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【監査法人出身・公認会計士の体験談】事業会社経理責任者へ転身!「理想と現実のギャップ」真の役割と成長

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【監査法人出身の公認会計士の体験談】事業会社経理責任者へ転身!「理想と現実のギャップ」真の役割と成長 IPO・上場準備

以下の記事は、エンジョイ経理編集長の知り合いである監査法人出身の公認会計士に頼んで書いていただいたものです。

監査法人での輝かしいキャリアを積み重ねた公認会計士が、満を持して事業会社の経理責任者に転身する——。この決断は、多くの人にとって、その会計知識と経験が事業会社の経営基盤を盤石にする、素晴らしいキャリアパスだと映るかもしれません。しかし、実際にその扉を開き、経理の現場に足を踏み入れると、想像もしなかった「理想と現実のギャップ」に直面し、時には組織が一時的に混乱することさえあります。

監査という「正しさ」を追求する世界と、事業という「成長と変化」を追求する世界。似て非なるこの二つの環境では、求められる役割、思考様式、そして何よりも「成功の定義」が大きく異なります。監査しか知らなかった公認会計士が、事業会社の経理責任者として奮闘する中で見つけた、組織にとって本当に価値ある役割とは何だったのでしょうか。そして、そこでしか得られない「真の学び」とは。【簿記だけでは見えない!経理の仕事内容と全体像を徹底解説】この記事では、監査法人での経験をバックグラウンドに持ちながら、事業会社の経理責任者として新たな挑戦を始めた会計士の視点から、そのリアルな葛藤と、それを乗り越えた先に広がる成長の軌跡を深掘りしていきます。

【監査法人出身の公認会計士の体験談】事業会社経理責任者へ転身!「理想と現実のギャップ」真の役割と成長
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監査の「正しさ」だけでは通用しない!事業会社経理のリアル

監査法人で培った会計知識や専門性は、疑いなく高い価値を持っています。しかし、それがそのまま事業会社の経理部門で「万能な解決策」となるかといえば、現実はそう甘くありません。監査の常識が、事業会社の現場では通用しない場面に数多く直面します。

月次決算や証憑収集は「当たり前」ではない現場の苦悩

監査法人で働いていた頃、私たちは常に「整備された内部統制」と「適切に保管された証憑」が前提の環境で業務を進めていました。期末には部門ごとに分類され、整然とファイリングされた資料が用意され、それに基づいて監査手続を進めるのが常でした。ところが、事業会社、特に成長フェーズにある企業や、まだ組織体制が確立されていない中小企業では、こうした「当たり前」は存在しないことが珍しくありません。

経理責任者として着任し、いざ月次決算を回そうとしても、各部門から必要な証憑がスムーズに集まらない、あるいは「これって何に使うんですか?」と逆に尋ねられることすらあります。売上計上の根拠となる契約書や納品書、費用の発生を証明する請求書や領収書が、営業部門、総務部門、開発部門など、バラバラの場所で管理され、中にはどこにあるかさえ分からないケースもあります。私たちは「なぜこの情報が必要なのか」「誰がいつまでに、どのような形式で提出するのか」といった、監査では考えもしなかった「基本的なルール」をゼロから設計し、各部門に働きかけ、時には説明会を開いて意識改革を促す必要性に迫られます。これは単なる事務作業ではなく、企業全体の情報ガバナンスを構築する、極めて重要な役割となるのです。

仕訳一つを確定させるまでの道のりは遠く険しい

監査では、基本的にすでに計上された仕訳の妥当性を検証する立場でした。取引が会計基準に則っているか、金額は適切か、という「結果の検証」が主な業務です。しかし、経理責任者としては、「なぜこの取引が発生したのか」「その経済的実態はどうなっているのか」「どのような勘定科目で、いくらで計上すべきか」をゼロから判断し、仕訳を組み立てなければなりません。

例えば、新しい事業を開始する際の投資や、複雑な業務委託契約など、会計処理に迷うケースは山ほどあります。その際、単に会計基準に照らし合わせるだけでなく、事業部門の担当者から話を聞き、法務部門に契約書の解釈を確認し、さらには税務上の影響まで検討する必要があります。一つの仕訳を確定させるために、様々な部門との調整、議論、そして責任ある判断が求められます。このプロセスは、監査の時のように「結論が既にあるもの」をチェックするのとは異なり、まさに「結論を創り出す」作業であり、その一つ一つの判断が会社の財務諸表に直接影響を与えるという重責を感じることになります。

「正論」だけでは組織は動かないジレンマ

監査法人でのキャリアは、会計基準や関連法規に基づいた「正論」を提示し、それが尊重される環境で築かれてきました。客観的な事実とルールに基づいて問題点を指摘し、改善を促すことが私たちの役割であり、それが組織全体のガバナンス強化に繋がると信じて疑いませんでした。しかし、事業会社に身を置くと、その「正論」が必ずしも組織を円滑に動かす魔法の言葉ではないことに気づかされます。

例えば、会計処理の厳密性を追求しすぎた結果、事業部門のスピード感が失われたり、非効率なプロセスが生じたりすることがあります。現場からは「会計士の言うことは正しいけれど、それではビジネスが回らない」といった声が聞こえてくることもあります。ここで、監査の時のようにただ「正論」を振りかざすだけでは、周囲の共感も協力も得られず、かえって組織内に溝を生み、停滞を招いてしまう可能性があります。経理責任者には、会計の専門知識を背景にしつつも、事業の特性や実情を深く理解し、現実的な落としどころを見つける柔軟性、そして「正しいこと」と「組織にとって最善のこと」のバランスをいかに取るかという、高度な調整能力が求められるのです。

監査と経理の視点の違い:リスクと変化への向き合い方

監査と事業会社経理。それぞれの立場で「リスク」の捉え方や「変化」への向き合い方が根本的に異なります。この視点の違いを理解しなければ、経理責任者としての真価を発揮することはできません。

「変化がリスク」の監査と「変化しないことがリスク」の企業

監査の現場では、内部統制の変更や会計処理方法の変更は、常に「リスク要因」として捉えられます。変更が生じれば、それが適切に評価され、統制が維持されているかを確認するために、追加の監査手続が必要となることもあります。変化はエラーや不正のリスクを高める可能性を秘めているため、慎重な検討と安定性が求められるのが監査の思考様式です。

一方、事業会社は、激動する市場環境の中で、常に変化に対応し、時には自ら変化を創り出すことが成長の源泉です。新しい技術の導入、新サービスの開発、事業提携、海外展開など、変化を恐れて現状維持に固執することは、競争力を失い、やがては企業の存続を危うくする「最大のリスク」に直結します。経理責任者としては、この事業会社の「変化を良しとする文化」を理解し、その変化を会計面からどのようにサポートできるかを考える必要があります。単に変化に伴うリスクを指摘するだけでなく、そのリスクを管理しつつ、事業を加速させるための具体的な会計的アプローチを提案する能力が求められるのです。

監査では軽視されがちだった「税務処理」の絶大な影響力

監査法人にいた頃、私たちの主要な関心は、企業が会計基準に準拠した適正な財務諸表を作成しているかどうかにありました。税務処理については、連結納税や組織再編など特殊なケースを除けば、会計処理の結果として生じる税効果会計の適用が適切か、あるいは法人税等の申告書との調整が正確に行われているか、といった点が主な確認事項であり、個々の取引が税務上「損金になるのか否か」を深く掘り下げることは、税務専門家である税理士に任せることがほとんどでした。

しかし、事業会社の経理責任者となると、この税務処理への意識がガラリと変わります。なぜなら、会計上の利益と税務上の利益はしばしば異なり、法人税、消費税、源泉所得税といった税金の多寡が、会社のキャッシュフローに直接的に、そして甚大な影響を与えるからです。例えば、ある費用が会計上は計上できても、税務上損金として認められなければ、その分だけ税負担が増加し、手元に残る資金が減ってしまいます。「この交際費は損金になるのか?」「新しい設備投資の減価償却方法は?」「海外との取引における源泉徴収の要否は?」といった問いに、常に責任を持って答えを出し、税務リスクを管理しながら、税負担の最適化を図る必要があります。税法は複雑であり、頻繁に改正されるため、常に最新の情報をキャッチアップし、税理士と密に連携しながら、会社の意思決定をサポートする重要な役割を担うことになります。税効果会計や法人税申告の実務についても理解を深めることが不可欠です。

組織内会計士としての新たな価値創造:企業側に立った思考

監査法人から事業会社へ転職した会計士が、真に組織にとって不可欠な存在となるためには、監査時代の「第三者としての正しさ」だけでは不十分です。求められるのは、企業の内側に入り込み、「企業側に立った思考」で価値を創造することです。

企業側に立った「検討結果と主張」こそが求められる

監査法人では、私たちは独立した第三者として、公平な視点から企業の財務諸表を評価し、意見を表明する立場にありました。しかし、事業会社の経理責任者となると、立場は一変します。私たちは「当事者」として、自社の利益を最大化し、リスクを最小化するために、能動的に動かなければなりません。

例えば、新しいM&A案件や事業投資の検討時には、会計・税務の知識を駆使して、その取引が将来的にどのような財務インパクトをもたらすのか、どのような会計処理が考えられ、それが税負担にどう影響するのかを深く分析する必要があります。単に「会計基準ではこうです」と事実を伝えるだけでなく、複数の選択肢がある中で、企業にとって最も有利な、あるいはリスクが低いアプローチを論理的に提示し、経営陣に対して明確に「主張」する能力が求められます。これは、単なる専門知識の提供に留まらず、会社の未来を左右する意思決定の場面で、積極的に貢献するということです。

固定費の契約は一度ネゴるべし!コスト意識の重要性

監査法人にいた頃は、企業のコスト構造を詳細に分析する機会はあっても、そのコスト自体を交渉して削減する立場にはありませんでした。しかし、事業会社の経理責任者としては、会社の資源を預かる者として、コスト意識を徹底することが非常に重要になります。特に、毎月発生する固定費の契約は、見直すことで大きな削減効果を生む可能性があります。

例えば、オフィス賃料、保守契約、システム利用料、清掃サービスなど、一度契約を結んでしまうと漫然と更新しがちな固定費は多岐にわたります。経理責任者として、これらの契約更新時には、単に前年と同じ条件で契約してしまうのではなく、「本当にこのサービスは必要か?」「今の料金は市場価格と比べて適正か?」「他社との比較で交渉の余地はないか?」といった疑問を持ち、積極的にサプライヤーとの交渉(ネゴシエーション)に臨むべきです。数パーセントの削減であっても、年間にすれば大きな金額となり、会社の利益に直結します。監査時代には意識しなかった「コスト削減」という視点は、事業会社で働く上で必須のスキルであり、経理部門が会社の利益に直接貢献できる具体的な施策の一つです。

証憑も情報も「勝手に湧いて出てこない」現実と仕組みづくり

監査では、監査対象会社に依頼すれば、必要な資料や証憑が提供されるのが当たり前でした。そこには、すでに情報収集や管理の仕組みが構築されていることが前提としてありました。しかし、事業会社の経理の現場では、必要な証憑や情報が、各部門の担当者から自発的に、かつ適切なタイミングで集まってくることは稀です。

経理責任者として着任した際、しばしば直面するのは「この取引の証拠は何ですか?」「この数字の根拠は何ですか?」という問いに対する「さあ…」「どこかにあったはず…」といった曖昧な回答です。そこで求められるのは、受動的に情報を待つのではなく、能動的に情報収集の仕組みをゼロから構築することです。各部門と密に連携し、どのような情報を、いつまでに、誰が、どのような形式で提出すべきかを明確化し、必要であればシステム導入やマニュアル作成を通じて、円滑な情報フローを確立する重要性を痛感します。これは、決算の精度を高めるだけでなく、内部統制の強化、さらには経営判断のスピードアップにも寄与する、経理の根幹を支える仕事です。

フォルダ分け一つにも問われる情報整理能力の高さ

膨大な量の電子データや紙媒体の資料をいかに整理し、必要な時にすぐに取り出せるようにするか。これは、一見すると地味な事務作業に見えるかもしれませんが、経理責任者としては極めて重要な情報ガバナンスの一環です。監査法人では、整然と整理された監査調書やクライアント資料にアクセスするのが常でしたが、事業会社では、過去のファイルが混沌とした状態で残されていたり、個人のPCに重要な情報が散逸していたりすることも少なくありません。

適切なフォルダ構造の設計、ファイル名の命名規則の統一、アクセス権限の設定、そして定期的なバックアップとアーカイブの管理。これら全てが、必要な情報を迅速に探し出し、業務を効率的に進めるために不可欠です。情報の整理が不十分だと、過去の取引の経緯を確認するのに時間がかかったり、誤った情報に基づいて判断を下してしまったりするリスクが高まります。また、属人化を防ぎ、経理部門全体の生産性を向上させる上でも、情報整理能力の高さは、経理責任者に求められる重要な資質の一つとなるのです。

経理は「つまらない」どころか「面白い」!業務改善と成長の宝庫

監査法人時代、「経理はルーティンワークが多くてつまらない」といったイメージを持っていた人もいるかもしれません。しかし、事業会社の経理責任者として実際に現場に飛び込んでみると、そのイメージは大きく覆されます。そこには、想像以上の面白さと、業務改善を通じて会社全体に貢献できる、計り知れないやりがいが隠されています。

決算は「早さ」よりも「丁寧さ」が信頼を築く

監査法人では、クライアントの決算が早く確定し、監査手続を迅速に進められることが、一つの成功指標とされていました。しかし、事業会社の経理において「早さ」だけを追求することは、時に危険を伴います。何よりも重要なのは、その決算の「正確性」と「網羅性」、そして「信頼性」です。

多少時間がかかっても、疑義を解消し、根拠を固め、自信を持って開示できる決算書を作成すること。これが、経営陣や株主、取引先、そして金融機関からの信頼を築く上で最も大切になります。急いで作成された決算書は、後で修正が必要になったり、内部からの質問に明確に答えられなかったりすることで、かえって不信感を生んでしまいます。経理責任者として、一つ一つの計上項目に責任を持ち、丁寧なプロセスを経て作成された決算書は、会社の顔として、その信頼性を語る強力な証拠となるのです。

外部委託は「楽で早い」とは限らない真実

事業会社の経理業務において、記帳代行や税務申告などを会計事務所や税理士事務所に外部委託することは一般的です。しかし、「外部委託すれば、楽で早く済むだろう」という安易な期待は、しばしば裏切られることになります。なぜなら、委託先は「会社の状況が整理されている」ことを前提にサービスを提供しているため、もし社内の情報整理ができていなかったり、業務フローが不明確だったりすると、かえって膨大なコミュニケーションコストと時間がかかってしまうからです。

外部委託を成功させるためには、まず自社の経理業務プロセスを明確にし、必要な情報や証憑が滞りなく委託先に提供できる体制を整えることが不可欠です。委託先の専門知識を最大限に活用するためには、自社側も情報の質を高め、質問には迅速かつ正確に答える準備が必要です。つまり、外部委託は、あくまで「手段」であり、それを効果的に機能させるための「社内基盤の整備」こそが、経理責任者の腕の見せ所となるのです。

経理は「業務改善」を含めると、こんなにも幅広い!

監査法人にいた頃の経理に対するイメージは、「日々ルーティン業務をこなす」「地味な部門」といったものでした。しかし、事業会社の経理責任者として実際に足を踏み入れてみると、そのイメージは根底から覆されます。経理業務は、単なる記帳や決算作業に留まらず、その改善を通じて会社全体に貢献できる、非常に幅広い可能性を秘めていることに気づかされます。

例えば、会計システムの導入・刷新、経費精算システムの自動化、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用した定型業務の効率化など、ITを活用した業務改善は枚挙にいとまがありません。また、内部統制の強化、予算策定と実績分析、キャッシュフローの最適化、経営戦略へのデータ提供など、経営層と密接に連携しながら、会社の意思決定をサポートする重要な役割も担います。これらの活動を通じて、非効率な業務プロセスを改革し、会社の成長を加速させ、ひいては経営の透明性を高めることができるのです。監査では得られなかった「自分たちの手で会社を変えていく」というダイナミックな面白さとやりがいが、まさに経理の現場には満ち溢れているのです。生成AIを活用した経理業務の未来は、もはや遠い話ではありません。

まとめ:公認会計士が事業会社経理で輝くために

監査法人での専門知識と経験は、公認会計士にとって間違いなく貴重な財産です。しかし、事業会社の経理責任者として真に価値を発揮し、組織を成長させるためには、その知識を「企業側の視点」に立って再構築し、現場のリアルと融合させる柔軟性が何よりも求められます。

正論だけでなく、事業の特性や実情を深く理解した上で、現実的な解決策を導き出し、周囲を巻き込みながら組織を動かす力。変化を恐れるのではなく、むしろ変化をリードしていく姿勢。そして、会社の利益最大化とリスク最小化のために、能動的に考え、行動する主体性。これらこそが、公認会計士が事業会社の経理部門で真の価値を発揮し、自身のキャリアをさらに深化させるための鍵となります。

想像以上の壁やギャップに直面することもあるでしょう。しかし、それを乗り越えた先には、監査では得られなかった計り知れない面白さと、会社全体の成長に直接貢献できるという大きなやりがいが待っています。公認会計士としての知識を活かしつつ、事業会社という新たな舞台で、ぜひその可能性を最大限に引き出してください。


免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の個人や組織に対する会計、税務、法務、または経営上のアドバイスを提供するものではありません。本記事の内容は筆者の経験と解釈に基づくものであり、全ての企業や状況に適用されるものではありません。具体的な判断や行動を起こされる際には、必ず専門家にご相談ください。本記事の内容によって生じたいかなる損害についても、筆者および公開元は一切の責任を負いません。

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