【初心者用】『マイクロ法人』が必ず押さえておきたい!法定調書の基本と提出手順を徹底解説

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【初心者用】
『マイクロ法人』が必ず押さえておきたい!
法定調書の基本と提出手順を徹底解説

はじめに

近年、「マイクロ法人」という言葉をよく耳にするようになりました。フリーランスや個人事業主として活動していた方が節税や社会的信用の向上などの理由で法人化し、最小限の人数や経費で事業を行う形態がマイクロ法人です。こうしたマイクロ法人でも、事業を行う以上は税務上の義務から逃れられません。その中でも毎年の年末調整や年明けに行う法定調書の提出は、正しく理解しておかないとミスや提出漏れが起きやすい業務です。

本記事では、マイクロ法人が行うべき法定調書の作成・提出方法を中心に、年末調整後の一連の流れや提出期限、電子申告のメリットなどを詳しく解説します。特に、初めて社員を雇う場合や報酬・料金を支払う場合など、少人数の企業であっても必要となるケースがありますので、ぜひ最後までご覧ください。



1. マイクロ法人とは?

マイクロ法人とは、代表者を含めて数名(あるいは代表者1名のみ)で構成される極小規模の法人形態を指します。フリーランスや個人事業主が事業拡大や節税対策、社会的信用度向上などを目的に法人化するケースが増えています。売上や利益が比較的少なくても法人格を持つことで、個人とは別の人格として活動できる点が大きな特徴です。

  • メリット:
    • 社会保険料負担の調整(役員報酬の設定次第で節税効果が見込める場合がある)
    • 法人名義の口座開設やクレジットカード作成での信用度向上
    • 個人資産と事業資産を分けられる
  • デメリット:
    • 法人設立コスト(設立時の登録免許税など)
    • 毎年の決算申告や税務手続きが必要
    • 代表者の給与設定・社会保険への加入など事務作業が煩雑化

マイクロ法人であっても、従業員を1人でも雇用すれば給与計算や源泉徴収を行い、年末調整を実施しなければなりません。また、報酬や家賃などの支払いがあれば、翌年に法定調書の提出が求められます。


2. マイクロ法人と年末調整のかかわり

マイクロ法人では、代表者自身が役員として給与を受け取るケースが大半です。また、場合によってはアルバイトやパートタイムなどの従業員を雇っていることもあるでしょう。このとき、年末調整が関わってきます。

  • 年末調整とは
    所得税や復興特別所得税を天引き(源泉徴収)している給与所得者について、1年分の税額を正しく計算する手続きです。扶養控除や各種保険料控除、配偶者控除などを反映させ、過不足があれば精算します。
  • マイクロ法人は税理士に委託せずに代表者が自力で行うケースも多い
    しかし、年末調整は必要書類のチェックや複雑な計算が発生するため、提出期限前に余裕を持った対応が必要です。

年末調整が完了すると、翌年に源泉徴収票や各種法定調書を税務署や市区町村に提出する流れになります。この工程を理解しておくことで、提出漏れやミスを防ぎ、ペナルティを避けることができます。


3. 法定調書とは何か?その役割と目的

法定調書は、所得税法などの規定により事業者が税務署へ提出を義務付けられている書類の総称です。報酬や給与、不動産使用料などさまざまな支払い形態ごとに作成する必要があります。

  • 法定調書の役割
    事業者(支払う側)から税務署に「誰に」「どのような内容で」「いくら支払ったか」を報告することで、支払った側と受け取った側の申告が正しいかチェックできる仕組みになっています。
  • マイクロ法人が提出を怠るとどうなる?
    本来税務署が把握すべき支払いの事実を隠しているとみなされ、ペナルティ(加算税など)のリスクが高まります。支払った報酬や家賃などの額が大きい場合は特に注意しましょう。

4. マイクロ法人で提出することが多い法定調書4選

法定調書は60種類以上も存在しますが、中小企業やマイクロ法人が主に提出することの多い調書は以下の4つです。

4-1. 給与所得の源泉徴収票

従業員や役員に給与・賞与などを支払った場合に作成します。年末調整を終えた後、確定した年間の給与総額や源泉徴収税額、社会保険料控除額などを記載して税務署へ提出します。

  • 提出範囲
    • 年末調整をした従業員
    • 年収が一定額を超える従業員
    • 詳細は国税庁が定める規定に従う

4-2. 報酬・料金・契約金及び賞金の支払調書

弁護士や税理士への報酬、講演料や原稿料などを支払った場合に作成し、税務署へ報告します。厳選徴収(源泉所得税)を行う場合もあるため、注意が必要です。

  • 提出範囲の例
    1. 弁護士・税理士・司法書士などの専門家報酬
    2. 講演・公演・執筆に対する報酬(原稿料など)
    3. デザインやイラストの制作料など
    • 同一人に対し年間5万円超の場合など、一定要件あり

4-3. 不動産の使用料等の支払調書

事務所や店舗の家賃、土地の使用料などを支払った場合に作成・提出します。ただし、以下のような場合は提出不要になるケースもあります。

  • 法人へ支払う家賃
    通常の家賃のみであれば提出不要。ただし更新料や権利金などを支払う場合は提出対象になる場合がある
  • 個人へ支払う家賃
    15万円を超える支払いがある場合などに提出義務が生じる

4-4. 不動産等の売買または貸し付けの斡旋手数料の支払調書

不動産売買や賃貸の仲介手数料を不動産業者などに支払った場合に作成します。不動産関連の支払調書はややこしい面があるため、契約内容と金額をしっかり確認しましょう。


5. 法定調書の作成に必要な書類と基本的な書き方

ここでは、代表的な法定調書である「給与所得の源泉徴収票」と「報酬・料金の支払調書」、さらに不動産関連の調書の書き方のポイントを解説します。マイクロ法人では税理士に外注するケースも多いですが、少人数で経理業務を行う場合は自社での理解が必須です。

5-1. 給与所得の源泉徴収票の書き方

  1. 必要書類の準備
    • 給与所得者の源泉徴収簿
    • 給与所得者の保険料控除申告書(年末調整時に従業員が提出している)
  2. 転記作業
    • 年末調整時に作成した源泉徴収簿から、支払金額・社会保険料控除額・扶養控除額などを該当欄に転記
    • 保険料控除申告書に基づき、生命保険料控除や地震保険料控除なども記載
  3. 住所・氏名・個人番号の記載
    • 従業員の氏名・住所・マイナンバーを忘れずに記入
  4. 支払者情報の記載
    • 事業者(マイクロ法人)の所在地や法人番号、代表者名を記載

これらを転記するだけなので、一度作業手順を覚えれば難しくありません。提出前には必ず誤字脱字・金額の整合性をチェックしましょう。

5-2. 報酬・料金の支払調書の書き方

  1. 支払年度を記載
    • 対象となる報酬が「令和○年分」であることを明記
  2. 支払いを受ける人・法人の情報
    • 住所・氏名・個人番号または法人番号を正確に記載
  3. 区分と細目欄
    • 弁護士報酬、税理士報酬、原稿料など、どのような内容かが分かるよう簡潔に記す
    • より詳細な内容(依頼案件名など)を書く欄があれば、可能な限り記載
  4. 支払金額・未払い額・源泉徴収税額
    • 実際に支払った金額と源泉徴収した税額、また未払いがある場合は内書きで明記
  5. 適用欄
    • 特別な控除や扱いがある場合に記載
  6. 支払者欄
    • 自社(マイクロ法人)の所在地・法人番号・名称を忘れずに

5-3. 不動産関連の支払調書の書き方

  1. 不動産の使用料等の支払調書
    • 区分: 地代・家賃・権利金など
    • 物件所在地・細目: 対象物件の所在地、建物の構造など
    • 計算の基礎: 面積や月額賃料など
    • 支払い金額: 年間合計を記入
    • 斡旋手数料や権利金がある場合: 適用欄に記載
  2. 不動産等の売買または貸し付けの斡旋手数料の支払調書
    • 区分: 不動産の売買、または賃貸借の仲介手数料かを明記
    • 支払い確定日・支払い金額: 年間に確定した金額を記載
    • 物件の種類・所在地: 土地・建物などの区分と住所
    • 売買価格や賃貸借条件: 仲介手数料の計算基礎

5-4. 法定調書合計表とは?

各法定調書を作成したら、「法定調書合計表」を作成し、まとめて提出します。これは提出する調書の内容を一覧にまとめた表紙のような役割です。

  • 合計表に記載する主な内容
    • 提出者(マイクロ法人)の住所・法人番号・名称
    • 給与所得の源泉徴収票の合計人数や総額、税額
    • 報酬や不動産関連の支払調書の件数や金額
  • 注意点
    • 合計表を作成しておくと、自分自身でどのくらいの調書を作ったか一目で分かる
    • 未提出や重複提出を防ぐためにも正確に記載

6. 法定調書の提出方法と提出先

6-1. 原則的な提出先(税務署)

完成した法定調書と法定調書合計表は、納税地を所轄する税務署へ提出するのが原則です。マイクロ法人の場合、法人登記上の所在地を管轄する税務署に提出します。

  • 郵送提出: 封筒に「法定調書在中」と明記するなどして送付
  • 持参提出: 税務署窓口に直接持参し、控えに受領印をもらう

6-2. 市区町村への提出が必要なケース(給与支払報告書)

給与所得の源泉徴収票とほぼ同じ内容を、従業員が住む市区町村にも提出しなければなりません。これを**「給与支払報告書」**といいます。主に住民税を算定するために利用されるため、未提出だと従業員側が住民税を正しく課税されません。従業員の住所地ごとに提出が必要になるので、注意しましょう。

6-3. 提出期限

法定調書(および法定調書合計表)の提出期限は、基本的に支払いが確定した年の翌年1月31日です。

  • 例: 令和6年分 → 令和7年1月31日までに提出

多くの企業では年末調整を12月〜1月上旬に終わらせ、1月末までに法定調書を提出する流れです。

  • 給与支払報告書も同様に、1月末が提出期限となる市区町村が大半です。ただし、一部自治体によっては前後する場合があるため事前に確認しましょう。

6-4. 電子申告のメリット・デメリット

マイクロ法人は書面での提出が一般的ですが、近年は電子申告(e-TaxやeLTAX)を活用する企業が増えています。

  • メリット
    1. 税務署・市区町村への同時提出が可能(eLTAXの場合)
    2. 郵送費や印刷費の削減
    3. 提出書類の控えもデータとして保管しやすい
    4. 提出期限ギリギリでもネット経由ですぐ提出できる
  • デメリット
    1. 事前準備が必要: 電子証明書の取得、ソフトウェアのインストール、利用者識別番号の取得など
    2. システム操作に不慣れだと戸惑うことがある

マイクロ法人の場合、提出する法定調書が少数であれば書面での提出でも大きな負担にはならないかもしれません。しかし、今後の効率化を考えると電子申告に慣れておくのは有効です。


7. マイクロ法人が注意すべきポイント

7-1. 従業員への源泉徴収票の交付

給与所得の源泉徴収票は、従業員に必ず原本を交付しなければなりません。退職者がいた場合は退職後1ヶ月以内など交付期限が細かく定められているので注意してください。

7-2. 報酬・料金の源泉徴収ミスに注意

弁護士や税理士等に支払う報酬の多くは源泉徴収が必要です。また講演料や執筆料も源泉徴収がかかるケースが多いため、支払い前に税額を天引きしているか必ず確認しましょう。天引きミスは後々の修正が大変です。

7-3. 不動産契約の仲介料や更新料も対象になる場合がある

マイクロ法人がオフィスや店舗を借りる場合、不動産会社を通じて契約しているケースがほとんどです。家賃そのものの支払いは法人への支払いであれば提出不要のこともありますが、更新料や権利金などが発生した場合は「不動産の使用料等の支払調書」の対象になるケースがあります。年間15万円超など要件を満たすかどうかを確認しましょう。

7-4. 提出漏れ・締切直前の慌ただしさを回避する工夫

  • 年末調整と同時に作業を進める: 源泉徴収簿や保険料控除申告書などを整えたタイミングで法定調書の下書きを作成すると効率的
  • 提出書類のチェックリストを作る: 提出すべき調書を一覧化し、合計表も含めて漏れがないか確認
  • 電子申告なら早めに試す: 事前準備やソフト設定が必要なので、余裕をもって取り組む

8. よくある質問(FAQ)

Q1. マイクロ法人で役員1名だけの場合も源泉徴収票は必要?
A. はい。代表者兼役員が給与(役員報酬)を受け取っているなら、源泉徴収票を作成し、税務署に提出する必要があります(一定の給与額に応じて)。また、役員自身にも源泉徴収票を交付し、確定申告に利用するのが一般的です。

Q2. 報酬額が5万円以下なら報酬・料金の支払調書を作らなくてもいい?
A. 同一の受取人に対し年間5万円以下であれば提出義務はありません。ただし、金額が微妙な場合や年度内に複数回支払いが発生する可能性がある場合は、実際に総額が超えないか確認しておきましょう。

Q3. 不動産会社の仲介を通じて法人に家賃を支払っている場合は?
A. 法人への通常の家賃支払いだけなら提出不要になるケースが多いです。しかし、法人であっても更新料や権利金などを支払った場合は提出対象となることがあります。契約内容をしっかり確認しましょう。

Q4. 法定調書合計表は必ず提出が必要?
A. はい、原則として法定調書を提出する場合は法定調書合計表も併せて提出します。税務署が全体像を把握するために必要です。

Q5. 提出期限を過ぎたらどうなる?
A. 期限を過ぎると「不提出加算税」や「無申告加算税」が課される可能性があります。過ぎたと気づいたら、できるだけ早く提出し、必要に応じて税務署に相談してください。


9. まとめ

マイクロ法人であっても、給与を支払う従業員がいる場合や、弁護士・税理士報酬、不動産関連の支払いがある場合には法定調書の提出が欠かせません。年末調整後の限られた期間にまとめて作成・提出しなければならないため、1月末(提出期限)までに計画的に進めることが重要です。

  • 年末調整から法定調書の提出、給与支払報告書の提出までの流れを整理しておく
  • 電子申告(e-Tax・eLTAX)も選択肢に入れて効率化を図る
  • 報酬・料金、家賃、更新料など、対象となる支払い内容をきちんと把握する
  • 法定調書合計表も忘れずに作成し、税務署へ提出

特にマイクロ法人では人数やリソースの少なさから、提出作業を後回しにしがちです。しかし、税務手続きの漏れはペナルティや信用問題にも直結します。本記事を参考に、早めの準備とミスのない提出を心がけましょう。

以上が、マイクロ法人が行うべき法定調書の基礎知識と提出手順の解説です。事前にしっかりと理解しておけば、決算時や確定申告時にもスムーズに対応できます。ぜひ本記事を参考にして、正しく法定調書を作成・提出してください。

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