激変するサラリーマンの未来:冨山和彦氏の著書『ホワイトカラー消滅』が語る真実と生き残る道

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冨山和彦氏の著書『ホワイトカラー消滅』のテーマを象徴するアイキャッチ画像。AIによるデジタル粒子となり崩壊するサラリーマンのシルエットと、そこから力強く芽吹く新しい労働の象徴が対比され、未来の働き方への変革とキャリア再構築の必要性を表現しています。 エンジョイ経理情報

こんにちは!エンジョイ経理編集長です。
皆さんは「ホワイトカラー消滅」という言葉を聞いて、どんな感情を抱かれますか? 不安、驚き、それとも「ついに来たか」という覚悟でしょうか。私自身、この言葉を耳にした時、漠然とした不安を感じずにはいられませんでした。しかし、IGPIグループ会長で日本競争プラットフォーム社長の冨山和彦氏の著書『ホワイトカラー消滅』を手に取り、一気に読み終えた時、その衝撃と共に、未来への具体的な指針を得られた感覚に包まれました。

本書は、AIの進化、少子高齢化による労働人口の減少、そして長らく続いた「失われた30年」の終焉――これら複合的な要因が、私たちの働き方、特にこれまで安泰と思われていた「ホワイトカラー」の仕事や「サラリーマン」という階級を、いかに根底から変革しようとしているかを、鋭い洞察と膨大なデータに基づいて解き明かしています。私が経理の現場で日々数字と向き合う中で感じていた漠然とした違和感が、この一冊によって明確な形となり、未来のキャリアをどう築くべきか、深く考えさせられました。

これは単なる未来予測ではありません。企業の会計データ、労働市場の数字、そして日本経済全体の構造変化を冷静に分析した結果として、冨山氏が導き出した「必然」です。本書を読み進める中で、なぜ「サラリーマン」という働き方が終わりを告げようとしているのか、そして、私たちがこの激動の時代を生き抜くために、何を考え、どう行動すべきなのかを、経理の視点も交えながら徹底的に解説していきます。

この記事を読み終える頃には、あなたのキャリアに対する漠然とした不安は、具体的な行動計画へと変わっているはずです。さあ、『ホワイトカラー消滅』の世界を深掘りし、共に未来の働き方を探求していきましょう。


冨山和彦氏の著書『ホワイトカラー消滅』のテーマを象徴するアイキャッチ画像。AIによるデジタル粒子となり崩壊するサラリーマンのシルエットと、そこから力強く芽吹く新しい労働の象徴が対比され、未来の働き方への変革とキャリア再構築の必要性を表現しています。

冨山和彦氏の著書『ホワイトカラー消滅』。このタイトルが持つインパクトは絶大です。特に、これまで安定の象徴とされてきた「サラリーマン」という働き方に慣れ親しんできた私たち日本人にとって、この言葉は大きな不安を呼び起こすかもしれません。しかし、本書を読み進める中で、私はこれが単なる脅しではなく、むしろ、その本質を理解し、適切に対応することで、新たなチャンスを掴むことができるという、前向きなメッセージを強く感じました。

本書で冨山氏が繰り返し指摘しているのは、今日の私たちの社会が、AI(人工知能)の急速な進化と、日本の少子高齢化という二つの巨大な波に挟まれているという現実です。この波が、私たちの仕事のあり方、ひいては社会の構造そのものを根底から変えようとしているのです。これまで企業の中心を担ってきた「ホワイトカラー」、特に「中間管理職」や「営業職」、そして一般的な「デスクワーク」は、その役割の大部分をAIやITが代替できるようになります。これは、企業がコスト削減と生産性向上を追求する上で、極めて合理的な選択であり、すでに多くの企業で静かに進行している現実であると本書は語っています。

一方で、私たちの日常生活に欠かせない「現場仕事」や「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる職種は、労働力不足が深刻化し、その価値と賃金が静かに、しかし確実に上昇していると冨山氏は指摘します。これは、これまで「低賃金」のイメージがつきまとっていた現場職が、まさに「生き残れる」どころか、未来のキャリアパスとして非常に魅力的な選択肢となる可能性を示唆していると本書は明快に示しています。

エンジョイ経理編集長である私が、本書を読んで強く感じたのは、冨山氏が提示する数字のリアリティです。企業の「販売管理費(販管費)」の分析や、「労働生産性」の推移を見るにつけ、冨山氏が語る「ホワイトカラー消滅」は、単なる未来予測ではなく、すでに進行中の現実であることが明確に見て取れるのです。この変化をただ受け身で待つのではなく、積極的にキャリアの再構築を図ることが、私たち一人ひとりに求められていると、本書は静かに、しかし力強く訴えかけています。

もしあなたが自身のキャリアに漠然とした不安を抱いているなら、あるいは未来の働き方について具体的なヒントを得たいと考えているなら、ぜひ一度、この『ホワイトカラー消滅』を手に取ってみることをお勧めします。


「武士の時代」から「ホワイトカラー消滅」へ:歴史が語る大転換の必然性

『ホワイトカラー消滅』を読み進める中で、私が特に印象に残ったのは、冨山氏が現代の変化を明治維新における「武士消滅」になぞらえている点です。一見すると無関係に見えるこの二つの出来事には、実は驚くべき共通点と、私たちに示唆する深い教訓が隠されていると本書は教えてくれます。

明治維新と武士の失業:歴史の教訓

明治維新は、日本が封建社会から近代国家へと劇的に変貌した時代です。冨山氏の著書によると、この変革の中で、それまで社会の統治機構の中核を担っていた「武士」という階級が、その存在意義を失い、一斉に失業するという事態が発生しました。彼らは「禄(ろく)」と呼ばれる俸給を受け取り、行政や警備、文化の担い手として機能していましたが、生産活動に直接関わる「非生産階級」であったと本書は分析しています。

明治政府が目指したのは、富国強兵と産業振興。旧態依然とした武士の統治機構は、近代国家の効率的な運営には不向きと判断されました。結果、「廃藩置県」や「秩禄処分」によって、武士たちはその身分も俸給も奪われ、自らの力で生きる道を模索せざるを得なくなりました。彼らの多くは、刀を捨て、新しい商売を始めたり、北海道の開拓に赴いたり、あるいは近代的な軍隊の兵士となったりと、それぞれの道を切り拓いていったことが、本書では詳しく解説されています。

この歴史から学べるのは、社会の基盤となる「システム」や「価値観」が大きく変わる時、それまで盤石だと思われていた「身分」や「職業」が、一夜にしてその必要性を失う可能性があるということです。そして、そのような大転換期においては、個人が自ら「リスキリング(学び直し)」を行い、新たなスキルや役割を身につけることが、生き残りの鍵となることが、本書で繰り返し強調されています。

AI革命がもたらす「デスクワーク」の大変革

現代における「ホワイトカラー消滅」も、この武士消滅と酷似した構造を持っていると冨山氏の著書は指摘します。本書では、日本における「大企業のホワイトカラー」が全労働人口の約20%を占めるという数字を挙げ、これは当時の武士階級の割合とほぼ同じであると分析されています。

では、なぜ「ホワイトカラー」がその存在意義を問われているのでしょうか? その最大の要因は、間違いなく「AI(人工知能)」の進化であると本書は明言しています。特に、ChatGPTに代表される「生成AI」の登場は、私たち人間の「知的労働」のあり方を根底から揺るがしていると警鐘を鳴らしています。

本書が解説するように、これまでの産業革命は、主に人間の「肉体労働」や「情報処理」を代替・拡張してきました。蒸気機関は筋肉を、コンピューターは単純な情報処理を。しかし、生成AIは、人間の「大脳皮質」、特に「思考」や「判断」「創造」といった高度な知的活動の一部を代替し始めているという冨山氏の洞察は、非常に示唆に富んでいます。

多くのホワイトカラーが行う仕事、例えば「書類作成」「データ分析」「社内外の調整」「報告書の作成」「意思決定の補助」などは、ルーティン化された作業や、既存の情報に基づいた判断がその大半を占めていると本書は指摘します。これらはまさに、AIが得意とする領域です。AIは、膨大なデータを瞬時に処理し、パターンを認識し、人間よりも速く、正確に、そして感情に左右されずに作業を遂行できるのです。

エンジョイ経理編集長である私が、経理の現場からこの冨山氏の指摘を見ると、AIの進化は目覚ましいものがあります。例えば、これまで人間が行ってきた大量の伝票入力や仕訳作業、監査資料の作成、予算実績分析などは、AIとRPA(Robotic Process Automation)の組み合わせで大幅に効率化が進んでいます。数年前まで多くの経理部で当たり前だった「月末月初は残業の嵐」といった光景は、もはや過去のものとなりつつあり、これこそが冨山氏が語る生産性向上の一側面であると実感しています。

中間管理職の仕事も、AIやITによって効率化が進んでいることが本書では詳しく述べられています。かつては会議や対面での調整が不可欠だった情報伝達や意思決定も、チャットツールやオンライン会議システム、そしてAIによるデータ分析や報告書作成支援によって、劇的に効率化されました。ボスは、中間を介さずに直接現場の状況を把握し、指示を出すことが可能になったため、中間管理職の「調整役」としての価値は相対的に低下していると冨山氏は警鐘を鳴らします。

このように、AIの進化は、ホワイトカラーの仕事の「代替」だけでなく、「拡張」という側面も持っています。AIを道具として使いこなせるホワイトカラーは、その生産性を飛躍的に高めることができるでしょう。しかし、AIに代替される仕事の多くは、まさに「ホワイトカラー」という大枠に分類されるものが大半なのです。この大転換期に、私たちは武士が刀を捨てたように、旧来の仕事のやり方や価値観を捨て、新たなスキルを身につける覚悟が求められていると、本書は私たちに覚醒を促しています。


営業職も安泰ではない?『ホワイトカラー消滅』が示すAIが奪う「情報の非対称性」が生む仕事

冨山和彦氏の著書『ホワイトカラー消滅』を読んで、私が衝撃を受けたのは、ホワイトカラーの中でも、特に「人とのコミュニケーション」が重要視される「営業職」も、「なくなるんじゃないかな」という冨山氏の予測です。エンジョイ経理編集長として、この予測には数字的な裏付けと、企業経営の合理性に基づく必然性が隠されていると本書が示唆していることに深く共感しました。

営業の「介在価値」が問われる時代

なぜ営業職がなくなる、あるいはその役割が大きく変わると冨山氏は予測しているのでしょうか? 本書の指摘の核心は、「情報の非対称性」と「コミュニケーションの非対称性」の解消にあります。

冨山氏の著書によれば、かつて、顧客は製品やサービスに関する情報を得るために、営業担当者に頼るしかありませんでした。営業マンは、製品知識や業界情報、競合他社の動向などを顧客に提供し、顧客の疑問に答え、購買へと導く「情報のゲートキーパー」としての役割を担っていました。また、複雑な交渉や、顧客のニーズを深くヒアリングするためには、対面での「ハイタッチ」なコミュニケーションが不可欠でした。

しかし、現代はどうでしょうか? インターネットの普及により、顧客はウェブサイト、比較サイト、レビュー、SNSなど、ありとあらゆる情報源から、製品やサービスに関する情報を自ら収集できるようになりました。企業側も、公式サイトやブログ、オンラインストアを通じて、詳細な製品情報やFAQを提供しています。これにより、「情報の非対称性」は劇的に解消され、顧客は営業担当者の説明なしに、かなりの部分で自己完結的に購買意思決定を行うことが可能になったのです。

さらに、本書ではAIの進化が「コミュニケーションの非対称性」も解消しつつあると詳しく解説されています。チャットボットやAIを搭載したカスタマーサービスは、24時間365日、顧客からの問い合わせに即座に、正確に、そして感情に左右されずに対応できます。複雑な質問にも、膨大なナレッジベースから最適な回答を瞬時に導き出すことが可能です。冨山氏が「ユーザークレームなんかでも多分AI完璧に応えますよこれからね」と語るように、人間が感情的に対応したり、個別具体的に時間を割く必要があった顧客対応の多くが、AIによって代替される日はそう遠くないと本書は警告しています。

このような状況下で、営業担当者の「介在価値」は、単なる情報提供者や調整役から、より高度なものへとシフトしなければならないと冨山氏は訴えます。それは、顧客の潜在的な課題を発見し、カスタマイズされたソリューションを提案する「コンサルティング型営業」であったり、長期的な信頼関係を構築し、顧客の事業成長を支援する「パートナーシップ型営業」であったりするでしょう。しかし、これらの高度な営業活動は、ごく一部のトップセールスパーソンに限定される可能性が高いと本書は示唆しています。

コストセンター化する営業部門の課題(経理視点)

エンジョイ経理編集長として、私が企業の財務諸表を見る際、特に注視する項目の一つに「販売管理費(販管費)」があります。販管費は、製品の販売や一般管理に要する費用であり、その中でも「人件費」は非常に大きな割合を占めます。営業部門の人件費も、この販管費の中に含まれます。

冨山氏の著書が指摘するように、「大体人件費で狙うところは絶対反感系なんですよ」という言葉は、企業再生の現場で実際に起きている現実を端的に表しています。企業が経営改善を迫られる際、真っ先に検討されるのが、直接的な売上を生み出す「製造現場」や「サービス提供現場」以外の部署、つまり販管費部門の人員適正化です。

なぜなら、企業経営において、人件費は「固定費」だからです。売上が変動しても、人件費はすぐに減らせるものではありません。特に、成果が見えにくい、あるいはAIやITで代替可能な業務を抱える営業部門は、経営者から見れば「費用対効果」が問われる対象となります。

本書では、営業活動が「どちらかつうと値引きに行っちゃうんですよね」と指摘されています。売上目標達成のために安易な値引きをしたり、過剰なサービス提供を約束したりすることは、一時的に売上を増やすかもしれませんが、企業の利益率を低下させ、長期的な成長を阻害します。私たち経理の視点から見れば、これは「収益性の悪化」に直結します。このような営業活動は、むしろ企業価値を「壊してしまう」可能性すらあると、冨山氏は警鐘を鳴らします。

企業は常に、限られたリソースを最大限に活用し、利益を最大化しようとします。AIやITの進化は、これまで人間が行ってきた多くの営業業務を、より安価に、より効率的に実行可能にしました。そうなると、経営者は「営業担当者」という固定費を抱え続けることの合理性を問わざるを得なくなります。単なる情報伝達や値引き交渉に終始する営業活動は、もはや「コストセンター(費用ばかりかかって利益を生み出さない部門)」と見なされ、その人員は削減の対象となりかねないと、本書は冷静に分析しています。

もちろん、全ての営業職がなくなるわけではありません。「ハイタッチ」な人間関係の構築や、複雑なコンサルティング能力、あるいは新たな市場を開拓する創造性を持つ営業人材は、今後も重宝されるでしょう。しかし、その数は限られます。多くの営業担当者は、自身のスキルを再評価し、AIにはできない「真の価値」を顧客に提供できるよう、キャリアを再構築する必要に迫られていると、冨山氏は私たちに示唆しています。私たち経理の人間も、単なる数字の管理だけでなく、事業の収益性を高めるための戦略的な視点から、各部門の「費用対効果」を冷静に分析し、経営層に提言していく役割が、ますます重要になってくると感じています。

この衝撃的な事実の詳細は、ぜひ『ホワイトカラー消滅』でご確認ください。


サラリーマンの「身分制度」が崩壊するワケ:『ホワイトカラー消滅』が説く中間管理職の不要論

日本において「サラリーマン」は、ある種の「身分制度」として機能してきました。特に「大企業」の「ホワイトカラー」として就職し、年功序列で昇進し、最終的には「中間管理職」となることが、多くの日本人にとっての「ゴール」であり、社会的な成功の証とされてきたことは、冨山和彦氏の著書『ホワイトカラー消滅』で強調されている点です。しかし、この「サラリーマン身分制度」は、今、音を立てて崩壊しつつあります。その象徴が「中間管理職」の不要論であると、本書は力強く説いています。

なぜ日本には中間管理職が多いのか?

冨山氏の著書『ホワイトカラー消滅』を読んで、私が特に驚かされたのは、「日本だけですねあんなにたくさん中間管理所いるの」という冨山氏の指摘です。日本の企業は海外、特に欧米の企業と比較して、中間管理職の層が非常に厚いことは、私も実務で感じていました。本書では、この背景に、日本の企業文化と歴史的経緯が複雑に絡み合っていると詳しく解説されています。

一つには、「年功序列」と「終身雇用」という日本型雇用慣行が挙げられます。社員は長く勤めれば勤めるほど給料が上がり、役職が上がっていくため、ピラミッド型の組織構造において、多くの人が昇進の階段を上る必要がありました。その結果、部下のいない「部長」や、名ばかりの「マネージャー」といった役職が生まれることも少なくなかったと本書は指摘します。これは、企業がベテラン社員に高い給与を支払うための「隠れた名目」として機能していた側面もあると分析されています。

また、高度経済成長期を経て、企業規模が拡大する中で、部門間の連携や情報伝達を円滑にするために、多くの「調整役」が必要とされたと本書は説明します。日本の企業は、意思決定のプロセスにおいて「根回し」や「合意形成」を重視する傾向が強く、中間管理職は、まさにこの「調整仕事」のプロフェッショナルとして機能してきたのです。彼らは、上層部の意向を現場に伝え、現場の意見を吸い上げ、部門間の利害を調整し、円滑な業務遂行を支える重要な役割を担っていました。

しかし、エンジョイ経理編集長である私が、経理の視点からこの冨山氏の指摘を見ると、この厚い中間管理職の層は、企業の「固定費」として大きな負担となっていたことが明確に見て取れます。特に、「失われた30年」と呼ばれる経済停滞期においても、企業は終身雇用を維持しようと努力し、人件費という最大の固定費を抱え続けました。この時期、多くの企業が抜本的な構造改革に踏み切れなかった背景には、この「中間管理職」という「身分」を守ろうとする意識が強く働いていたと私は見ています。

調整仕事の自動化と効率化:ITとAIの力

『ホワイトカラー消滅』では、これまで中間管理職が担ってきた「調整仕事」の多くは、ITとAIの進化によって、その必要性を失いつつあると詳しく解説されています。

情報伝達の側面では、かつては部門間の会議や、上司から部下への口頭での伝達が主でしたが、今はビジネスチャットツールやグループウェアが普及し、情報はリアルタイムで共有されます。トップから現場への指示も、ITツールを通じて直接伝達されることが可能になり、中間で情報が歪曲されたり、伝達が遅れたりするリスクも減ったと本書は指摘します。

意思決定の側面でも、AIによるデータ分析やレポーティング機能が向上したことで、上層部はより正確な情報に基づき、迅速に意思決定できるようになりました。これにより、中間管理職が時間をかけて資料を作成したり、会議を重ねて合意形成を図ったりする手間が大幅に削減されると、冨山氏は明言しています。

本書で冨山氏が言うように、「ボス」の立場からすれば、中間管理職は「時間かかるだけです」という存在になりかねません。これは、ITとAIが、組織内の情報流通と意思決定のボトルネックを解消し、よりフラットでスピーディーな組織運営を可能にした結果であると、本書は明確に示しています。私たち経理部門も、かつては各部署から紙で上がってくるデータを集計し、Excelで手作業で分析するといった手間のかかる作業が多かったのですが、今ではERP(統合基幹業務システム)やBIツール(ビジネスインテリジェンスツール)の導入によって、リアルタイムで正確な財務データが可視化され、経営層はいつでも必要な情報にアクセスできるようになりました。これにより、経理部門が介在して調整を行う必要性も大幅に減少していると私も実感しています。

反感費削減の裏側:企業再生の現場から見た現実(経理視点)

『ホワイトカラー消滅』の中で、冨山氏は企業再生の現場で真っ先にターゲットとなるのが「販管費の人件費」だと明言しています。これは、私たちエンジョイ経理が日頃から企業会計と向き合う中で、痛感している現実でもあります。

「販売管理費(販管費)」は、大きく分けて「販売費」と「一般管理費」から構成されます。販売費は、営業活動に関わる費用(営業人件費、広告宣伝費など)を指し、一般管理費は、本社部門の人件費やオフィス賃料、事務用品費など、企業全体の運営に必要な費用を指します。本書では、この販管費の大部分を占めるのが人件費、特に間接部門の人件費であると分析されています。

冨山氏は「大体半分に減らしても何にも影響ないですね」とまで言い切っています。これは、従来の日本の大企業が、必要以上に多くのホワイトカラー、特に中間管理職や間接部門の人員を抱えすぎていたことを示唆しています。私たち経理の観点から見れば、これは「余剰人員」であり、「生産性の低い固定費」であると判断できます。

企業再生のプロセスでは、まずは企業のキャッシュフローを改善し、収益性を高めることが急務となります。そのためには、売上を増やすか、費用を減らすかの二択しかありません。売上をすぐに増やすのは困難な場合が多く、費用削減が手っ取り早い手段となります。この時、変動費(売上に応じて増減する費用、例:原材料費)ではなく、固定費(売上に関わらず発生する費用、例:人件費、家賃)にメスが入るのです。

中でも、販管費の人件費は「聖域」とされがちでしたが、企業が生き残るためには、そこに踏み込まざるを得ないのです。なぜなら、現場の製造ラインやサービス提供部門の人員は、直接的に価値を生み出しているため、簡単に減らすことはできません。彼らを減らせば、製品の生産やサービスの提供が滞り、売上が直接的に減少してしまいます。しかし、販管費部門の多くの業務は、直接的な価値創造とは距離があるため、効率化や自動化によって人員を削減しても、直ちに売上やサービス品質に影響が出にくいと考えられているからです。

もちろん、販管費部門が無価値なのではありません。経理、人事、総務、法務など、企業運営に不可欠な機能を提供しています。しかし、AIやITがこれらの業務を効率化する中で、同じ数の人員が必要か、という問いに、企業は明確な答えを出さなければなりません。特に、企業規模の拡大に合わせて肥大化した中間管理職の層は、意思決定のスピードを鈍らせ、企業の敏捷性を阻害する要因にもなりかねないと、本書は警告しています。

「失われた30年」の間、多くの日本企業は、従業員の雇用を守ることを最優先してきました。これは社会的な安定には寄与しましたが、その代償として、企業の国際競争力や生産性の向上が遅れたという側面も否定できません。私たち経理の人間は、経営者に対して、この固定費の構造改革がいかに喫緊の課題であるかを、常に数字で示し続ける必要があると痛感しています。

中間管理職が「罰ゲーム」と揶揄される現代において、彼らが自身のキャリアをどう再構築していくかは、日本社会全体の大きな課題です。もはや、漫然と会社員としての地位に安住できる時代は終わったと、冨山氏の著書『ホワイトカラー消滅』は私たちに覚悟を迫ります。


「現場仕事の時代」到来!『ホワイトカラー消滅』が示す賃金上昇とキャリアアップの意外な方程式

冨山和彦氏の著書『ホワイトカラー消滅』を読んで、私が最も希望を感じたのは、「要はこれから現場仕事の時代なんですよ」という力強いメッセージでした。これは、これまで「低賃金」「きつい」というイメージが強かった現場職が、実は未来のキャリアパスとして非常に有望であることを示唆しています。エンジョイ経理編集長として、この予測が数字とどう結びつくのか、本書の解説も交えながら深く考察してみましょう。

エッセンシャルワーカーの価値再評価

本書『ホワイトカラー消滅』が語るように、「エッセンシャルワーカー」という言葉は、コロナ禍でその重要性が再認識されました。医療従事者、介護士、物流ドライバー、スーパーの店員、清掃員など、私たちの生活に不可欠なサービスを提供してくれる人々です。彼らは、AIやITでは代替できない「リアルな現場」で、人手と時間をかけて仕事を行っていると本書は説明しています。

少子高齢化が急速に進む日本において、労働力人口は減少の一途をたどっています。特に、若年層の減少は顕著であり、労働市場における「生産年齢人口」の割合は相対的に激減しています。この状況で、需要が安定している、あるいは増加している現場職では、深刻な「人手不足」が発生していると冨山氏は指摘します。

人手不足とは、経済学的に言えば「労働供給の不足」です。供給が不足し、需要が旺盛な場合、その価格は上昇します。労働市場においては、この「価格」が「賃金」に当たります。つまり、現場職における人手不足は、必然的に賃金の上昇圧力を生み出すのです。冨山氏も「静かに賃金が上がっています」と指摘するように、すでにその兆候は現れていると本書は伝えています。

これまで、多くの人は「安定したデスクワーク」を求めて、ホワイトカラーの道を選んできました。しかし、冨山氏の著書が警告するように、今はそのホワイトカラーの仕事がAIに代替され、供給過多になりつつあります。一方で、現場職は需要過多。この需給バランスの逆転が、キャリアパスの選択肢を大きく変えようとしていることが、本書では具体例を交えて解説されています。

私たち経理の人間が、企業の損益計算書を見る際、人件費は大きな固定費です。しかし、現場のエッセンシャルワーカーの人件費は、直接的に売上やサービス品質に結びつく「変動費」に近い性質を持つと考えることができます。例えば、介護施設であれば、介護士の数がサービスの質に直結し、それが利用者の満足度や稼働率に影響します。これは、経理的に見ても、投資に見合うリターンを生み出す「価値創造」につながる人件費と言えるでしょう。

労働需給のミスマッチが引き起こす賃金上昇

冨山氏の著書『ホワイトカラー消滅』が詳細に分析しているのは、日本の労働市場における深刻なミスマッチです。ホワイトカラー(特に中間管理職や事務職)が供給過多である一方で、現場職は供給不足という状況が生まれました。大学進学率が高まり、「ホワイトカラー志向」が強まった結果、多くの若者がデスクワークを志向し、肉体労働やサービス業の現場を避ける傾向が生まれたことが、本書では日本の教育システムの問題点と絡めて語られています。

しかし、現実に必要な労働力は、デスクワークよりも現場にあります。医療・介護、観光・宿泊、物流・運輸、建設など、いずれも私たちの生活や経済活動に不可欠な分野です。これらの分野で労働力が不足すれば、サービス品質の低下や、最悪の場合、サービス提供そのものが困難になるという、本書の警告は非常に現実的です。

例えば、本書で述べられているように、旅館の現場では、かつて人件費削減の対象となりがちだった「仲居さん」が、今や「金の卵」と表現されるほど希少な存在となっています。これは、人手不足が深刻化し、もはやアルバイトを集めるのも困難な状況に陥っているからだと冨山氏は分析します。このような状況では、企業は人材を確保するために、賃金を上げざるを得ません。

私たち経理の人間は、賃上げはコスト増として捉えがちです。しかし、人手不足によるサービスの提供停止や品質低下は、それ以上に大きな機会損失や評判の悪化を招きます。つまり、適切な賃上げは、企業の持続可能性を確保し、むしろ将来の売上と利益を守るための「戦略的投資」と考えることができるのです。賃上げによって優秀な人材を確保し、サービスの質を向上させることができれば、それが顧客満足度につながり、最終的には企業の収益向上に貢献するという、本書の示唆には深く納得させられました。

アドバンスド現場人材とは?:未来の働き方

「現場仕事の時代」と言っても、単に肉体労働に戻るわけではないと、冨山氏の著書『ホワイトカラー消滅』は明確にしています。本書では、「アドバンスド現場人材(アドバンスド・エッセンシャルワーカー)」という言葉で、未来の現場職のあり方が示唆されています。

これは、単に体を動かすだけでなく、高度な専門技能や知識、そしてAIやITツールを使いこなす能力を兼ね備えた現場の人材を指します。例えば、本書でも触れられている医師やパイロットは、まさしくこのアドバンスド現場人材の典型です。彼らは高度な専門知識と判断力、そして現場での実践的なスキルを兼ね備え、AIは彼らの仕事を代替するのではなく、むしろ「サポート」するツールとして機能します。AIは診断の補助や情報提供を行い、医師は最終的な判断と治療を、パイロットは航空機の操縦と緊急時の判断を行うという関係性が本書では解説されています。

介護士であれば、単に介助を行うだけでなく、IoT(モノのインターネット)デバイスで利用者の状態をモニタリングし、AIが提供する健康データを活用して、より個別化されたケアプランを立案する。建設現場であれば、ドローンで現場を測量し、AIが最適な施工計画を提案する中で、現場の職人はその計画を具現化するための高度な技能と判断力を発揮する。このような働き方が、これからの「現場仕事」の主流となっていくと本書は予測しています。

私たち経理の視点から見ると、アドバンスド現場人材は、その「労働生産性」を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。AIやITツールを「保管材」として活用することで、少ない人数でより多くの付加価値を生み出すことができるのです。労働生産性が向上すれば、当然、賃金も上がります。これは、企業が利益を確保しつつ、従業員に高い報酬を支払うための、健全なサイクルを生み出すと、本書は力強く説いています。

医学部が依然として高い人気を誇るのは、まさに「ジョブ型」であり、将来の安定と高収入が見込める「現場仕事」であると、若者たちが本能的に理解しているからかもしれないという冨山氏の考察は、非常に興味深いものでした。大学選択の段階から、漫然とホワイトカラーを目指すのではなく、このような「現場で価値を生み出すスキル」を身につけることの重要性が、ますます高まっていると本書は私たちに教えてくれます。

あなたがこれからのキャリアを真剣に考えるなら、ぜひ本書を手に取ってみてください。きっと新たな視点が得られるはずです。


日本経済の真実:『ホワイトカラー消滅』が示すグローバル産業からローカル産業へのシフトが意味するもの

冨山和彦氏の著書『ホワイトカラー消滅』を読んで、私が日本の経済構造について新たな視点を得られたのは、「グローバル産業」と「ローカル産業」の比率に関する解説です。私たちはとかく、華々しいグローバル企業に目を奪われがちですが、実は私たちの経済の大部分は、あまり注目されない「ローカル産業」によって支えられているという冨山氏の指摘は、非常に重要な意味を持っています。

見えざる「ローカル経済」の巨大な存在

本書『ホワイトカラー消滅』によると、私たちはとかく、トヨタやソニー、ユニクロといった国際的に名を知られた「グローバル産業」に目を奪われがちです。確かに、これらの企業は日本経済を牽引し、外貨を稼ぎ出す重要な存在であると冨山氏も認めています。しかし、本書の指摘によれば、これらのグローバル産業が日本全体のGDP(国内総生産)に占める割合は、わずか3割程度に過ぎないとされています。

では、残りの7割は何でしょうか? それが、私たちの身近にある「ローカル産業」であると本書は解説します。例えば、地域のスーパーや商店といった「小売業」、ホテルや旅館、観光施設といった「宿泊・観光業」、トラック輸送や宅配便を担う「物流・運輸業」、病院や介護施設といった「医療・介護」、そして地域のインフラを支える「建設業」などがこれに当たります。

これらのローカル産業は、特定の地域に根ざし、そこで働く人々が、その地域の住民に対してサービスを提供することで成り立っています。彼らは、私たちの日常生活に不可欠な存在でありながら、その多くが中小企業であり、普段はあまり表舞台に立つことはありません。しかし、彼らが提供するサービスがなければ、私たちの生活は成り立たないと、本書は彼らの重要性を強調しています。

エンジョイ経理編集長である私が、地域経済の活性化を考える際、これらのローカル産業の重要性を痛感するのも、冨山氏の指摘と合致する点です。グローバル企業が大都市圏に集中する一方で、地域に根ざしたローカル産業は、地方に多くの雇用を生み出し、消費を喚起し、地域コミュニティを維持する上で欠かせない存在だからです。地域経済の「毛細血管」とも言える彼らが健全に活動しているからこそ、日本全体が機能しているという本書の分析には深く納得させられました。

グローバル企業の賃金競争と日本の立ち位置

『ホワイトカラー消滅』では、先進国においては、人件費の上昇や環境規制の強化などにより、製造業の海外移転が進む傾向にあることが指摘されています。グローバル企業は、より安価な労働力と緩やかな規制を求めて、新興国へと生産拠点を移していきます。これにより、先進国では製造業の雇用が減少し、サービス業へのシフトが進むのが一般的な流れだと解説されています。

この流れの中で、グローバル産業におけるホワイトカラーの雇用も、その数を減らしていく傾向にあると冨山氏は警告します。本書で語られているように、グローバル企業内でのホワイトカラーの人数も、今後はますます必要とされなくなるでしょう。なぜなら、彼らが行う「情報処理」や「調整」の仕事は、AIやITによって効率化され、国境を越えてリモートで業務を遂行できるようになるからです。

また、グローバル市場で競争する製造業の場合、その人件費は、世界の平均的な賃金水準に引っ張られる傾向があると本書は指摘します。冨山氏は、一般的な組み立て産業における平均年収が1万ドルから1万5千ドル(約150万円〜225万円)になる可能性を示唆しています。現在の日本の平均年収が約4万ドルであることを考えると、これは非常に低い水準です。もし日本がこのグローバル競争に巻き込まれ、グローバル産業が日本国内で大量雇用を生み出そうとすれば、それは賃金の低下を意味するでしょう。

私たち経理の人間が、企業の損益分岐点分析やコスト構造を考える際、人件費は常に重要な要素です。グローバル競争が激化する中で、企業はコストを抑えるために必死です。もし国内で高い人件費を支払い続ければ、国際的な競争力を維持することが困難になります。つまり、グローバル産業が日本国内で「大量雇用」を生み出すモデルは、その賃金水準において、もはや現実的ではない可能性が高いという冨山氏の分析は、非常に説得力がありました。

地方創生と「生産性向上」の不可分な関係(経理視点)

この状況において、日本経済の主力となり、雇用を支えるのは、間違いなく「ローカル産業」であると、冨山氏は本書『ホワイトカラー消滅』で断言しています。これは、地方創生という視点からも非常に重要な指摘です。

地方経済を活性化させるためには、地元の企業が強くなり、雇用を創出し、賃金を上げていく必要があります。しかし、本書でも触れられているように、ローカル産業の多くは中小企業であり、これまで「生産性」という概念があまり重視されてこなかった側面があります。賃金が上がらず、人材が集まらない、という負のサイクルに陥っている地域も少なくありません。

私たち経理の視点から見ると、地方創生とローカル産業の成長の鍵は、まさに「労働生産性」の向上にあります。労働生産性とは、「従業員一人あたり、あるいは労働時間あたりにどれだけの付加価値を生み出したか」を示す指標です。ローカル産業の生産性を上げることができれば、同じ人数、あるいは少ない人数で、より多くの価値を生み出し、結果として賃金を上げることが可能になるという、本書の論は非常に明快です。

例えば、地域の飲食店がPOSシステムや予約システムを導入し、仕入れや在庫管理を効率化する。観光施設がデジタルマーケティングを強化し、インバウンド需要を効果的に取り込む。介護施設がIoTやAIを活用し、業務効率を高めながら質の高いサービスを提供する。これらは全て、本書で示唆されているローカル産業における生産性向上の具体的な取り組みです。

これまで日本は、グローバル産業が「外貨を稼ぐ」役割を担い、ローカル産業が「国内の雇用を維持する」役割を担うという分業体制が漠然と存在していました。しかし、これからはローカル産業が、ただ雇用を維持するだけでなく、「生産性を高め、賃金を上げて、国内経済を牽引する」という、より積極的な役割を担う必要が出てきていると、本書は私たちに訴えかけます。

日本はこれまで、移民の受け入れに消極的でした。これは、労働力不足という観点ではデメリットでしたが、逆に「チープレイバー」に頼ることなく、国内の労働生産性を高めざるを得ない状況を生み出していると、本書は分析しています。欧米諸国が移民によって労働力不足を補ってきた結果、低賃金のローカル産業が維持され、労働生産性の向上が遅れたという側面があることを考えると、日本のこの状況は、むしろ「黄金の時代」の到来を告げるものかもしれないという冨山氏の考察は、非常に刺激的でした。

地方に根ざした「ローカル経済」が、これからの日本の経済成長と私たちの豊かな生活を支える主役となる。この大きな潮目の変化を理解し、私たちが自身のキャリアを、いかにこの新しい波に乗せていくかを考えることが、今、最も重要な課題となっていると、本書は私たちに問いかけます。


賃金を上げる唯一の方法:『ホワイトカラー消滅』が解き明かす労働生産性向上のメカニズム

私たちは皆、「賃金を上げたい」と願っています。しかし、具体的にどうすれば賃金が上がるのか、そのメカニズムを正確に理解している人は意外と少ないかもしれません。冨山和彦氏の著書『ホワイトカラー消滅』を読んで、私が最も感銘を受けたのは、賃金を上げる唯一の、そして最も確実な方法は「労働生産性を上げること」であるという明快な説明でした。エンジョイ経理編集長として、この労働生産性という指標の重要性と、それを向上させる具体的な方法を、本書の解説と会計の視点も交えながら解説します。

付加価値労働生産性とは?:数字が語る真実(経理視点)

本書『ホワイトカラー消滅』で冨山氏が詳しく解説している「付加価値労働生産性」とは、企業が生産活動によって生み出した「付加価値額」を、「労働投入量(総労働時間)」で割ったものです。簡単に言えば、「1時間あたり、どれだけの儲けを生み出したか」を示す指標となります。

付加価値労働生産性 = 付加価値額 ÷ 総労働時間

本書によると、ここでいう「付加価値額」とは、企業が外部から購入した原材料費や外注費などを差し引いて、自社の活動によって新たに生み出した価値のことです。会計的には、売上高から変動費(原材料費、仕入れ費など)を引いた「粗利益」に近い概念と捉えることができると、冨山氏は説明しています。

この付加価値労働生産性がなぜ重要なのでしょうか? それは、賃金との直接的な関係があるからです。企業が生み出した付加価値は、最終的に従業員への「賃金」、株主への「配当」、設備投資などの「内部留保」といった形で分配されます。このうち、賃金に分配される割合を「分配率」と呼びます。

賃金 = 付加価値額 × 分配率

冨山氏は本書で、この「分配率」は「世の中の人が思ってるほどね、あのいじれません」と指摘しています。人手不足の状況では、分配率を下げれば従業員は他社に流出し、人材を確保できなくなります。つまり、企業が賃金を上げるためには、分配率を大きく変えるのではなく、分子である「付加価値額」を増やすか、あるいは分母である「総労働時間」を減らす、つまり「付加価値労働生産性」を向上させるしかないと、本書は断言しているのです。

さらに、この付加価値労働生産性は、国の経済規模を示す「GDP(国内総生産)」とも密接に関わっていると本書は解説します。

GDP = 付加価値労働生産性 × 総労働時間

GDPは、国内で生み出された付加価値の合計であり、まさに「ありの形」だと冨山氏は表現しています。人口減少が進み、総労働時間が減少していく日本において、GDPを増やし、経済成長を遂げるためには、付加価値労働生産性を上げるしかないという本書の論は、非常に明快です。賃金が上がるということは、個人の所得が増え、それが消費に繋がり、経済全体が活性化する好循環を生み出すと冨山氏は指摘します。私たち経理の人間は、個々の企業の財務状況だけでなく、このマクロ経済的な視点からも、労働生産性向上の重要性を理解し、経営者にその必要性を訴えかける必要があると痛感しています。

価格決定力と差別化戦略の重要性

では、具体的にどうすれば付加価値額を増やせるのでしょうか? 冨山氏の著書『ホワイトカラー消滅』では、付加価値額を増やす主な方法として以下の二つを挙げています。

  1. 価格決定力(プライシング)の強化
    • これは「ちゃんと値段いい値段で売りましょう」ということです。高品質な製品やサービスを提供することで、競争相手よりも高い価格を設定できる力を指します。漫然と他社と同じような製品を安売りするだけでは、付加価値は増えません。企業は、自社の製品やサービスが顧客に「いくらまでなら払ってもらえるか」を見極め、適切な価格を設定する勇気を持つ必要があると本書は示唆しています。
    • エンジョイ経理編集長である私は、原価計算や損益分岐点分析を通じて、価格設定が企業の収益性にどう影響するかを常に分析しています。単に「売れるから」と安売りを続ける企業は、結果的に付加価値が低くなり、賃上げの余地も生まれないことを本書は裏付けています。適正な利益を確保できる価格設定は、健全な企業経営の基盤であると強く再認識させられました。
  2. 差別化と競争力
    • これは「人と違うことを提供する」ことです。独自の技術、高品質なサービス、卓越した顧客体験、ブランド力など、競合他社には真似できない独自の強みを持つことで、顧客から選ばれる企業になる必要があると本書は強調しています。コモディティ化(一般的な商品化)が進む市場では、価格競争に陥りやすく、結果として付加価値が低下します。
    • 本書では、日本の多くの企業が、「失われた30年」の間、デフレ経済下で「コストダウン」を追求する経営に傾注してきたことが指摘されています。これは、他社との差別化が難しく、価格競争に巻き込まれてきた結果でもあります。しかし、これからは、安さを追求するのではなく、いかに「高い価値」を提供し、適切な価格で顧客から選ばれるか、という「価値創造」と「差別化」の戦略が不可欠であると、冨山氏は警鐘を鳴らしています。

自動化・DXとAIがもたらす生産性革命

付加価値労働生産性の分母である「総労働時間」を減らす、つまり効率化することも重要だと、冨山氏の著書『ホワイトカラー消滅』は述べています。ここでは、以下の要素が鍵となります。

  1. 自動化とDX(デジタルトランスフォーメーション)
    • 「見える化」を通じて業務プロセスを効率化し、無駄を削減します。RPA(Robotic Process Automation)による定型業務の自動化や、クラウドシステムの導入による情報共有の円滑化などがこれにあたります。
    • 私たち経理部門は、DXの推進において重要な役割を担っています。例えば、請求書処理の自動化、経費精算システムの導入、予算管理のデジタル化などは、経理業務の効率を劇的に改善し、社員の労働時間を削減するだけでなく、より戦略的な業務に時間を割けるようにします。これは、経理部門自身の生産性向上にも直結すると、本書の示唆から改めて確認できました。
  2. AIの活用
    • AIは、ホワイトカラーの仕事を代替するだけでなく、現場仕事を含め、あらゆる業務の生産性を向上させる「保管材」としても機能すると、本書は強調しています。例えば、製造現場におけるAIによる品質管理、物流における最適なルート提案、医療現場での診断支援など、AIは人間がより高度な業務に集中できるようサポートします。
    • 冨山氏は本書で、AIが「対面のコミュニケーションが取れるようになる」ことで、ユーザーのハードルが下がり、さらなる自動化が進むと指摘しています。AIが顧客対応を担うことで、人間はより複雑な課題解決や創造的な活動に集中できるようになり、結果として企業全体の生産性が向上するという分析は、非常に納得感がありました。

日本がこれまで、欧米に比べて自動化やDXの導入が遅れてきたのは、一つには「完全雇用」に近い状況で、失業問題への配慮があったからかもしれないと本書は示唆しています。しかし、今は労働力そのものが不足しているため、自動化による失業の心配は限定的です。むしろ、自動化を進めなければ、労働力不足によってサービス提供が困難になり、経済活動が停滞してしまうリスクがあると冨山氏は警告します。これは、日本にとって「自動化のチャンス」であると捉えることができるという本書のメッセージは、私たちに大きな勇気を与えてくれます。

企業の「新陳代謝」を促す社会の必要性

賃金上昇と生産性向上のためには、企業の「新陳代謝」も不可欠だと、冨山氏の著書『ホワイトカラー消滅』は力強く説いています。冨山氏は「いい経営しろってことなんですよ」と述べ、結局は経営力の問題に帰結すると指摘しています。

本書によると、日本はこれまで、企業や雇用の「安定」を重視しすぎて、新陳代謝を抑制してきた側面があります。特に「失われた30年」の間、企業は「なんとか雇用を守る」ことを優先し、非効率な企業や生産性の低い事業でも、無理に存続させてきました。これにより、従業員は安定した雇用を確保できましたが、その代償として、企業の成長や賃上げが停滞したという、本書の分析は非常に冷静です。

エンジョイ経理編集長である私が、企業の財務状況を見る中で、生産性の低い企業が市場から退出できない状況が、健全な経済成長を阻害することを痛感するのも、冨山氏の指摘と合致する点です。ゾンビ企業と呼ばれるような、借金でなんとか生きながらえている企業が存続することは、市場全体の資源(人材、資金)を非効率な形で拘束し、生産性の高い新しい企業への資源供給を妨げると本書は警鐘を鳴らします。

しかし、今は状況が変わったと冨山氏は指摘します。現在の倒産の多くは「人件費倒産」「人手不足倒産」であり、これはむしろ「悪い倒産ではない」とされています。労働力不足が深刻な今、生産性の低い企業は、人材を確保できずに市場から退出せざるを得ません。これは、その企業が抱えていた労働力や資金が、より生産性の高い、賃金の良い企業へと移動する「新陳代謝」のプロセスと捉えることができるという、本書の新たな視点には目から鱗が落ちる思いでした。

もちろん、企業の倒産は、そこで働く人々にとっては大きな打撃です。しかし、社会全体で見れば、これは資源の最適配分であり、より多くの付加価値を生み出す企業へと労働力がシフトしていくことで、最終的に社会全体の賃金水準が向上することにつながるという、冨山氏の論は非常に説得力があります。私たち経理の人間は、この新陳代謝を促進するために、M&A(企業の合併・買収)や事業再編、事業統合といった動きを積極的に支援し、労働者がスムーズに再就職できるよう、リスキリングなどの支援制度を充実させることの重要性を、政府や経営層に訴え続ける必要があると強く感じました。

賃金上昇のメカニズムと労働生産性向上の真実を、より深く理解するためには、ぜひ『ホワイトカラー消滅』を手に取ってみてください。


「解雇規制の誤解」を解く:『ホワイトカラー消滅』が描く日本の労働市場の現在地と未来

日本の「解雇規制」は「きつい」と言われることがよくあります。しかし、冨山和彦氏の著書『ホワイトカラー消滅』を読んで、私が驚かされたのは、この議論には多くの誤解が含まれているという冨山氏の指摘でした。エンジョイ経理編集長として、この解雇規制の真実を法的な側面から、そして企業再生の現場から見てきた冨山氏の現実を交えながら解説し、日本の労働市場の現在地と未来を展望します。

日本の解雇規制は「きつい」のか?:法的な側面から

まず、大前提として知っておくべきは、冨山氏の著書『ホワイトカラー消滅』でも強調されているように、「世界中どこにも無条件で自由に解雇できる国はありません」ということです。アメリカのような解雇が容易とされている国でも、「不当解雇」の概念は存在し、差別や報復を目的とした解雇は認められません。どの国においても、企業側の都合(経済的事情)で従業員を解雇する場合、一定の「合理性」や「客観的根拠」が求められると、本書は国際比較を交えて解説しています。

日本の解雇規制が「きつい」と言われる主な原因は、「解雇権濫用(かいこけんらんよう)の法理」という考え方にあると、本書は説明しています。これは、民法の「雇用契約は解雇自由」という原則に対し、判例を通じて発展してきた考え方です。「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、解雇権を濫用したものとして無効とする」というものです。この法理は、労働契約法に明記されています。

つまり、日本の場合、企業が従業員を解雇しようとすると、その解雇が「客観的に合理的な理由」に基づいており、「社会通念上相当」であると認められる必要があります。これは、企業側にとって非常に高いハードルとなり、裁判で解雇が無効と判断されるリスクを伴うと冨山氏は指摘しています。

しかし、この「きつさ」は、あくまで「会社側の経済的事情による解雇」の場合に限定されることを理解しなければならないと本書は強調します。従業員側に明らかな問題がある場合(例えば、無断欠勤が続く、会社の機密情報を漏洩した、ハラスメントを行った、業務能力が著しく低いにもかかわらず改善が見られないなど)には、日本でも懲戒解雇や普通解雇が可能であると冨山氏は述べています。ただし、これらの場合も、会社側が「客観的な事実」と「適切なプロセス」を踏んだことを証明できる必要があると付け加えられています。

冨山氏は本書で、裁判で解雇を争うと、そのプロセスが長く、労力とコストがかかることを指摘しています。仮に裁判で労働者側が勝訴し、解雇が無効となっても、元の職場に復帰したいと考える労働者は少ないでしょう。このような状況が、「日本の解雇はきつい」という認識を広げてきた背景にあると、本書は冷静に分析しています。私たち経理の人間は、もし企業が不当解雇の訴訟を起こされれば、多額の訴訟費用や賠償金が発生し、企業の財務状況に大きな影響を与えることを知っています。そのため、企業は訴訟リスクを避ける傾向にあると私も実感しています。

希望退職制度の現実:企業と個人の思惑

日本の企業が、経済的な理由で人員削減を行う場合、裁判リスクを避けるために利用されるのが「希望退職制度」です。これは、企業が一定期間、従業員に自主的な退職を募り、退職金の上積みや再就職支援といった優遇措置を設ける制度であると、冨山氏の著書『ホワイトカラー消滅』で詳しく解説されています。

冨山氏は本書で、希望退職制度の現状について「大体今ね募集人員の2倍から3倍大体応募がきます」と語っています。これは、多くの「ホワイトカラー」が、自身の将来に不安を感じ、良い条件であれば会社を辞めて転職したいと考えている現実を示唆しています。特に、中間管理職クラスの中高年層は、AIによる業務代替の波を肌で感じ、自身のスキルが将来にわたって通用するのか、漠然とした危機感を抱いている人が少なくないと冨山氏は分析しています。

私たち経理の人間は、希望退職の費用対効果を計算する際、退職金の上積みや再就職支援費用といった一時的なコストと、それによって将来の人件費削減効果や組織のスリム化によって得られるメリットを比較します。この制度は、企業にとってはスムーズな人員調整の手段であり、従業員にとっても、まとまった資金を得て、新しいキャリアに挑戦する機会となる可能性があると、本書は示唆しています。これは、いわゆる「リストラ」という言葉が持つネガティブなイメージとは異なり、企業と個人の双方にとって、ある種の「Win-Win」の関係を築ける可能性を秘めていると言えるでしょう。

ただし、本書でも触れられているように、希望退職に応募する人々は、多くの場合、ある程度のスキルや市場価値を持ち、次のキャリアを自力で探せる自信がある層です。本当にスキルが不足していたり、年齢的に転職が難しい層は、希望退職に応募しづらいという側面もあります。ここが、労働市場の流動化を阻む一因にもなると、冨山氏は指摘しています。

真の労働市場流動化を阻むもの:リスキリングの重要性

冨山氏の著書『ホワイトカラー消滅』が強く訴えかけるのは、「解雇規制の緩和」は、現在の日本においては労働市場の流動化に対して「ほとんど政策効果がない」可能性があるという点です。なぜなら、本当に流動化を阻んでいるのは、解雇の難しさだけではないからです。

本書が定義する真の労働市場の流動化とは、人々が自身のスキルやキャリアプランに合わせて、より生産性の高い企業、より良い賃金が得られる職場へとスムーズに移動できることです。しかし、これを阻む要因がいくつか存在すると、冨山氏は解説しています。

  1. スキルギャップ
    • 従来の日本の雇用慣行は、企業内でのOJT(On-the-Job Training)が中心であり、社員は汎用的なスキルよりも、特定の企業や部署でしか通用しない「企業固有スキル」を身につける傾向があったと本書は指摘します。そのため、一度会社を辞めてしまうと、他の企業で通用するスキルが不足している、という問題に直面しやすくなります。
    • 特に、AIやデジタル技術の進化によって、求められるスキルが急速に変化する中で、既存のスキルが陳腐化してしまうリスクも高まっていると警鐘を鳴らしています。
  2. リスキリングの不足
    • 政府や企業によるリスキリング(学び直し)支援の仕組みが、まだ十分に浸透しているとは言えないと冨山氏は述べます。労働者自身も、日々の業務に追われ、自発的に学び直す時間や金銭的な余裕がない場合があります。
    • 冨山氏は「リスキリングであるとかってことが大事になってる時代」だと強調しています。企業が従業員を「閉じ込めて」低賃金で働かせるよりも、従業員が自らの意思でスキルを向上させ、より生産性の高い職場へ移れるような社会システムを構築することが、労働市場の流動化には不可欠であると、本書は強く訴えかけています。
  3. 社会的なスティグマ
    • 本書でも触れられているように、日本では、「転職が多い」ことや「会社を辞めること」に対して、まだネガティブなイメージを持つ人が少なくありません。これにより、安易な転職を躊躇する傾向があると分析されています。

私たち経理の人間は、企業の財務状況だけでなく、人的資本の健全性にも目を向ける必要があります。従業員への教育投資(リスキリング)は、短期的な費用増となりますが、中長期的に見れば、従業員の生産性を高め、企業の競争力を強化するための重要な「投資」であると、本書から改めて学ぶことができました。企業は、従業員が社外でも通用するスキルを身につけられるよう支援し、従業員もまた、自身の市場価値を高めるために積極的に学び直す姿勢が求められます。

「解雇規制の緩和」という議論は、えてしてセンセーショナルに報じられがちですが、その本質は「労働市場の健全な新陳代謝をどう促すか」という、より多角的で複雑な問題にあると、冨山氏の著書『ホワイトカラー消滅』は私たちに教えてくれます。真に目指すべきは、誰もが自身の能力と市場のニーズに合わせて、より良いキャリアを築けるような「セーフティネット」と「流動性の高い環境」の構築なのです。


エンジョイ経理編集長からのメッセージ:あなたのキャリアを再構築するために

ここまで、冨山和彦氏の著書『ホワイトカラー消滅』が提唱する「ホワイトカラー消滅」という衝撃的な提言を基に、現代社会が直面している労働市場の激変について、深く掘り下げてきました。AIの進化、労働人口の減少、経済構造の変革といった大きな波は、私たちのキャリアに否応なく影響を与え続けています。

私たちエンジョイ経理編集部が日頃から数字と向き合う中で感じるのは、企業経営も個人のキャリアも、もはや「漫然と旧来のやり方を踏襲する」だけでは立ち行かない時代になった、ということです。特に、本書が「反間費」という形で企業の固定費を圧迫してきたと指摘するホワイトカラーの多くは、その役割の再定義を迫られていると、改めて痛感しました。

しかし、本書が伝えるのは決して悲観的な話ばかりではありません。むしろ、これまで「見えざる経済」としてあまり注目されてこなかった「ローカル産業」や「現場仕事」に、新たな光が当たっているのです。AIが代替できない、人間ならではの「五感」と「コミュニケーション能力」、そして「実践的な技能」を持つ人材の価値は、今後ますます高まっていくと、冨山氏は希望を与えてくれます。

では、私たちはこの激動の時代を生き抜くために、何をすべきでしょうか? 本書が示唆する行動指針を参考に、私も以下の点を実践していきたいと考えています。

  1. 自己の「市場価値」を客観的に評価する
    • あなたのスキルは、他の企業でも通用しますか? AIに代替されやすい仕事ではありませんか? 定期的に自身のスキルセットを見直し、市場のニーズと照らし合わせてみましょう。私たち経理の人間も、単なる伝票処理や帳簿付けだけでなく、データ分析、経営戦略への提言、DX推進など、より付加価値の高いスキルを磨く必要があります。
  2. 「リスキリング(学び直し)」を日常にする
    • 大学時代に学んだことや、これまでの職場で身につけたスキルだけで、一生安泰という時代は終わりました。新しい技術、新しいビジネスモデル、新しい働き方について、常に学び続ける姿勢が不可欠です。オンライン学習、資格取得、専門書を読むなど、方法はいくらでもあります。特に、AIやDXに関する知識は、もはや全てのビジネスパーソンにとっての「共通言語」となりつつあります。
  3. 「現場」への視点を持つ
    • たとえ今、デスクワーク中心の仕事をしていても、自身の仕事が最終的に「顧客」や「現場」にどう貢献しているのか、常に意識しましょう。可能であれば、現場に出て、顧客の声に耳を傾け、リアルな課題を肌で感じる経験を積むことが、あなたの仕事の質を高め、新たな価値創造のヒントを与えてくれるはずです。私たち経理の人間も、数字の裏にある「現場の物語」を知ることで、より実効性のある経営改善策を提案できるようになります。
  4. 「ジョブ型」思考に切り替える
    • 日本の雇用慣行は「メンバーシップ型」が主流でしたが、本書が予測するように、これからは「ジョブ型」へのシフトが進むでしょう。これは、特定の「職務(ジョブ)」に対して人材をアサインする考え方です。あなたのスキルが、どのような「ジョブ」で活かせるのか、そしてどのような「ジョブ」をこれから獲得したいのか、具体的に考えることが重要です。
  5. 「守りの経営」から「攻めの経営」へ、個人のキャリアも転換する
    • これまで多くの日本企業が「守りの経営」を強いられてきたように、私たち個人のキャリアも「安定」を追求しがちでした。しかし、この激動の時代には、変化を恐れず、自らリスクを取って新しいことに挑戦する「攻め」の姿勢が求められます。転職、副業、独立、あるいは社内での新たな役割への挑戦など、自身の可能性を広げる選択肢を常に検討しましょう。

私たちエンジョイ経理編集部は、数字を通じて企業の過去と現在を読み解き、未来の経営戦略を考えるお手伝いをしています。そして、そこで得た知見は、個人のキャリア形成においても大いに役立つと確信しています。なぜなら、企業経営も個人のキャリアも、本質的には「限られたリソースを最大限に活用し、いかにして付加価値を生み出し、成長を続けるか」という点で共通しているからです。

この「ホワイトカラー消滅」の時代は、私たち一人ひとりが自身のキャリアを再定義し、真に価値ある人材へと変貌を遂げる、絶好のチャンスです。変化を恐れず、共に学び、新しい時代を力強く生き抜いていきましょう。

もし、この記事を読んで、さらに深く冨山和彦氏の洞察に触れたいと感じたなら、ぜひ彼の著書『ホワイトカラー消滅』を手に取ってみることを強くお勧めします。あなたの未来を切り拓くヒントが、きっと見つかるはずです。


引用・参照先リンク:


免責事項:
本記事は、冨山和彦氏の著書『ホワイトカラー消滅』の内容、公開されている情報、および経済学・会計学の一般的な見解に基づき、エンジョイ経理編集長の個人的な感想と考察を加えて作成されています。記事中の意見や予測は、必ずしも未来を保証するものではありません。個人のキャリア形成や企業の経営判断については、専門家への相談やご自身の責任においてご判断ください。

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