現代のビジネスシーンにおいて、資料作成はもはや避けられない業務の一つ。企画書、提案書、会議資料など、その種類は多岐にわたり、私たちビジネスパーソンは常に「いかに効率よく、かつ質の高い資料を作るか」という課題に直面しています。
そんな中、Googleの強力なAI、Geminiの登場は資料作成に新たな可能性をもたらしました。特に「Canvas」機能を使えば、まるでプロがデザインしたかのような、美しく分かりやすいビジュアル資料を瞬時に生成できるようになりました。しかし、ここで一つの疑問が浮かびます。「せっかくGeminiで素晴らしい資料ができたのに、いつも慣れているGoogleスライドやPowerPointで自由に編集できないの?」と。
まさにこの記事が、そのあなたの悩みに応えるものです。今回は、GeminiのCanvasで生成した資料の内容を、Google Apps Script(通称GAS)という強力なツールを活用して、なんと一瞬でGoogleスライドに転送し、自由に編集できる状態にする秘技を徹底解説します。
この記事を読めば、資料作成のプロセスが劇的に効率化され、これまで何時間もかかっていた作業が、わずかな時間で完了するようになるでしょう。質の高い資料を、これまで以上にスピーディーに作成し、あなたのビジネスを次のステージへと押し上げるための具体的なステップを、ぜひ最後までご覧ください。

GeminiとGoogle Workspace連携の進化!資料作成の常識が変わる
最近、GeminiのCanvas機能を使った資料作成の進化は目覚ましいものがあります。指示の仕方一つで、驚くほどビジュアルが洗練されたスライドのような資料が生成できるようになったのです。その美しさ、分かりやすさは、一般的なビジネスパーソンが手作業で作るレベルをはるかに超えるもの。まるでプロのデザイナーが作成したかのような高品質な資料が、誰でも手軽に手に入れられる時代になりました。
このようなGeminiとGoogle Workspaceの連携に関する詳細は、こちらの記事も参考にしてください。
【2025年最新】Gemini×Google Workspace コラボレーション機能まとめ!Meet・Chat・スライド・Driveがさらに進化
しかし、このCanvas機能で生成される資料は、基本的にHTMLベース。見た目は素晴らしいものの、「ここをちょっとだけ修正したい」「フォントの色を変えたい」といった細かな調整をしようとすると、HTMLのコードを直接編集するか、再度Geminiに指示を出すしかありません。これは、日頃GoogleスライドやPowerPointで資料作成に慣れている私たちにとって、少々ハードルの高い作業でした。
多くのGoogle Workspaceユーザーは、このように美しい資料をGeminiが作ってくれることは歓迎しつつも、「最終的には、慣れ親しんだGoogleスライドの環境で、もっと自由に、もっと直感的に編集したい」という共通の悩みを抱えていたことでしょう。この「最終的に編集できる自由なスライド形式にできないの?」という切実なニーズこそが、今回のGAS活用術が解決する大きな課題なのです。GeminiとGoogle Workspaceの連携がさらに深まることで、これまでの資料作成の常識は大きく変わろうとしています。
GAS(Google Apps Script)とは?非エンジニアでも使いこなせる理由
今回の資料作成効率化の鍵を握るのが、「GAS(Google Apps Script)」です。GASという言葉を初めて聞く方や、「なんだか難しそう……」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。現在のAI時代においては、非エンジニアでも十分に使いこなせる強力なツールとなっています。
GASとは、Googleが提供するJavaScriptベースのスクリプト言語で、Google Workspaceの各種アプリケーション(Googleドキュメント、Googleスプレッドシート、Googleスライド、Gmailなど)を連携させたり、機能を拡張したりするための簡易なプログラミングプラットフォームです。簡単に言えば、Googleのアプリとアプリを、きめ細やかに結びつけ、自動化されたワークフローやカスタム機能を作り出すための「魔法のコード」のようなものです。
これまでは、GASのコードを書くにはプログラミングの知識が必要でした。しかし、Geminiのような生成AIが登場したことで、状況は一変しました。今やGeminiに「〜〜というGASコードを作ってください」と指示するだけで、適切なコードを瞬時に生成してくれるようになったのです。AIによるプログラミング生成について、より深く知りたい方はこちらの記事もおすすめです。
【完全保存版】生成AIでラクラク書くVBAプログラミング:カテゴリ別プロンプトフレーズ100選
つまり、私たちはコードの内容を完璧に理解する必要はなく、Geminiが生成したコードをコピー&ペーストするだけで、高度な自動化を実現できるようになりました。
だからこそ、「GASはアレルギーがある」と感じていた方も、全く心配する必要はありません。今回のテクニックも、あなたがプログラムコードを一切打ち込むことなく、Geminiの力を借りて実践できるものなので、ぜひ気軽に試してみてください。
Gemini生成内容をGoogleスライドに出力する具体的な手順
それでは、いよいよ本題。GeminiがCanvasで生成した内容を、Googleスライドに出力する具体的な手順をステップバイステップで解説します。この手順通りに進めれば、あなたも短時間でプロレベルのプレゼン資料を手に入れられるはずです。
ステップ1:GeminiにGASコードの生成を指示するプロンプト
まず、Geminiに対して、Googleスライドに出力するためのGASコードを生成するよう指示します。このときのプロンプトが非常に重要です。
以下のように指示してください。
プロンプト例:
`このHTMLスライドをGoogleスライドに出力したいため、そのGASを作ってください。ただし、文字以外の画像などは不要でお願いします。`
【ポイント】「文字以外の画像などは不要でお願いします」の重要性
この一文が、手順をスムーズに進めるための最大の秘訣です。筆者も試行錯誤を重ねた結果、この指示がないとGASが画像データの変換を無理に試み、頻繁にエラーが発生することが分かりました。Geminiに画像を無理に扱わせず、まずはテキストとレイアウト構成だけを優先して出力させることで、安定してGASが動作するようになります。画像は後で手動で挿入すれば、全く問題ありません。
Geminiが生成したGASコードは、一見すると複雑な文字列の羅列に見えますが、内容を理解する必要はありません。そのままコピーする準備をしてください。
ステップ2:GoogleスライドのApp Scriptエディタを開く
次に、GASを実行するための環境を準備します。
1. 新しいGoogleスライドを開きます。Googleドライブからでも、アプリランチャーからでも、普段通りで構いません。
2. Googleスライドの画面上部メニューから「拡張機能」をクリックします。
3. ドロップダウンメニューの中から「App Script」を選択します。
これにより、GASコードを記述・実行するための「スクリプトエディタ」が開きます。
ステップ3:Geminiが生成したGASコードを貼り付け・保存する
スクリプトエディタが開いたら、以下の手順でGeminiが生成したGASコードを貼り付けます。
1. スクリプトエディタには、初期状態でサンプルコード(通常は `function myFunction() { }` のようなコード)が記述されています。これを全て削除します。
2. Geminiが生成したGASコードを、コピー機能を使って全てコピーします。
3. コピーしたコードを、スクリプトエディタの真っ白になった部分に貼り付けます。
4. 貼り付けが完了したら、エディタ上部のフロッピーディスクアイコン(またはファイルメニューの「保存」)をクリックして、プロジェクトを保存します。
保存が成功すると、スクリプト名の横に「createSlides」のような関数名が表示されるはずです。
ステップ4:GASを実行し、Googleスライドへ内容を転送する
いよいよコードを実行し、Geminiの生成内容をGoogleスライドに転送します。
1. スクリプトエディタ上部の「実行」ボタン(再生ボタンのようなアイコン)の隣にあるプルダウンメニューから、「createSlides」という関数が選択されていることを確認します。(もし他の関数名が表示されていても、Geminiが生成したGASコードに記述されているメインの関数名を選択してください。)
2. 「実行」ボタンをクリックします。
【初回実行時の認証】
GASを初めて実行する際には、スクリプトがGoogleアカウントにアクセスするための許可を求められます。これはセキュリティ上必要なステップですので、以下の流れで認証を進めてください。
- 「承認が必要です」というダイアログが表示されたら、「権限を確認」をクリック。
- ご自身のGoogleアカウントを選択します。
- 「Googleが確認していないアプリ」という警告が表示されることがありますが、これはご自身で作成した(あるいはGeminiに作成させた)スクリプトであるため問題ありません。「詳細」をクリックし、画面下部の「(プロジェクト名)に移動」をクリックします。
- スクリプトがGoogleスライドの作成や編集を行うことを許可する旨を確認し、「許可」をクリックします。
認証が完了し、再度実行ボタンを押すと、スクリプトが実行を開始します。通常、数秒から数十秒で完了し、「実行が完了しました」というメッセージが表示されます。
ステップ5:Googleスライドで微調整を加えて完成!
スクリプトの実行が完了したら、元々開いていたGoogleスライドの画面に戻ってみてください。
なんと、先ほどまで真っ白だったスライドの中に、GeminiのCanvasで生成した資料のテキストと基本的なレイアウトが、新しいスライドとして一気にドドンと出現しているはずです!
もちろん、この転送された内容は全て編集可能な状態です。
- テキストの編集: 誤字脱字の修正、文言の調整、フォントの種類やサイズの変更も自由自在です。
- レイアウトの調整: テキストボックスの位置や大きさ、配置などを微調整し、より見やすいスライドに仕上げます。転送直後は少しレイアウトがずれている場合もありますが、Googleスライドの機能で簡単に調整できます。
- 画像の挿入: Canvasで表示されていた画像やアイコンは転送されていないため、ここからは手動で挿入します。Canvasのスクリーンショットを撮って貼り付ける、Geminiに再度画像を生成させる、オリジナルの画像素材を利用するなど、自由に選択できます。Alt属性を設定してSEO対策も忘れずに行いましょう。
まるで魔法のように、Googleスライドの慣れた環境で、Geminiが生成した高品質なテキストとレイアウトをベースに、あなたのオリジナリティを加えることができるのです。これまで手作業でテキストを転記していた手間は、これで完全に解消されます。
効率化の秘訣は「プロンプト」と「エラー対応」にあり
今回のGAS活用術の成功は、適切なプロンプトの指示と、万が一エラーが発生した際の冷静な対応にかかっています。
まず、最も重要なのは先ほども触れた「文字以外の画像などは不要でお願いします」というプロンプトです。Geminiの能力は非常に高いですが、現時点(2025年8月時点での情報に基づく)では、HTML内の画像をGASでGoogleスライドに完璧に変換・転送するのは難しい側面があります。無理に画像を扱わせようとすると、スクリプトが複雑になり、エラー発生のリスクが高まります。テキスト情報とレイアウトの骨格を確実に転送することに集中することで、安定した動作と高い成功率を実現できます。画像は人間が後から追加する方が、はるかに効率的で確実です。
次に、GASの実行中にエラーが発生した場合の対処法です。もしスクリプトがうまく動かない、あるいはエラーメッセージが表示された場合でも、決して諦めないでください。
エラーが発生した場合の対応策:
1. エラーメッセージを確認する: スクリプトエディタの下部や実行ログに、エラーの内容が表示されます。
2. エラー内容をGeminiに伝える: エラーメッセージをコピーするか、スクリーンショットを撮り、Geminiに「このGASコードを実行したら、このようなエラーが出ました。どうすれば修正できますか?」と質問してください。
3. Geminiの指示に従う: Geminiは、エラーの原因を分析し、修正されたGASコードや、問題解決のための具体的なアドバイスを提供してくれます。
生成AIを活用してスクリプトを自動生成し、業務効率化を図るためのより詳細な方法は、以下の記事も参考になります。
ChatGPTを導入するだけでは不十分!より細かい指示でスクリプトを自動生成し、業務効率化する方法
Geminiはマルチモーダル機能を備えているため、単にテキストでエラー内容を伝えるだけでなく、エラー画面のスクリーンショットを画像として読み込ませたり、もし可能であれば動画で状況を説明したりすることも有効です。AIの力を最大限に活用することで、非エンジニアの方でも、複雑なコードの問題をGeminiと一緒に解決できる時代になっているのです。
信頼できる情報源として、Google Apps Scriptに関する詳細なドキュメントはGoogle Developersの公式サイトで確認できます。(※このリンクはGoogle Slides APIに関するGASドキュメントの一例です。必要に応じて他のGASドキュメントも参照可能です。)
このテクニックであなたの資料作成はこう変わる!
GeminiとGASを連携させたこのテクニックを導入することで、あなたの資料作成は劇的に変化します。
1. 短時間で高品質な資料が作成可能に
GeminiのCanvas機能でアイデアを形にし、GASでGoogleスライドへ転送。これまで構想から資料化、そして整形までに要していた膨大な時間が大幅に短縮されます。特に、情報の整理やデザインの基礎固めといった初期段階での時間が劇的に削減されるため、資料作成全体のリードタイムが短くなります。これは、まさに「人類が30分から40分で作れるのか?」という疑問を軽々と超える生産性向上です。
2. テキスト転記の手間が劇的に削減
手作業でPDFや画像からテキストを抽出・転記する作業は、時間もかかり、誤字脱字のリスクも伴う面倒な工程でした。GASを使えば、Geminiが生成したテキスト情報がそのままGoogleスライドに送られるため、この煩雑な作業が一切不要になります。あなたの集中力は、より本質的な「内容の推敲」や「プレゼンテーションの準備」に注ぐことができるでしょう。
3. 慣れた環境(Googleスライド)での柔軟な編集
せっかく生成された美しい資料も、使い慣れないツールで編集するのはストレスです。Googleスライドに転送することで、日頃から使い慣れている環境で、オブジェクトの配置、フォントの微調整、アニメーションの追加など、あらゆる編集作業を自由に行えます。これにより、資料の最終的な品質を妥協することなく、あなたの思い通りのプレゼンテーション資料を完成させることが可能です。
4. 「ここぞ」という重要なプレゼン資料作成時に特に威力を発揮
日常的な会議資料作成はもちろんのこと、特に重要なクライアントへの提案資料や、社内役員への報告資料など、失敗が許されない「ここぞ」という場面でこのテクニックは真価を発揮します。時間をかけずに高品質な資料の土台をAIが用意し、そこに人間の創造性と細やかな調整を加えることで、説得力のあるプレゼンテーションが実現します。
Google WorkspaceとAIの組み合わせは、あなたの働き方を確実に変革し、日々の業務に大きなアドバンテージをもたらすでしょう。
まとめ
今回は、GeminiのCanvas機能で生成した美しい資料の内容を、Google Apps Script(GAS)を使ってGoogleスライドに効率的に出力・転送する方法を詳細に解説しました。
このテクニックは、一見複雑に見えるかもしれませんが、GeminiにGASコードを生成させ、それをコピー&ペーストして実行するというシンプルなステップで実現できます。特に「画像などは不要」というプロンプトの工夫や、エラー発生時のGeminiへの相談方法を理解すれば、非エンジニアの方でも難なく実践できるでしょう。
資料作成は、これからは「AIが下書きを作成し、人間が仕上げる」という新たなフェーズへと移行していきます。
- Geminiでアイデアを瞬時にビジュアル化し、資料の骨格を構築。
- GASでそのテキスト情報をGoogleスライドへスマートに転送。
- Googleスライドの慣れた環境で、画像追加や微調整を加えて完成。
この一連の流れをマスターすることで、あなたは資料作成に費やす時間を大幅に短縮し、より創造的で戦略的な業務に集中できるようになります。高品質なプレゼン資料を、これまで以上にスピーディーに、そしてストレスなく作成できるこの革新的な方法を、ぜひあなたのビジネスに取り入れてみてください。Google Workspaceの専門家である私たちが提唱する、AI時代の新しい資料作成術です。
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免責事項:
本記事で紹介するGeminiの機能、Google Apps Script(GAS)の利用方法、およびその結果については、記載時点の情報に基づいています。GoogleのサービスやAI技術は日々進化しており、将来的に機能の変更や仕様のアップデートが行われる可能性があります。GASの利用には、ご自身のGoogleアカウントへのアクセス権限をスクリプトに付与する必要があります。セキュリティリスクを理解し、信頼できるソースから提供されたスクリプトのみを使用してください。また、AIが生成する情報は、必ずしも常に正確であるとは限りません。重要な意思決定に利用する際は、必ずご自身で内容を確認・検証し、最終的な責任はユーザーご自身にあります。本記事の内容を実践したことによるいかなる損害についても、筆者および提供元は一切の責任を負いません。