【税理士に聞いた】“絶対に費用計上しない”銀行融資を有利にする「倒産防止共済(経営セーフティ共済)」のやり方

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確定申告・法人

銀行融資を有利にする
「倒産防止共済(経営セーフティ共済)」

の秘密

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  1. はじめに
  2. 1. 倒産防止共済(経営セーフティ共済)とは?
    1. 1-1. 目的と概要
    2. 1-2. 経営者が見落としがちなポイント
  3. 2. 倒産防止共済掛金の“最大のメリット”と特徴
  4. 3. 銀行融資を考えるなら“絶対に費用計上しない”べき理由
    1. 3-1. 銀行が重視する“返済原資=利益”
    2. 3-2. 掛金を費用計上すると利益が減る
    3. 3-3. 倒産防止共済掛金は“資産”計上ができる
  5. 4. 決算書と税務申告の“二重構造”:費用にしない&税務上は費用で落とすテクニック
    1. 4-1. 決算書と税務申告の違い
    2. 4-2. 大まかな流れ
  6. 5. 倒産防止共済掛金の仕訳と別表の具体的書き方
    1. 5-1. 会計処理(仕訳)の例
      1. 倒産防止共済掛金をまとめて年払い(例:月額20万円×12ヶ月=240万円)した場合
      2. 分割払い(毎月20万円)した場合
    2. 5-2. 税務申告書での処理
  7. 6. 銀行融資担当者が見るポイント:なぜ“資産”扱いが評価を上げるのか
    1. 6-1. 資産が増える=安全度が上がる
    2. 6-2. 万が一の資金繰り能力が高い
    3. 6-3. 「倒産防止共済掛金」と明示するとさらに好印象
  8. 7. 倒産防止共済掛金を資産計上することの3つのメリット
  9. 8. 実際にあった“費用処理”の失敗ケースとその改善方法
    1. 8-1. ある会社の例
    2. 8-2. 銀行交渉に影響が出る
    3. 8-3. 改善方法
    4. 8-4. 顧問税理士との連携
  10. 9. 倒産防止共済の解約手当金・貸付制度・節税効果をさらに深掘り
    1. 9-1. 解約手当金
    2. 9-2. 貸付制度
      1. 取引先倒産時の貸付
      2. 取引先倒産以外の貸付
    3. 9-3. 節税効果
  11. 10. 加入要件や注意点:加入期間と元本割れリスク
    1. 10-1. 加入要件
    2. 10-2. 納付可能期間
    3. 10-3. 解約時の注意
    4. 10-4. 倒産防止共済“掛け過ぎ”リスク?
  12. 11. 他の共済制度や保険制度との比較
  13. 12. よくあるQ&A:顧問税理士に聞いてみた!
    1. Q1. 「倒産防止共済掛金を費用処理してしまっているのですが、今から変更できますか?」
    2. Q2. 「顧問税理士に資産計上を提案しても『ややこしい』と言われました…」
    3. Q3. 「税務調査で否認されるリスクはありますか?」
    4. Q4. 「損金算入はしているけれど、そもそも倒産防止共済に入るメリットはありますか?」
    5. Q5. 「月々の掛金を増やしたり減らしたりできますか?」
  14. 13. まとめ:倒産防止共済掛金で会社を守り、融資を有利に進める方法
  15. 最後に
    1. 【ご注意・免責事項】

はじめに

こんにちは、「エンジョイ経理」編集長です。私は以前、IT大手上場企業で財務経理の責任者を務めておりました。その経験から、中小企業が資金調達を円滑にするためには決算書の見せ方が非常に大切だと痛感しています。今回は、中小企業や個人事業主の方が“意外と知らずに損をしている”と思われる「倒産防止共済掛金(経営セーフティ共済)」の正しい取り扱いについて、私が顧問税理士に直接うかがった内容をもとに詳しく解説していきます。

この記事は、倒産防止共済掛金を 決算書上で“費用計上せず”に資産として処理 し、かつ 税金計算上は費用として扱う というテクニックを中心にお話しします。この方法を行うかどうかで 銀行融資における評価が大きく左右 される可能性があります。もちろん、それに伴う税務的手続き(別表の記載など)を正しく理解しておく必要がありますので、その点も深く解説していきます。

今回の記事はボリュームがありますが、これを読めば倒産防止共済掛金にまつわる基本から応用、銀行融資対策、実務上の具体的な処理方法まで網羅的にご理解いただけるはずです。どうぞ最後までお付き合いください。



1. 倒産防止共済(経営セーフティ共済)とは?

まずは倒産防止共済がどんな仕組みかを整理してみましょう。正式名称は「中小企業倒産防止共済制度」といい、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する共済制度です。一般には「経営セーフティ共済」という名前でも知られています。

1-1. 目的と概要

  • 目的:取引先が倒産した場合に、連鎖倒産を避けるため、中小機構から必要な資金を借り入れできるようにする制度。
  • 対象:中小企業や個人事業主(一定の要件を満たす必要あり)。
  • 掛金:毎月5,000円~20万円の範囲で自由に設定可能。累計で800万円まで積み立てられる。

たとえば、取引先が突然倒産してしまうと、売掛金が回収できず、資金繰りが厳しくなり連鎖倒産するリスクが高まります。こうした事態を避けるために、積み立てた金額に応じて共済金の貸付を受けられるようになっているわけです。これは中小企業を守る強力な味方と言えるでしょう。

1-2. 経営者が見落としがちなポイント

この共済は“保険”というよりも“積立”に近い性質があります。実際には、掛金を費用計上しても税務上は損金として扱える点で「保険のように見える」という一面はあるのですが、解約時や貸付制度を考えると、性質としては“貯蓄性”が非常に高いと言えます。

中小企業にとって資金繰りは死活問題。経営セーフティ共済に加入しておけば、万一のときの心強い味方になるだけでなく、節税決算書の見栄え(資産計上をすることで)にも関連してくる重要な制度です。


2. 倒産防止共済掛金の“最大のメリット”と特徴

倒産防止共済には数多くのメリットがありますが、特に注目されるのが以下の3点です。

  1. 取引先倒産時の貸付制度
    → 連鎖倒産のリスク回避
  2. 掛金の損金算入が可能
    → 節税効果を得られる
  3. 積立が“資産”としてカウントできる(※決算処理を工夫した場合)
    → 銀行融資での信用度アップ

ただし、“費用計上”するか“資産計上”するかで、銀行に提出する決算書の印象が大きく変わります。後述しますが、倒産防止共済掛金を決算書上で“費用”として扱うと利益が減ってしまい、銀行の評価が下がりかねません。一方で「資産」として処理し、税務上だけ損金算入をする仕組みにすれば、決算書の利益を下げずに、かつ節税もできるというメリットが生まれるのです。


3. 銀行融資を考えるなら“絶対に費用計上しない”べき理由

3-1. 銀行が重視する“返済原資=利益”

銀行融資では、金融機関は借り手企業の決算書を厳しく審査します。その際、特に重視されるのが返済能力、すなわち「どれだけ利益(フリーキャッシュフロー)が生み出せるか」です。
銀行は、決算書の損益計算書で「当期利益」などの数値を眺めながら、「この会社は将来、安定して返済原資を生み出せそうか」を判断します。したがって、利益が多いほど融資は受けやすく、利益が少ないほど融資は受けにくい構造になっています。

3-2. 掛金を費用計上すると利益が減る

もし倒産防止共済掛金を「保険料」という名目で費用処理してしまった場合、掛金の分だけ利益が下がります。
例えば月額20万円、年間240万円を掛金として費用計上しているとしたら、その240万円分だけ 損益計算書の利益が減っている ことになるのです。
利益が下がると、銀行の評価はどうしても下向きになりがちです。

重要ポイント:
どれだけ節税になるとしても、銀行融資を重視するなら“利益”を下げない方が有利になるケースが多い。

3-3. 倒産防止共済掛金は“資産”計上ができる

じつは倒産防止共済掛金は費用にしなくてもよいのです。具体的には、決算書上は資産(「投資その他の資産」など)として計上し、税務申告の段階で損金算入(費用計上)する方法を取ることができます。
これを行うと、決算書の利益は減らず税金計算上は経費として落ちるため、節税効果も得られます。後ほど詳しく解説しますが、税務申告書(別表)で正しい処理を行えば、問題なく損金算入が可能です。


4. 決算書と税務申告の“二重構造”:費用にしない&税務上は費用で落とすテクニック

倒産防止共済掛金を「決算書で費用にしない」と聞くと、「では税金が高くなるのでは?」と心配になる経営者の方も多いでしょう。しかし、その心配は不要です。なぜなら、税務申告上はしっかり経費(損金)として落とすことができるからです。

4-1. 決算書と税務申告の違い

  • 決算書(財務諸表:損益計算書、貸借対照表、株主資本等変動計算書など)
    企業会計のルールに従って作成する。銀行や株主、取引先に提出するための資料でもある。
  • 税務申告書(別表など)
    法人税などの税金計算に特化した書類。企業会計とは別のルール(租税特別措置法や法人税法など)に従って作成する。

通常、会計上の利益と税務上の所得は一致しない場合が多いです。そのため、それを調整するために「別表」という書類を使います。倒産防止共済掛金の場合も、税務上は「損金」として認められるため、決算書では資産計上しつつ、別表で損金に算入するという “二重構造” を巧みに利用するわけです。

4-2. 大まかな流れ

  1. 決算書(損益計算書):倒産防止共済掛金は費用処理せず、資産勘定として処理
  2. 税務申告書(別表):倒産防止共済掛金を損金算入として計上

これを行うと、決算書上は利益を下げずに済みます。一方、税務上はちゃんと費用扱いしているので、掛金の分だけ課税所得を減らすことができ、節税効果が得られます。


5. 倒産防止共済掛金の仕訳と別表の具体的書き方

では、実際にどのような会計処理、税務処理をするかをもう少し具体的に見ていきましょう。

5-1. 会計処理(仕訳)の例

倒産防止共済掛金をまとめて年払い(例:月額20万円×12ヶ月=240万円)した場合

(借方)倒産防止共済掛金 240万円 / (貸方)普通預金 240万円
  • ポイント
    • 「倒産防止共済掛金」は勘定科目として投資その他の資産に計上。
    • 費用ではなく「資産」として処理する。

分割払い(毎月20万円)した場合

(借方)倒産防止共済掛金 20万円 / (貸方)普通預金 20万円
  • これを毎月継続し、累計が最大800万円に達するまで支払うことができる。

5-2. 税務申告書での処理

税務申告書において、倒産防止共済掛金を損金算入する場合、主に以下の書類に記載が必要になります。

  1. 別表7(損金算入明細書)
    • 「損金の額に算入した金額」として、倒産防止共済掛金を記載。
  2. 別表4(所得の金額の計算に関する明細書)
    • 決算書上の「当期利益」から倒産防止共済掛金を“減算”する形で記載。
      例)当期利益1,500万円 → 倒産防止共済掛金240万円 → 1,500万円 – 240万円 = 1,260万円(課税所得ベース)
  3. 別表5-1(利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書)
    • 別表4で減算した金額についても、利益剰余金の増減に反映させるため記載。
    • 「倒産防止共済掛金240万円」などの項目を設け、マイナス計上する。
  4. 事業年度分の適用額明細書
    • 租税特別措置法上の条項(第66条の十一第1項)に基づき、「00374」の区分番号などを記載し、損金算入を明確にする。

とても重要なポイント:
会計上資産にしても、税務上は別表で調整し「損金」として落とす。この二段構えを忘れないように!


6. 銀行融資担当者が見るポイント:なぜ“資産”扱いが評価を上げるのか

銀行融資において、貸借対照表の「資産の部」をどう見せるかはとても大事です。なぜなら、銀行にとっては資産の厚みや安全度が融資審査の基準となるからです。

6-1. 資産が増える=安全度が上がる

倒産防止共済掛金を費用処理せずに資産計上すると、当然ながら貸借対照表の資産が増加します。一般的に、「資産>負債」の状況が続けば、財務が安定している会社と評価されやすいのです。
一方、もし費用処理してしまうと、損益計算書で利益が減少するだけでなく、繰越利益剰余金にも影響してくる可能性があります。結果として、自己資本比率なども低下する方向になるので、あまり好ましくありません。

6-2. 万が一の資金繰り能力が高い

倒産防止共済は、取引先の倒産に限らず、資金繰りに困った際に一定の要件のもとで借入が可能です。掛金の累計額が可視化されると、銀行としても「この会社は共済で○○万円積立てており、いざというときの貸付も期待できる」と見なします。
つまり、会社の安全度合い、資金繰りリスクの管理能力が高いと判断されるわけです。

6-3. 「倒産防止共済掛金」と明示するとさらに好印象

勘定科目を「倒産防止共済掛金」としておくと、銀行の担当者は一目で「経営セーフティ共済」の存在を把握でき、“しっかりリスクヘッジしている会社”という印象を持ちやすくなります。
これをもし「保険積立金」などの別名にしてしまうと、中身がよく分からないため、銀行へのアピールとしてはやや弱いでしょう。


7. 倒産防止共済掛金を資産計上することの3つのメリット

ここではあらためて、倒産防止共済掛金を資産計上することのメリットを整理します。

  1. 利益の維持・向上
    • 費用計上しないため、損益計算書の当期利益が減らない。
    • 銀行融資審査での返済能力を高めた形で提示できる。
  2. 貸借対照表の資産が増える
    • 安全度合いが高い会社として評価されやすい。
    • 自己資本比率の見栄えにも影響。
  3. リスクへの備えを積極的にアピールできる
    • 倒産防止共済は“いざ”というときの貸付制度がある。
    • 「倒産防止共済掛金」と明示することで銀行の評価を高める。

重要ポイント:
倒産防止共済掛金の存在をしっかりと“資産”として見せることが、銀行融資におけるプラス評価につながる。


8. 実際にあった“費用処理”の失敗ケースとその改善方法

ここでは、実際の中小企業でよくあるケースを取り上げてみましょう。

8-1. ある会社の例

  • 年商:2億円
  • 利益:500万円程度
  • 倒産防止共済掛金:年間240万円(月20万円)

この会社は、顧問税理士に指示されるまま、倒産防止共済掛金を「保険料」という費用科目で処理していました。その結果、損益計算書上は当期利益260万円(500万円-240万円)となり、銀行の評価は「利益が少ない」となりがちでした。

8-2. 銀行交渉に影響が出る

当期利益260万円という数字を見ると、銀行は「利益はかろうじてプラスだが、返済原資としては頼りない」と判断し、新規融資や追加融資の際に限度額が思ったほど伸びず、金利条件も渋くなるという結果に。

8-3. 改善方法

そこで、倒産防止共済掛金を決算書上は「投資その他の資産」として資産計上し、税務申告書の別表で損金算入する方式に切り替えました。すると、損益計算書上の利益は500万円になり、銀行は「利益がしっかり出ている」と評価。さらに、貸借対照表上も資産が増えたため、結果的に融資条件が改善しました。

8-4. 顧問税理士との連携

意外にも、顧問税理士は必ずしも“銀行融資対策”を意識していない場合があります。税金の専門家であっても、融資審査の実務まで常に最新情報を把握しているとは限りません。
そのため、経営者側から「融資に強い決算書にしたい」と税理士へ意図を伝えることが重要です。税理士も正しいルールの範囲内であれば、別表処理のアドバイスを柔軟に行ってくれます。


9. 倒産防止共済の解約手当金・貸付制度・節税効果をさらに深掘り

倒産防止共済の魅力は、銀行融資対策だけではありません。解約時のメリットや貸付制度も知っておきましょう。

9-1. 解約手当金

倒産防止共済を解約した場合、解約手当金として積み立ててきた掛金の一定割合が戻ってきます。ただし、以下のポイントに注意が必要です。

  • 掛金の納付期間が12ヶ月未満での任意解約:解約手当金はゼロ
  • 掛金の納付期間が40ヶ月未満:掛金総額を下回る(元本割れ)。
  • 40ヶ月以上:100%以上が戻る(元本割れしない)。

とても重要なポイント:
12ヶ月未満の任意解約は全額没収、40ヶ月未満だと元本割れという事実を必ず把握しておく。

9-2. 貸付制度

取引先倒産時の貸付

取引先が倒産した場合、積み立てている掛金に応じて無担保・無保証人で最大8,000万円まで借り入れが可能です(ただし条件あり)。

取引先倒産以外の貸付

倒産以外の理由でも、一定の条件を満たせば貸付を受けることができます。たとえば、資金繰りが一時的に苦しいときなどにも利用できる可能性があるため、実質的に低利の“社内積立金”のような位置づけとして役立ちます。

9-3. 節税効果

倒産防止共済掛金は、年間最大240万円を損金算入できます。経常的に加入し続ければ、毎年の利益圧縮に役立ちますし、決算前に利益が想定よりも大きく出そうな場合にはまとめて数ヶ月分を前納して、一時的に課税所得を抑えるというテクニックも可能です。


10. 加入要件や注意点:加入期間と元本割れリスク

10-1. 加入要件

  • 事業を継続している中小企業者・個人事業主
  • 1年以上事業を継続していること(新規設立してすぐは不可)
  • 中小企業者の基準(資本金や従業員数など)を満たしていること

10-2. 納付可能期間

  • 掛金納付総額は最大800万円
  • 掛金は毎月5,000円~20万円まで選択可能(増額・減額も可)
  • 納付期間は 最長40年(480ヶ月)

10-3. 解約時の注意

前述の通り、納付期間12ヶ月未満で解約すると、解約手当金はゼロになります。また、40ヶ月未満だと元本割れします。
そのため、加入からある程度の期間(最低でも40ヶ月)を継続してこそ、本当の意味でのメリットを享受できる制度と言えます。

10-4. 倒産防止共済“掛け過ぎ”リスク?

倒産防止共済は非常に優れた制度ですが、キャッシュフロー状況を無視して毎月高額の掛金を払い続けると、手元資金が不足する可能性もあります。無理のない範囲で、経営計画に合わせて掛金額を設定することが重要です。


11. 他の共済制度や保険制度との比較

中小企業向けには、他にもさまざまな共済制度や保険商品があります。たとえば、「小規模企業共済」や「経営者保証免除保険」など。ただし、以下のように目的や特徴が異なるため、用途に合わせて使い分けるのがベストです。

  • 小規模企業共済
    → 経営者自身の退職金積立を目的
    → 個人の所得税の節税効果
  • 一般的な損害保険や生命保険
    → リスクヘッジ・経営者の死亡保障など
  • 倒産防止共済(経営セーフティ共済)
    → 取引先倒産リスクへの備え+短期資金ニーズ(貸付制度)

どれも「保険料」「掛金」などの名目で処理するものですが、税務・会計上の扱いは異なることが多いので要注意です。顧問税理士とよく相談し、銀行融資を重視するなら倒産防止共済掛金は資産計上+別表調整を優先的に検討してみてください。


12. よくあるQ&A:顧問税理士に聞いてみた!

ここでは、私が顧問税理士に実際によく聞く質問と、その回答をまとめてみました。

Q1. 「倒産防止共済掛金を費用処理してしまっているのですが、今から変更できますか?」

A. はい、原則として決算書の作成段階で修正できます。すでに申告が終わっている場合も、一定の条件を満たせば修正申告や更正の請求など手続きが可能なケースがあります。ただし税務リスクや手間がかかるため、まずは顧問税理士と相談してください。

Q2. 「顧問税理士に資産計上を提案しても『ややこしい』と言われました…」

A. 税理士によっては、手間が増える・別表処理が面倒・ミスのリスクがある等の理由で敬遠する場合があるようです。ですが正当に認められた会計処理・税務処理であり、なおかつ銀行融資対策として大きな効果をもたらす可能性が高いです。丁寧に説明し、協力をお願いしましょう。

Q3. 「税務調査で否認されるリスクはありますか?」

A. ルールにのっとって別表処理していれば、基本的には否認されることはありません。ただし、処理や書類記載が不適切だと問題になる場合があります。正しく手続きを行っていれば問題ありません。

Q4. 「損金算入はしているけれど、そもそも倒産防止共済に入るメリットはありますか?」

A. 取引先の倒産リスクに備えるだけでなく、短期的資金繰りの貸付としても活用できます。さらに、40ヶ月以上納付すれば解約時に掛金総額以上が返ってくる可能性もあるなど、“ほぼ貯蓄型”の側面を持っています。万が一の資金ショートを防ぐ重要なセーフティネットです。

Q5. 「月々の掛金を増やしたり減らしたりできますか?」

A. 可能です。月5,000円~20万円の間で、状況に合わせて増減できます。ただし、一度増やした金額をすぐに減らす場合などは所定の手続きや制限がありますので、事前に中小機構の窓口や顧問税理士と確認を行うことが大切です。


13. まとめ:倒産防止共済掛金で会社を守り、融資を有利に進める方法

ここまで長々と解説してきましたが、最後に要点を整理しておきましょう。

  1. 倒産防止共済(経営セーフティ共済)とは
    • 中小企業基盤整備機構が運営
    • 取引先が倒産した際の連鎖倒産を防ぐための貸付制度
    • 最大800万円を積み立て可能、掛金は月5,000円~20万円
  2. 銀行融資の審査は“利益”がカギ
    • 銀行は当期利益(返済原資)を重視
    • 利益が多いほど融資を受けやすくなる
  3. 倒産防止共済掛金を“費用計上”すると銀行評価ダウン
    • その分だけ利益が下がり、融資審査が不利になりがち
  4. 正解は“資産計上”+税務申告で“損金算入”
    • 決算書の利益を維持しながら、税金計算上は経費扱い
    • 別表4や別表7などで調整すればOK
  5. 資産計上のメリット
    • 貸借対照表の資産が増える=安全度アップ
    • リスクへの備え(貸付制度)の存在をアピールできる
  6. 注意点
    • 40ヶ月未満での解約は元本割れ
    • 12ヶ月未満での任意解約は解約手当金ゼロ
    • 加入期間・キャッシュフローには要注意
  7. 顧問税理士との連携がカギ
    • 税理士が必ずしも銀行融資対策に詳しいとは限らない
    • しっかり意図を伝えて、別表処理を漏れなく行う

最重要ポイント:
倒産防止共済掛金は決算書の費用にせず、資産計上しよう。税務上は別表で損金算入する仕組みを徹底すれば、銀行融資の審査で有利になりつつ節税も実現できる。


最後に

倒産防止共済(経営セーフティ共済)は、中小企業にとって強力なセーフティネットであると同時に、銀行融資対策節税にもつながる優れた制度です。しかし、「保険料」として安易に費用処理してしまうと、せっかくの融資審査評価を下げる要因になりかねません。

私はIT大手上場企業の財務経理責任者だったときに、多くの中小企業と取引をしてきましたが、「倒産防止共済に入っているのに、決算書ではそのメリットをまったく活かせていない会社」が想像以上に多かったのです。一方で、顧問税理士に対して「融資評価を上げるための決算書作りをお願いできませんか?」ときちんと要望した企業は、実際により良い金利条件や融資枠を勝ち取っていました。

もし現在、倒産防止共済に加入しているが費用処理しているのであれば、次の決算のタイミングでぜひ資産計上に切り替えることを検討してみてください。あるいは、これから倒産防止共済の加入を検討している方は、最初から資産計上で進めると良いでしょう。

もちろん最終判断は個々の会社の状況次第ですが、この記事が皆さまの経営判断や銀行交渉にお役立ちできれば幸いです。倒産防止共済を上手に使いこなし、安定した経営基盤を築いていきましょう。


【ご注意・免責事項】

本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の企業や個人の状況に応じた税務・会計・法律上の助言を行うものではありません。最終的な判断は、必ず税理士・弁護士・公認会計士などの専門家にご相談いただくことをおすすめいたします。また、本記事の情報は執筆時点の法令や制度にもとづいておりますが、改正等により変更される可能性がありますのでご了承ください。

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