経理担当者こそ株式投資を始めるべき理由
はじめに
経理の仕事は、売上や費用、利益などの数字を扱い、企業の経営を数字面から支える重要なポジションです。特にIT企業の経理業務は、サブスクリプションモデルや無形資産(ソフトウェア、プラットフォーム)に関する会計処理など、ほかの業界とはひと味違った知識が求められます。
そんなIT企業で経理をやってきた私自身の実感として、経理の仕事はまさに“給与をもらいながら企業分析を学べる場所”だと感じています。そして、そのスキルをさらに活かす最適な手段が株式投資です。
「株式投資はリスクが高そう」「専門知識が必要では?」と思う方も多いかもしれません。しかし、日々の経理業務で身につく数字への感度や財務諸表の読解力、経営視点での分析力は、投資に直結する大きな強みとなります。
本記事では、IT企業で経理を務めた筆者の実例を交えながら、「経理担当者が株式投資を始めるべき理由」や「投資を通じてどのように本業へ還元できるのか」をわかりやすく解説します。ぜひ最後までご覧いただき、経理としてのキャリアアップと資産形成の両面でプラスになるヒントをつかんでください。
1. IT企業で経理をやってきた私の投資ストーリー
1-1. サブスク型ビジネスの会計処理が“投資脳”を鍛えた
私は新卒でIT企業に入社し、経理部門に配属されました。そこでは、サブスクリプションモデル(SaaS)での売上計上や、ソフトウェア開発費用の会計処理など、特殊な会計処理を学ぶ機会が多かったのです。具体的には以下のような業務を担当していました。
- サブスク売上の月次計上:月額課金のタイミングとRevenue Recognition(収益認識基準)の整合性を確認
- 開発コストの資産計上:自社開発ソフトウェアに投資した人件費や外注費の取扱い
- 顧客獲得コスト(CAC)のモニタリング:広告宣伝費やパートナー契約費用の投資効果を測定
IT企業特有の「最初は赤字でも将来的に黒字転換が見込めるか」「無形資産への投資がどのタイミングで売上に反映されるか」を把握するには、企業のビジネスモデルを深く理解することが欠かせません。そのプロセスは、まさに「投資家が企業を分析する感覚」とほぼ同じでした。
「これって投資家目線ならどう見えるんだろう?」と考えるうちに、自然と株式投資にも興味が湧き始め、実際に投資を始めてみたところ、想像以上に経理業務との“相乗効果”を感じるようになりました。
1-2. 財務諸表を読み解く力がそのまま“投資家目線”に
IT企業では、決算発表で重視される指標として、**ARR(年間経常収益)やMRR(月次経常収益)**などが注目されます。伝統的な会計処理だけでなく、SaaSやクラウドビジネスに特有のKPIを意識する必要がありました。たとえば、
- ARRがどれくらい伸びているか
- Churn Rate(解約率)は何%か
- LTV(顧客生涯価値)や顧客獲得コストとのバランスはどうか
これらは投資家が「今後の売上拡大余地がどの程度あるか」を測る重要な材料です。経理として日々それらの数字を扱っているうちに、自然と「企業の将来価値をどう数値化し、評価するか」を学ぶことができました。
つまり、経理業務自体が投資家目線を養う絶好のトレーニングになっていたわけです。
2. 給与をもらいながら“投資脳”を鍛えられる理由
2-1. 企業分析と経理業務がほぼ一致
企業分析では「この企業はどのように利益を上げているのか」「将来どの程度成長できるのか」という視点が必要です。これは経理が普段取り組む「どこで利益が出ているのか」「どこに費用がかかっているのか」を把握する作業と同じです。
- サブスクモデルの収益構造を理解しようとすれば、必然的にLTVや解約率などを分析する→投資判断でも必要な考察
- 外注費や広告費の費用対効果を検証する→投資家視点でもコスト構造の良し悪しを判断できる
実際、私は経理として月次損益の分析レポートを作成するとき、「このコストは今後の成長投資なのか? それとも純粋な経費なのか?」を社内の各部署と話し合う機会が多々ありました。そのたびにビジネスモデルと数字の関係を深堀りし、投資家としての洞察も磨かれていったのです。
2-2. 他社や競合の情報収集が“投資材料”になる
IT業界は競合他社や新興企業の動きが激しく、資金調達のニュースや業界再編などが常に起こっています。経理担当者であれば、
- 取引先や競合企業の財務情報・IR資料
- VCや外資ファンドが注目する有望スタートアップ
- 上場/非上場企業を問わず資金調達の動き
などを追いかける機会が少なくありません。これらはそのまま投資判断の材料になります。私は経理として取引先の信用リスクを調べるために、相手企業の決算書や資金調達履歴を調べた結果、「この企業は面白いかもしれない」と思い、自身のポートフォリオに加えた経験もあります。
いわば、社内の仕事をこなしながら自然と投資の情報収集ができるという状態です。これも「給与をもらいながら学びを深められる」大きなメリットだと言えます。
3. 経理担当者が株式投資をするメリット
3-1. 経済ニュースや業界動向に強くなる
IT業界であれば、デジタル庁の取り組み、AIやクラウドの市場拡大、5Gインフラ整備、ブロックチェーンなど、さまざまなキーワードが毎日ニュースに上がります。投資をしていると、こうした情報を“自分事”としてキャッチするようになるため、結果的に本業にもプラスになります。
3-2. 決算書を読み解くスキルをさらに強化
IT企業の経理であっても、他業種の会計に触れる機会はそう多くありません。そこで株式投資を通じて幅広い企業の決算書を読むと、自社にはないビジネスモデルや他の会計処理手法にも触れられます。これが結果として、自社での新規事業の提案や将来的なジョブチェンジの際に非常に役立つリテラシーとなるのです。
3-3. 税務知識の充実とキャリアアップ
個人として株式投資で譲渡益が出たり配当金を受け取ったりする場合は、確定申告が必要になるケースがあります。さらに、損失が出たときの損益通算や繰越控除、配当控除などを調べる過程で、個人税務の知見が深まるでしょう。
IT企業の経理は消費税のインボイス制度や**海外子会社との取引(移転価格税制など)**で複雑なケースに遭遇することもあります。個人税務への理解が高いことは意外と大きな強みになり、社内で相談役になる場面も増えます。
4. 投資が経理業務に還元される好影響
4-1. 未来予測の感覚が身につき、事業計画・予実管理で活躍
IT企業では、将来の成長見込みをどのように数値化するかが重要です。投資家目線で銘柄を分析する際は「将来的な市場規模」や「ユーザー数の伸び」を慎重に見積もります。これがそのまま経理の予算管理や事業計画の策定にも役立ちます。
私自身、経理として社内の新規プロジェクトの損益シミュレーションを担当していたとき、株式投資で学んだ「割引率を用いた将来キャッシュフロー分析」や「類似企業比較(事例リサーチ)」が大いに役立ちました。
4-2. リスク管理への貢献
IT業界は技術進歩や競合の台頭が速く、不透明な要素も多いです。投資では銘柄分散やポートフォリオ管理が常識ですが、経理でも取引先リスクの分散や資金繰り管理のシミュレーションなどが欠かせません。投資で培ったリスク分散の発想を経理業務に持ち込むと、「危険信号を早期に察知する」力が身につきます。
4-3. コミュニケーション能力の向上
意外に見落とされがちですが、投資家目線で他社のIR資料やアナリストレポートを読み解いていると、数字を説明する能力が高まります。IT企業の経理は、開発チームや営業、カスタマーサクセス部門など非財務系の人とコミュニケーションする機会も多いため、わかりやすく数字の背景を伝えるスキルが重宝されます。
5. 投資の始め方
5-1. 少額から慣れたいなら単元未満株もアリ
「最初は大きな金額を投じるのが不安」という方は、1株から買える単元未満株投資も有用です。少額でいろいろな企業に投資し、決算情報や株主向け資料を読み込んでいくのが良い練習になります。ただし、株主優待の条件を満たしにくい、売買手数料が割高などのデメリットもあります。
5-2. 正規(100株単位)でしっかり株主として権利を得る
投資に慣れてきたら、優待や配当、株主総会参加といった正規株主としてのメリットを得るために、100株単位の投資にも挑戦してみると良いでしょう。配当や優待がモチベーションとなり、“株主の視点”をより深く体験できます。IT企業に勤めていると、IRイベントや株主説明会の様子を自分事として感じられるのもメリットです。
5-3. ETFや投信でリスク分散も視野に
個別株が苦手・時間がないという場合は、ETFや投資信託を利用して分散投資するのもひとつの方法です。IT企業の経理で忙しくても、コツコツ毎月積立をするだけで全世界株や特定セクターに分散投資できます。もちろん、個別株ほど企業分析に没頭する楽しさは薄れるかもしれませんが、長期的に資産を育てる手段としては有効です。
6. IT企業経理の私が実感した“投資×経理”の相乗効果
- サブスク型・プラットフォーム型ビジネスの収益構造を深く理解
- 投資家目線を取り入れた結果、チーム内で「なぜこのコストが必要か」を論理的に説明できるようになった。
- 経済ニュースや同業他社の動向をチェックする習慣が身に付いた
- 新しいITサービスや技術トレンドを自分の会社と比較し、将来予測の精度が向上。
- 確定申告で個人税務知識が増え、社内で相談を受ける場面が増加
- 「配当金の税金はどうなる?」「副業している社員の年末調整は?」など、経理として頼りにされる機会が増えた。
- リスク管理・与信管理に投資家視点を活かせるようになった
- 取引先の決算書を見た際に、キャッシュフローや負債構造に着目し、取引条件の見直しを提案。結果的に大きな貸し倒れリスクを避けることができた。
7. 成功へのステップ:投資×経理スキルを高めるコツ
- 普段の経理業務で湧く“疑問”を投資家目線で深掘り
- 「このプロジェクトはどこで利益が出るのか?」「このコストは将来リターンが見込めるのか?」
- 可能な範囲でIR資料や競合情報を追いかける習慣をつける
- 業務の延長として他社事例を収集すると効率的。
- リスク管理や分散投資の考え方を、社内の資金繰りや与信管理にも応用
- 「集中リスクは避ける」「複数の取引先・仕入先を確保」など、投資との共通点が多い。
- 投資の成果よりも“学習プロセス”を重視
- 初期の段階で大きな利益を狙わず、むしろ少額投資で知識と経験を蓄える意識が大切。
8. まとめ:IT企業で経理をやってきた私が実感する、株式投資の真価
- IT企業の経理は、サブスク型や無形資産の会計知識を自然と身につけるため、投資家目線での企業分析に大いに役立つ。
- 給与をもらいながら企業分析や経営数字を学んでいる状態なので、それを株式投資に活かせば、学びのスピードは格段に上がる。
- 経済ニュースや業界のトレンドをリアルタイムでキャッチしやすく、投資で得た知識が本業の業績管理や新規事業の評価にも還元される。
- 確定申告や税制の理解が深まり、社内税務や社員へのアドバイスなど新たな活躍の場が広がる。
IT企業の経理として働くあなたも、ぜひ株式投資を始めてみてください。はじめは「怖い」「難しそう」と感じるかもしれませんが、経理業務で培った数字の感覚とビジネス理解は、投資家として大きなアドバンテージになります。将来的には会社からの給与に加えて、投資によるリターンやスキル向上で、キャリアアップと資産形成を同時に狙うことができるでしょう。
まさに給与をもらいながら最高の学習環境を活かすイメージで、経理×投資の相乗効果を存分に楽しんでください!