からの情報が集約されて完成します。この情報収集と、外部(監査法人、開示支援会社)との連携プロセスでも、AIはあなたの作業を間接的に、あるいは直接的にサポートしてくれます。
3-1. 子会社等からの情報収集(特に連結PKG)フォーマット作成支援
連結財務諸表や複雑な注記を作成するためには、子会社や関連会社から統一されたフォーマットで、タイムリーに情報を収集することが必須です。これが「連結パッケージ(連結PKG)」と呼ばれるものです。このPKGのフォーマット設計や、子会社への依頼・説明文作成にもAIは活用できます。
AI活用のポイント:
収集フォーマット案の叩き台作成: 収集したい情報項目(財務数値、注記関連情報、重要な契約、訴訟、後発事象など)をAIに伝え、ExcelやCSV形式で使いやすいフォーマットの案を作成させます。AIは表形式のデータ生成も得意な場合があります(ただし複雑な計算やクロス集計は別途必要)。
入力ガイド・説明文作成: フォーマットの各項目について、子会社担当者が迷わないように、どのような情報を記載すべきか、具体的な入力例を含めた説明文をAIに作成させます。
依頼メール・文書作成: 子会社に対して、連結PKGの提出を依頼する丁寧かつ明確なメール文や依頼文書をAIに作成させます。提出期限や提出方法、問い合わせ先などを盛り込みます。
AIへの指示(プロンプト)例:
「あなたは親会社の連結担当者です。子会社向けの連結パッケージ入力ガイドを作成したいです。特に『関連当事者との取引情報』の項目について、子会社担当者が取引内容、取引金額、取引条件などを正確に記載できるよう、分かりやすい説明文と簡単な入力例を記述してください。」
「来期から連結パッケージで新たに収集したい情報項目リスト([ここに新しい収集項目のリストをペースト])があります。既存の連結パッケージフォーマット案([ここに既存フォーマット案のテキストをペースト])にこれらの項目を追加し、子会社が入力しやすいように再構成したフォーマット案をCSV形式で出力してください。新しい項目については、簡単な入力ガイドも追記してください。」
「あなたは親会社の経理部員です。各子会社の経理担当者へ、本年度の連結パッケージ提出に関するリマインダーメールを送りたいです。提出期限が〇月〇日に迫っていること、提出物の再確認のお願い、何か問題があればすぐに親会社担当者(〇〇)まで連絡してほしい旨を、丁寧な言葉遣いで記述してください。」
3-2. 収集すべき資料リストの具体例(AI活用は間接的)
有価証券報告書の作成には、社内外から実に多岐にわたる資料を収集する必要があります。これらの「何を収集するか」のリストアップ自体は、主に過去の経験やチェックリストに基づいて人間が行いますが、AIはこれらの資料の内容を理解し、要約し、有報の記述に反映させる際に強力にサポートします。
以下に、収集すべき主要な資料のリストを挙げます。
- 財務関連:
- 連結・単体 財務諸表および注記(確定版、勘定科目明細付き)
- 税務申告書
- 固定資産台帳、減価償却計算書
- 棚卸資産明細
- 借入金明細、リース契約一覧、社債関連資料
- 投資有価証券明細、評価関連資料
- 繰延税金資産・負債の計算根拠資料
- 引当金(貸倒、製品保証、退職給付など)の計算根拠資料
- 事業・経営関連:
- 事業計画、中期経営計画
- 決算説明会資料、株主総会資料
- 最新の組織図、グループ会社一覧
- 子会社・関連会社の定款、登記事項証明書
- 重要な契約書(販売・仕入、ライセンス、M&A関連など)
- 設備投資計画、新設・除却・売却予定資産リスト
- 研究開発に関する内部資料、特許リスト
- 販売実績データ、生産データ、受注残データ
- 業界レポート、市場データ
- 法務・コンプライアンス関連:
- 定款、株式規程
- 取締役会、監査役会、株主総会議事録
- 重要な訴訟・紛争に関する資料
- 重要な許認可、登録情報
- コンプライアンス関連規程、内部通報状況
- リスク管理規程、リスク評価結果報告
- 人事・労務関連:
- 従業員数データ(セグメント別、地域別など)
- 労働組合に関する情報
- 役員報酬規程、役員退職慰労金規程
- AIによる資料内容の活用例:
- 収集した大量の会議議事録から、有報の記載に関連しそうな経営判断や重要な決定事項を抽出・要約させる。
- 「以下の決算説明資料のテキストを読み、有報の『事業の状況』セクションに盛り込むべき、当期の主要なハイライトと今後の見通しに関する記述を抜き出してください。[ここに決算説明資料テキストをペースト]」
- 「提供する重要な契約書の概要テキスト([ここに契約概要をペースト])を元に、有価証券報告書「事業の状況」セクション内の「重要な契約等」に関する記述ドラフトを作成してください。」
ステップ4:有価証券報告書作成AI活用マニュアル – レビュー・提出編
AIでドラフトが作成できたら、いよいよ最終チェックと提出の段階です。ここでもAIは、完全に代行はできないまでも、一部の作業を効率化してくれます。
4-1. ドラフトのレビューと最終化
AIが生成したドラフトはあくまで叩き台です。内容の正確性、法律・会計基準への準拠、そして会社としてのメッセージとの整合性など、人間の目による厳格なレビューが不可欠です。経営層、関係部署(法務、IR、事業部門など)、監査法人による確認を経て、最終稿が完成します。
- AI活用のポイント:
- 文章表現の推敲支援: 「この文章をより簡潔にしてください」「この部分をもっと丁寧に説明してください」「です・ます調に統一してください」など、表現の修正指示をAIに依頼します。
- 用語の統一性チェック(限定的): AIにドラフト全体を読ませ、「『顧客』という言葉と『得意先』という言葉が混在していますが、どちらかに統一しますか?」のように、用語の揺れや不一致を指摘させる(ただし、長文では精度に限界があります)。
- レビュー用の要約: 長いセクションや注記を、レビューアが短時間で概要を把握できるよう、AIに要約させます。
- 特定の情報の抽出: レビューアから「リスク情報に関する記述だけまとめて読みたい」といった要望があった際に、AIに該当部分だけを抜き出させる。
- AIへの指示(プロンプト)例:
- 「以下の『経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析』セクションのドラフト全体を読み、より論理的な文章構成になるように改善提案をしてください。」
- 「ドラフトの中から、当社の将来の業績や見通しに関する記述を全て抜き出してください。」
- 「以下の注記ドラフトを、専門家以外にも分かりやすい表現に修正してください。特に〇〇に関する説明を補足してください。」
4-2. XBRL化と開示支援会社との連携
AIは現在のところ、有価証券報告書の形式であるXBRLタグ付けを正確に行うことはできません。XBRL化は、専門のXBRLツールを使用するか、開示支援会社に依頼するのが一般的です。
- 開示支援会社の役割:
- ドラフト原稿の受け取り、誤字脱字チェック、体裁調整。
- XBRL形式への変換とタグ付け。
- EDINETシステムでの提出前チェック、リハーサル提出、本提出代行。
- 法改正に伴う記載要領やタクソノミ変更への対応支援。
- スケジューリング管理、関係者間の調整サポート。
- 希望に応じて製本版の印刷。
- AI活用との連携: AIで作成・修正したドラフトは、開示支援会社が指定する形式(通常はWordファイル)で提出します。AI活用は、この開示支援会社に渡す「元原稿の作成・修正」のスピードと質を劇的に向上させることにあります。これにより、開示支援会社との間での細かい文章修正のやり取りを減らし、彼らのXBRL化作業もスムーズに進むため、全体の作業期間を短縮することが期待できます。
4-3. EDINET提出
最終的に完成したXBRLデータは、金融庁のEDINETシステムを通じて提出されます。この提出作業は、自社のEDINET担当者が行うか、多くの場合は開示支援会社が代行します。AIは、この提出プロセスそのものには直接関与しません。
重要なのは、AIを活用して作成したドラフトが、開示支援会社や監査法人のチェックプロセスを経て、最終的にEDINETの提出要件を満たしているかを人間が責任を持って確認することです。
ステップ5:有価証券報告書作成AI活用マニュアル – 毎年恒例!変更点への対応術
有価証券報告書作成担当者を毎年悩ませるのが、法改正や会計基準の変更、そして自社の事業環境の変化に伴う開示項目の見直しや追記です。この「毎年恒例」の変更点への対応こそ、AIが最も輝く場面の一つです。
5-1. 毎年の開示項目変更にAIで対応(キャッチアップ、制御)
前述の準備段階でも触れましたが、開示ルールの変更は避けて通れません。サステナビリティ情報、人的資本、重要性の原則に基づく記載見直しなど、新しい要求事項は常に出てきます。
- AIによる変更点対応の具体的な活用:
- 情報過多からの解放: 金融庁や専門機関から発表される、膨大で難解な改正関連情報をAIに要約させ、重要な変更点とその概要を素早く把握します。「去年の有報のこのセクションに影響する変更点は何?」といった具体的な質問で、自分に必要な情報だけを抽出させます。
- 影響箇所の特定支援: 法令改正の概要テキストと去年の有報の目次や該当セクションのテキストをAIに渡し、「この改正によって、具体的に有報のどの部分にどのような記載が必要になるか」を分析させ、記載が必要になりそうなセクションや項目をリストアップしてもらいます。これは、担当者が変更点を網羅的に把握し、作業計画を立てる上で非常に有効です。
- 新しい開示項目の記述案作成: 全く新しい開示項目(例:特定のサステナビリティ指標)が必要になった場合、社内で収集・整理した関連データや方針、目標値をAIに提供し、開示ガイダンスの項目立てに沿った記述の初期ドラフトを作成させます。
- AIへの指示(プロンプト)例:
- 「以下の金融庁の『記述情報の開示の充実に向けたガイダンス』のアップデートに関する文書を読み、特に『事業の状況』セクションに関連する重要な変更点を抽出してください。それらの変更点が、具体的にどのような情報の開示を新たに求めているのかも記述してください。[ここに金融庁文書のテキストをペースト]」
- 「今回のEDINETタクソノミの変更で、新たに〇〇(例:セグメント別〇〇費用)のタグが追加されました。これは、有価証券報告書のどのセクションの、どのような記述に影響を与える可能性がありますか?去年の有報の関連セクション([ここに去年の関連セクションテキストをペースト])を踏まえて考察してください。」
- 「当社の人的資本に関する開示として、以下の情報を盛り込みたいです。[ここに人的資本関連データや方針テキスト] 新たに有価証券報告書に設ける『サステナビリティに関する情報』セクションの中で、これらの情報をどのように構成し、記述すべきか、ドラフト案を作成してください。他社の開示事例(もし提供可能であれば)も参考にしてください。」
5-2. 連結PKGや注記の修正効率化
会計基準の改正、子会社の増減、事業内容の変更などにより、子会社から収集する連結PKGの項目や、連結財務諸表注記の記載内容も毎年見直しや修正が必要になります。
- AIによる修正効率化の具体的な活用:
- 連結PKGフォーマットの改訂案作成: 前年の連結PKGフォーマット案と、今年度から子会社に報告してほしい新しい項目や変更したい項目(例:新しい会計基準適用に伴う項目、事業構造変更に伴うセグメント情報の詳細化)をAIに伝え、改訂版のフォーマット案を作成させます。項目ごとの入力ガイドの修正・追記も依頼できます。
- 注記の記載方針・記述内容の修正: 新しい会計基準(例:収益認識基準の改正、リース会計基準の変更など)が適用される場合、その基準の概要と、自社の会計処理方針、そして去年の関連注記テキストをAIに渡し、「新基準適用後の注記の記述ドラフト」を作成させます。
- 子会社固有情報の文章化支援: 子会社からの連結PKGで報告された個別の重要な情報(例:重要な偶発債務、特定の関連当事者取引の詳細)について、注記に記載するための文章(発生日、内容、金額、進捗など)をAIに整理・記述させます。
- AIへの指示(プロンプト)例:
- 「来期から収益認識に関する会計基準が変更になります。この変更に伴い、連結パッケージで子会社に報告させる『収益認識に関する重要な契約の情報』の収集項目を見直したいです。現在の収集項目リスト([ここに現在の項目リスト])に対し、新基準で特に重要になる視点(例:履行義務の充足時点、取引価格の算定、契約資産・契約負債)を踏まえて、追加または変更すべき収集項目とその定義案を提案してください。」
- 「当社のリース取引について、IFRS第16号に基づく注記が必要です。去年の日本の会計基準に基づくリース注記テキスト([ここに去年のリース注記テキスト])と、IFRS16号の主要な要求事項([ここにIFRS16号の概要や外部解説])、そして当社のリース取引の概要データ([ここにリース料支払額等のデータ])を元に、IFRS16号に基づく『リース』注記の文章部分ドラフトを作成してください。特に、会計方針、B/S計上額、将来のリース料支払額に関する記述を含めてください。」
- 「連結パッケージで、子会社A社から以下の関連当事者取引の報告がありました。[ここにA社からの関連当事者取引報告テキスト] この情報を元に、連結財務諸表注記『関連当事者情報』に記載するための、A社に関する記述ドラフトを作成してください。取引先名称、関係性、取引内容、取引金額、取引条件、決済条件を網羅してください。」
これらのAI活用により、毎年の開示ルール変更や会計基準の改正に伴う、手間のかかる情報収集や記述の修正作業を大幅に効率化し、「毎年ゼロから見直す」という負担を軽減することができます。
まとめ:AIに質問しながら進める有価証券報告書作成フロー
これまで見てきたAI活用術を踏まえると、有価証券報告書の作成は、あなた(担当者)がAIという強力なアシスタントと対話しながら進めるプロジェクトへと変わります。具体的なフローは以下のようになります。
- 【準備段階:AIで情報武装】
- 去年の有報、今年の財務データ、関連資料などをデジタル形式で手元に集めます。
- 使用するAIツール(有料版推奨)を選定。XBRLツールや開示支援会社との連携体制も確認。
- 金融庁等から公開される法改正・開示ルール変更情報をAIに要約させ、変更点の概要と、去年の有報のどこに影響しそうかのアタリをつけさせます。
- 子会社への連結PKG依頼メール文や、収集項目に変更があればそのフォーマット案をAIに作成させます。
- 【ドラフト作成段階:AIと対話】
- 有報の各セクション(事業の状況、リスク、MD&A、設備、注記など)ごとに、以下のAI対話サイクルを高速で回します。
- AIに「去年の該当セクションのテキスト」と「今年の最新情報(数値、事実、変更点)」を提供。
- 具体的なプロンプトで「今年のドラフト作成」「〇〇に修正」「△△を追記」などを依頼。
- AIが生成したドラフトを人間が確認し、必要に応じて修正指示を出す。
- 納得のいくドラフトができるまで、AIとのやり取りを繰り返す。
- 子会社から収集した連結PKGの情報(集約・整理が必要な場合あり)を元に、注記などの文章化をAIに依頼する際も、この対話サイクルを活用します。
- 有報の各セクション(事業の状況、リスク、MD&A、設備、注記など)ごとに、以下のAI対話サイクルを高速で回します。
- 【レビュー・最終化段階:AIで仕上げを効率化】
- AIで作成したドラフト全体を、社内の関係部署(法務、IR、事業部門など)、監査法人にレビュー依頼。
- レビュー指摘事項の修正をAIに依頼(表現修正、説明補足など)。
- 開示支援会社にドラフトを提出。XBRL化や体裁調整はプロに任せます。AI活用で渡すドラフトの質が上がっているため、開示支援会社とのやり取りもスムーズになるはずです。
- 【提出段階:プロの手に委ねる】
- 開示支援会社または自社で、EDINETシステムを通じて最終的なXBRLデータを提出します。
このAI活用フローは、従来の「人間がゼロから考えて書く・調べる・修正する」中心の作業から、「人間は指示と判断・確認を行い、AIが高速でドラフト生成・修正を行う」中心の作業へと、有価証券報告書作成のスタイルを根本から変える可能性を秘めています。
終わりに:AIはあなたの味方
有価証券報告書の作成は、上場企業にとって、そしてこれから上場を目指す企業にとっても、企業の信頼性や透明性を示す非常に重要なプロセスです。その一方で、毎年繰り返される作業の量と質への要求の高さは、担当者にとって大きな負担となっています。
AIは、この長年の課題に対し、「高速化」と「効率化(楽に)」という面で、非常に強力な解決策となり得ます。この記事でご紹介したように、AIを「有能なアシスタント」として賢く、そして具体的なプロンプトを用いて活用することで、従来、多くの時間と労力を費やしていた文章作成や情報整理の作業を劇的に効率化できます。
もちろん、AIが出力した内容の正確性、最新の法令や会計基準への準拠性については、最終的に人間の責任において確認する必要があります。AIはあくまでツールであり、判断主体はあなた自身です。しかし、この強力なツールを使いこなすことで、あなたは定型的な作業の負担から解放され、より創造的で戦略的な業務(例えば、開示内容の質的向上、他社開示事例の分析、IR戦略の立案など)に時間を割けるようになるはずです。
今年の、そしてこれからの有価証券報告書作成は、AIを味方につけて、もっとスマートに、もっと効率的に乗り切りましょう!この記事が、日々有報作成に奮闘されている担当者の皆さんの一助となれば、プロブロガーとしてこれほど嬉しいことはありません。
免責事項
本記事は、AI(生成AI)の活用による有価証券報告書作成業務の効率化に関する一般的な情報提供を目的としており、特定のソフトウェアやサービス利用を推奨するものではありません。また、AIの回答内容の正確性、完全性、適法性、最新性等を保証するものではありません。有価証券報告書は、金融商品取引法に基づき作成される法的文書であり、その記載内容については、開示府令、EDINETタクソノミ、関係当局が公表するQ&Aやガイダンス、企業会計基準等、多岐にわたる法令・規則・基準を遵守する必要があります。AIが出力した内容は、必ずご担当者様の責任において、根拠資料に基づき、最新の法令・基準等との照合、および監査法人や開示支援会社等の専門家への確認を実施してください。AIの利用によって発生したいかなる損害についても、本記事の筆者および公開者は一切の責任を負いません。有価証券報告書の作成にあたっては、必ずご自身の判断と責任において行ってください。