2027年施行予定の新リース会計基準
対応のポイントと影響を解説
2027年施行の新リース会計基準:影響と準備のポイントを解説
2027年4月1日以降に開始する事業年度から適用が始まる新リース会計基準は、企業の財務報告や経営戦略に大きな影響を及ぼすとされています。この基準改正により、これまでのリース会計処理の方法が大幅に見直され、特にオペレーティングリースが原則「オンバランス(貸借対照表に計上)」されるようになる点が注目されています。
適用時期までにはまだ猶予がありますが、準備には膨大な作業が必要であり、早期対応が求められます。本記事では、新基準の概要と適用時期、そして企業が進めるべき具体的な対応策について解説します。
新リース会計基準の概要と適用時期
適用時期
2027年施行の新リース会計基準:適用対象企業と対応のポイントを解説
2027年4月1日以降に開始する事業年度から適用される新リース会計基準は、これまでのリース会計処理に大きな変革をもたらします。特にオペレーティングリースがオンバランス(貸借対照表に計上)されることで、企業の財務諸表や経営指標に広範な影響が及ぶとされています。
さらに、この基準は適用対象企業が明確に定められており、対象企業には早期の準備が求められます。本記事では、新基準の概要、適用対象、影響、そして対応策について詳しく解説します。
新リース会計基準の概要
適用時期
新リース会計基準は、2027年4月1日以降に開始する事業年度から強制適用されます。
- 3月決算の企業:2028年3月期から適用
- 6月決算の企業:2028年6月期から適用
- 9月決算の企業:2028年9月期から適用
また、2025年4月1日以降に開始する事業年度から早期適用が可能ですが、多くの企業にとって準備期間が短いため、採用は限られると予想されます。
新基準の特徴
- 使用権モデルの導入
リース契約における「使用権」を資産として計上し、その支払い義務を負債として認識します。 - オペレーティングリースのオンバランス化
従来、費用としてのみ計上していた契約(例:家賃契約)が資産・負債として計上されます。 - リース期間の再定義
契約の延長や解約条件を考慮したリース期間の評価が必要です。 - 詳細な開示義務
使用権資産、リース負債、減価償却費、支払利息などを財務諸表で詳細に開示する必要があります。
新基準の適用対象企業
新リース会計基準は以下の企業に適用されます。
適用対象企業
- 株式上場企業
- 株式店頭公開企業
- 有価証券(社債やCP)を発行する企業
- 会社法上の公開会社およびその子会社
- 資本金5億円以上、または負債総額200億円以上の大会社およびその子会社
- 会計監査人を設置する企業およびその子会社
これらの基準に該当しない企業(特に中小企業)は、別途適用される「中小企業の会計に関する指針」に従って処理を行います。
特に影響を受ける業種
- 多店舗展開する企業(小売、飲食、サービス業など)
多数の店舗を賃貸しているため、家賃契約の影響が大きい。 - 製造業や物流業
高額な設備や車両をリースしているケースが多く、オンバランス化による財務指標への影響が顕著。 - 不動産業やホテル業
大型施設をリースしている場合、資産負債の増加が避けられません。
新基準が企業に与える主な影響
1. 財務諸表への影響
- 貸借対照表(BS)
リース契約が資産・負債として計上されることで、総資産と負債が増加します。この結果、自己資本比率やROA(総資産利益率)の低下が懸念されます。 - 損益計算書(PL)
リース料は減価償却費と利息費用に分けられるため、リース初年度は費用が増加し、利益が圧迫される傾向があります。
2. 管理業務の増加
対象範囲が広がるため、管理対象となる契約が増えます。契約内容の評価や開示準備に必要な作業が増加し、経理部門の負担が大きくなるでしょう。
3. 資金調達や経営戦略への影響
財務指標の変化は、投資家や金融機関からの評価に影響を与える可能性があります。特に自己資本比率の低下は、融資条件の見直しを招く恐れがあります。
新基準に向けた対応策
1. 現状分析と影響額の算定
すべてのリース契約や賃貸借契約を洗い出し、新基準の適用が財務諸表にどのような影響を与えるかをシミュレーションします。
2. 賃貸借契約の見直し
家賃契約を含むリース契約条件を再評価し、適正化を進めることでリース負債の圧縮を図ります。
3. 会計システムの整備
使用権資産やリース負債を適切に管理するため、既存の会計システムを新基準に対応させる必要があります。多店舗展開企業では専用のリース管理システム導入が有効です。
4. 経理体制の強化
経理業務の増加に対応するため、専門知識を持つ人材の確保や教育を進めましょう。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などのツールを活用して業務効率化を図ることも有効です。
5. ステークホルダーへの説明準備
財務指標の変動について、投資家や金融機関への説明責任が生じるため、影響額を数値化し、理解しやすい資料を準備しておきます。
まとめ:新リース会計基準への対応は経営課題
2027年施行の新リース会計基準は、多くの企業にとって財務報告の透明性向上を求める一方で、業務負担や財務指標への影響を伴います。適用対象となる企業は、早期に現状分析を行い、影響を定量化し、対応策を進めることが重要です。
特に影響が大きい企業では、システム整備や人員体制の強化など、戦略的な対応が必要です。新基準対応を経営改革の機会と捉え、積極的に準備を進めていきましょう。