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【税理士に聞いた】仮想通貨の税金計算は「総平均法」と「移動平均法」でどう変わる?届出手続きのポイントと確定申告の注意点を徹底解説


仮想通貨の税金計算は
「総平均法」と「移動平均法」でどう変わる?

本記事では、仮想通貨(暗号資産)の税金計算において重要となる「総平均法」と「移動平均法」の違いや、それぞれを選択する際の届出方法、そして注意点について詳しく解説します。また、仮想通貨の損益計算をサポートするサービス「クリプタクト」と、仮想通貨に強い税理士事務所「3コインタックス」の活用法もご紹介。2020年以降の仮想通貨の価格上昇によって利益が出た方や、これから仮想通貨投資を始める方が知っておくべきポイントを網羅的にまとめました。

本記事は大ボリュームとなっていますが、目次を活用して気になる項目をピンポイントでご確認いただくことも可能です。ぜひ最後までご覧いただき、確定申告や税金対策に役立ててください。


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1. 仮想通貨の税金計算における前提知識

仮想通貨(暗号資産)は日本の税制上、基本的に雑所得として扱われるのが原則です。株式やFXのように申告分離課税ではなく、総合課税となり、所得に応じて累進課税が適用される点が特徴といえます。つまり、仮想通貨で得た利益が大きくなればなるほど、適用される所得税率も高くなり、最大で45%(住民税含まず)に達する可能性があります。

また、仮想通貨同士の交換や、仮想通貨で商品を購入した場合なども課税対象となるケースがあるため、正確な損益計算が非常に重要になります。しかし、実際には多数の取引を行うことも多く、一つひとつ計算するのは膨大な作業です。そこで、国税庁がガイドラインとして示しているのが「総平均法」または「移動平均法」を用いた取得価額計算です。

これらの計算方法を理解しておくことで、仮想通貨の税金計算をより正確に、かつ効率的に行うことができます。


2. 総平均法と移動平均法の概要

ここでは、それぞれの方法が具体的にどのように計算されるのかを整理していきます。

2.1 総平均法とは

総平均法は、ある期間内に取得した仮想通貨の総取得額を総取得数量で割り、平均取得価額を求める手法です。わかりやすく言えば、「1年間に取得した仮想通貨の合計購入金額 ÷ 合計購入数量」で平均単価を出し、その平均単価を用いて売却時の損益を計算します。

総平均法の主な特徴

  1. 単価が一定
    1年間を通じて同じ平均単価を用いるため、複数回の取得があっても計算がシンプル。
  2. 取引回数が多い場合、計算がやや簡便
    取引ごとに平均を更新する必要がなく、年単位(もしくは一定期間単位)でまとめて計算する。
  3. 届出は不要
    原則として、何もしなければ総平均法が適用される。

2.2 移動平均法とは

移動平均法では、仮想通貨を取得するたびに、その時点での取得数量と取得額を加味して取得価額の平均単価を都度更新していきます。具体的には、1回目の取得後はもちろん、2回目の取得をした時点で1回目の取得分と2回目の取得分を合計し、取得した仮想通貨の平均単価を算出します。そして3回目の取得時には、1回目と2回目で持っている平均単価にさらに3回目の取得量と購入額を加えて新たな平均単価を導き、それを保有する仮想通貨の「移動後の」平均取得価額とします。

移動平均法の主な特徴

  1. 都度平均を更新するため計算が複雑
    取引があるたびに計算を行う必要があるため、取引回数が多いと手間がかかる。
  2. 仮想通貨の相場変動をより細かく反映
    短期トレードが多い場合や、価格変動が大きい局面では、より細やかな取得価額を算出できる。
  3. 届出が必要
    移動平均法を選択したい場合は、所轄の税務署への「届出」が必須。

3. 総平均法と移動平均法のメリット・デメリット

仮想通貨の損益計算における総平均法と移動平均法。それぞれの主なメリット・デメリットを整理すると、以下のようになります。

方法メリットデメリット
総平均法– 計算が比較的簡単- 届出不要- 取引履歴の管理がシンプル– 相場の急騰・急落があった場合に、実態の取得価額と乖離する可能性がある- 年間通して多くの売買をしている人にとっては損になるケースも
移動平均法– 相場変動を細かく反映できる- 取引状況によっては節税につながるケースもある– 取引のたびに平均単価を再計算する必要があり手間がかかる- 税務署への届出が必須- 一度選ぶと原則として継続が求められる

例えば、取得価格が安い時期に大量に仕込んだあと、価格が高騰したタイミングで売却するようなケースが多い投資家にとっては、移動平均法のほうが利益が小さく算出され、節税につながることもあります。一方で、そもそも取引回数が少なく、算出がシンプルな方が良いという方や、すでに大きく利益が出ていて届出手続きの手間を避けたい方にとっては、総平均法が向いている場合もあります。

結局のところ、自身のトレードスタイル1年間の取引回数・時期によって、どちらを選ぶのが良いかが変わってくるので、シミュレーションを行ってみることが大切です。


4. 届出の必要性と手続き方法

ここからは、移動平均法を選択したい場合に必須となる「届出」に関する具体的な内容を見ていきます。

4.1 届出が必要となるケース

4.2 届出を提出するタイミングと流れ

通常、届出は適用したい年の最初の取引が行われるまでに提出するのが基本的なルールです。ただし、実務上は「年末までに税務署から否認されなければOK」という扱いをされるケースもあります。

  1. 届出書類の作成
    「所得税の総収入金額計算書の提出に関する届出書」または「棚卸資産の評価方法の届出書」など、税務署が指定する形式で書類を準備します。
  2. 税務署へ提出
    所轄の税務署に書類を提出します。提出方法は、直接持参か郵送、またはe-Taxを利用する場合もあります。
  3. 税務署の回答
    一般的に、税務署が「却下」の通知を行わなければ、提出は受理されたとみなされます。つまり、多くの場合は正式な“承認”という形の通知は届きません。何も言われなければ原則としてその年は移動平均法の適用が認められるということになります。

4.3 届出後の税務署からの通知と扱い

届出後、税務署から直接連絡が来るケースは少ないですが、万が一、内容に不備があったり、提出が遅れたりした場合は通知がある可能性があります。もし通知があった場合は速やかに修正し、再度提出しましょう。


5. 選択した計算方法の変更はできる?

総平均法・移動平均法のどちらかを一度選択すると、原則として継続して用いる必要があり、頻繁に変更することはできません。税務署としては、納税者側が都合のいいタイミングで方法を変えて節税を図ることを防ぐため、変更をする場合にはやむを得ない特別な事情連続する3年間の適用といった一定の要件を求めることがあります。

ただし、実務上は次のように考えられています。

  1. 正当な理由があれば変更が認められる可能性がある
    例えば、過去に提出した届出が消滅している、取引形態が大きく変わったなど、合理的な理由がある場合は変更の届出が却下されないこともあります。
  2. とりあえず届出を出してみる
    税務署は、届出書を却下する際には通知を行うため、後出しで提出しても通知がなければOKとみなされるケースが少なくありません。ただし、最終的な判断は税務署の裁量となります。

変更を希望する際は、必ず専門家(税理士)に相談し、提出書類の作成や理由付けをしっかり行うことが大切です。


6. 仮想通貨の税務調査リスクと対処法

仮想通貨が広く普及し始めた昨今、国税庁も仮想通貨の取引に対する監視や情報収集を強化しています。特に大きな利益を得ている投資家や、マイニング・ステーキングなど多角的に仮想通貨を保有している方は調査対象となる可能性が高まります。

6.1 税務調査でチェックされるポイント

  1. 取引履歴の保存状況
    複数の取引所を跨いだ履歴や、海外取引所を含むすべての履歴を保管しているか。
  2. 計算方法の一貫性
    総平均法または移動平均法を選択していることの合理性、届出の有無。
  3. 申告漏れ
    仮想通貨同士の交換や、NFTの売買など、見落としがちな取引が申告から漏れていないか。

6.2 税務調査対策のポイント


7. まとめ

仮想通貨の利益計算で用いる「総平均法」と「移動平均法」は、計算結果に大きな違いをもたらします。どちらを選択するかによって税金が増減する可能性があるため、以下の点を押さえておきましょう。

  1. 総平均法は計算が簡単・届出不要
    しかし、相場変動が大きい場合は実態とズレが生じやすい面もある。
  2. 移動平均法は毎回計算が必要・届出が必須
    取引が多い人ほど手間が増えるが、価格変動を細かく反映でき、節税につながるケースもある。
  3. 届出のタイミングが重要
    年度の初めや取引を開始する前が望ましいが、事後でも認められる可能性あり。
  4. 計算方法の変更は原則困難だが可能性はゼロではない
    3年以上の継続や正当な理由があれば変更が認められるケースもある。

確定申告や税金対策は、誤った方法を取ってしまうと後々の税務調査で追徴課税などのリスクが高まります。まずは自分のトレードスタイルや取引量をしっかり把握し、必要に応じて専門家と相談しながら最適な計算方法を選択・維持することが重要です。


仮想通貨投資は今後ますます活発になると考えられますが、その分税務リスクも大きくなります。正しく手続きを踏み、自分に合った計算方法を選択して、しっかりと確定申告を行いましょう。

免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務アドバイスを行うものではありません。実際の申告や税務対応については、必ず税理士や専門家に相談してください。

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