【税理士に聞いた】「160万円の壁」それって本当に得なのか?最新税制改正案のポイントを徹底解説!

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税金実務教育

「160万円の壁」
それって本当に得なのか?
自民党の最新税制改正案
ポイントを徹底解説!

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  1. はじめに
  2. 1. 年収の壁とは何か:基本の103万円・130万円・150万円を再確認
    1. 1-1. 103万円の壁
      1. ポイント
    2. 1-2. 130万円の壁
      1. ポイント
    3. 1-3. 150万円の壁
      1. ポイント
  3. 2. 「年収160万円の壁」最新案のポイント:年収200万円以下への優遇
    1. 2-1. 提案された新たな非課税ライン
    2. 2-2. なぜ「200万円以下」に限定するのか
      1. しかし要注意!
  4. 3. 給与所得控除・基礎控除の仕組み:なぜ合計で160万円か
    1. 3-1. 給与所得控除とは
    2. 3-2. 基礎控除とは
    3. 3-3. 160万円の内訳
      1. 重要な注意点
  5. 4. 【表で比較】現行・税制改正対抗・160万円案の控除と年収区分
  6. 5. 年収200万円超~500万円層への2年間限定控除:メリットと落とし穴
    1. 5-1. 2年間限定上乗せの内容
    2. 5-2. 短期的な恩恵
    3. 5-3. 長期的な不透明感
      1. さらに注意
  7. 6. 住民税はどうなる?所得税との違いと注意点
    1. 6-1. 所得税と住民税の基礎控除は同額ではない
    2. 6-2. 給与所得控除の最低保障額との連動
    3. 6-3. 「所得税が非課税でも住民税が課税」という可能性
  8. 7. 国民民主党「178万円案」と公明党の立場:合意形成の行方
    1. 7-1. 国民民主党の主張:年収178万円まで非課税枠拡大
    2. 7-2. 公明党は低所得支援の強化を重視
    3. 7-3. 少数与党の自民党:法案可決には公明・国民民主の協力が不可欠
  9. 8. 160万円の壁がもたらすメリット・デメリット
    1. 8-1. メリット
    2. 8-2. デメリット
    3. 8-3. 経済全体への影響
  10. 9. 就労調整と企業現場への影響:新たな壁は働き方にどう作用するか
    1. 9-1. パート・アルバイトの就労調整
    2. 9-2. 企業の人材確保・シフト管理に影響
    3. 9-3. 生産性向上への逆行
  11. 10. 税制改正対抗は覆るのか:法案成立までの道筋と最新情報の重要性
    1. 10-1. 税制改正対抗の運用慣例
    2. 10-2. 覆る可能性と修正の余地
    3. 10-3. 常に最新動向を追う必要性
  12. 11. まとめ:複雑化する年収の壁と今後の展望
  13. 12. 免責事項

はじめに

「年収の壁」という言葉は、パート・アルバイトや契約社員、フリーランスなど、さまざまな働き方をする人々が直面する大きな問題です。所得税・住民税・社会保険料などの制度が複雑に絡み合い、ある特定の年収を超えると急に手取りが減るといった現象が起こります。

これまで有名だった「103万円の壁」や「130万円の壁」「150万円の壁」に加え、新たに「160万円の壁」が議論を巻き起こしています。今回、自民党税制調査会から提示された「年収200万円以下の人に対して、所得税の非課税枠を実質160万円まで拡大する」という案は、一見すると低所得者層を手厚く保護するように見えますが、

  • 200万円を超えた層への影響
  • 住民税との違い
  • 2年間の限定措置
  • 国民民主党の「178万円案」
  • 公明党との調整

など多くの論点が存在し、全体像がやや複雑です。

本記事では、エンジョイ経理編集長が顧問税理士に聞いた内容をまとめております。最新税制改正案で浮上する「160万円の壁」について、なるべくわかりやすく整理・解説します。特に年収200万円以下・200万円超~500万円以下・500万円超の三つの区分に注目し、それぞれがどのように変わるのかをなどを用いて丁寧に紹介します。さらに、年収制限や住民税への影響、そして政治的な駆け引きによる修正・成立の可能性についても掘り下げることで、読者の皆様がご自身の働き方・家計管理に生かせるよう詳述します。



1. 年収の壁とは何か:基本の103万円・130万円・150万円を再確認

1-1. 103万円の壁

「103万円の壁」は、もっとも基本的な所得税の非課税ラインです。給与所得者の場合、給与所得控除55万円(現行制度)+基礎控除48万円=103万円までは所得税がかからない仕組みになっています。

ポイント

  • 年収が103万円以下なら、所得税は0円。
  • 年収103万円を少しでも超えると所得税がかかり始める。

1-2. 130万円の壁

「130万円の壁」は、被扶養者として社会保険(健康保険・年金)に加入できるかどうかの判定ラインです。年収130万円を超えると、自分で社会保険(健康保険・厚生年金)に加入しなければならない場合が多く、保険料の負担が大幅に増えるため、手取りが減ることがあります。

ポイント

  • 年収130万円を超えると、扶養から外れて社会保険料の自己負担が発生。
  • 企業規模や週の労働時間によっては年収106万円が適用される場合もある。

1-3. 150万円の壁

配偶者控除や配偶者特別控除の見直しに伴い、新たに「150万円の壁」とも呼ばれるラインが注目されてきました。これは、配偶者控除が縮小または廃止されるラインとして機能しているため、夫婦間の税負担に影響が出ます。

ポイント

  • 年収150万円を超えると、配偶者特別控除が少なくなる(ただし段階的に減少)。
  • 世帯全体の手取りが減る場合がある。

このように、年収が少し変わるだけで急に手取りが減る、いわゆる「段差」や「崖」のような現象が起きるのが年収の壁の正体です。


2. 「年収160万円の壁」最新案のポイント:年収200万円以下への優遇

2-1. 提案された新たな非課税ライン

自民党税制調査会が提示しているのは、年収200万円以下の人を対象に、給与所得控除と基礎控除を合計160万円まで拡大するという案です。これによって年収160万円程度までは所得税がかからず、結果的に手取りが増えるということになります。

2-2. なぜ「200万円以下」に限定するのか

大きな理由は財源確保です。もしこの160万円の壁を全ての所得層に適用すると、税収が大幅に減ってしまいます。そこで、もっとも支援が必要とされる低所得層(年収200万円以下)のみを厚めに保護する方向性が打ち出されています。

しかし要注意!

年収200万円をわずかに超えた人は、引き上げられた大幅な控除が使えず、結果として新たな「壁」が生まれる可能性が指摘されています。


3. 給与所得控除・基礎控除の仕組み:なぜ合計で160万円か

3-1. 給与所得控除とは

給与所得控除は、給与収入から一定額を差し引くことで課税対象となる所得を求めるための控除枠です。現行制度では最低55万円から始まり、収入に応じて控除額が段階的に変動します。また、税制改正対抗ではこの最低保障額を55万円 → 65万円へ引き上げることが盛り込まれています。

3-2. 基礎控除とは

基礎控除は、すべての納税者に与えられる所得控除で、現行48万円が一般的なラインです。現行の税制改正対抗ではこれも48万円 → 58万円に引き上げられる予定となっています。

3-3. 160万円の内訳

今回の提案でポイントになるのは、給与所得控除65万円 + 基礎控除95万円 = 160万円という形です。これが年収200万円以下の人に適用されると、年収160万円くらいまで所得税0円になる計算です。

重要な注意点

  • 年収190万円~200万円の人は、現行でも給与所得控除が65万円を超えているケースがあります。報道だけで見ると「引き上げ」と言われても、実際は控除が下がってしまう(もしくは変わらない)可能性があるため、今後の詳細な検討が必要です。
  • 自民党税制調査会の案そのものが流動的であり、今後の協議や国会審議で変更が加えられる余地があります。

4. 【表で比較】現行・税制改正対抗・160万円案の控除と年収区分

以下の表で、主な年収区分における給与所得控除および基礎控除の変化をまとめます。
(※実際には細かい収入計算式が存在しますが、ここでは最低保障額・拡大額のイメージで捉えてください)

年収区分現行制度(給与所得控除+基礎控除)税制改正対抗(給与所得控除+基礎控除)160万円案(給与所得控除+基礎控除)備考
200万円以下– 給与所得控除:最低55万円~段階的
– 基礎控除:48万円
– 給与所得控除:最低55万円→65万円
– 基礎控除:48万円→58万円
– 給与所得控除:65万円
– 基礎控除:95万円
合計160万円で所得税非課税に。ただし年収190万~200万円の人は現行制度でも65万円を超える控除あり。
200万超~500万円– 給与所得控除:段階的
– 基礎控除:48万円
– 給与所得控除:段階計算
– 基礎控除:58万円
– 給与所得控除:段階計算
– 基礎控除:68万円(2年間限定)
2年間限定で+10万円の上乗せ。3年後には再び58万円に戻る。
500万円超– 給与所得控除:段階的
– 基礎控除:48万円
– 給与所得控除:段階計算
– 基礎控除:58万円
– 給与所得控除:段階計算
– 基礎控除:58万円(据え置き)
上乗せなし。

ここでの重要点:

  1. 200万円以下の大幅拡大(計160万円)は、あくまで自民党案。
  2. 200万超~500万円には2年間限定の+10万円措置があるが、期間終了後には元に戻る
  3. 500万円超一切上乗せなし

5. 年収200万円超~500万円層への2年間限定控除:メリットと落とし穴

5-1. 2年間限定上乗せの内容

年収200万超~500万円以下の人には、基礎控除を10万円上乗せし68万円にする案が示されています。ただしこれは2年間のみで、3年後には再び58万円に戻る見通しです。

5-2. 短期的な恩恵

2年間は所得税額がやや軽減されるため、手取りが増える利点があります。特に年収が250万円や300万円程度の層は、節税効果をある程度感じられるでしょう。

5-3. 長期的な不透明感

3年目には控除が58万円に戻るため、その時点で「急に税負担が増えた」と感じる人も出てきます。恒久的な減税ではなく、政治的妥協としての一時措置にとどまるため、中長期的な人生設計には不安定要素となりかねません。

さらに注意

  • 社会保険料との兼ね合いは、いまのところ変わらないため、税負担が軽くなっても年収が増えれば社会保険料も増加する可能性があります。
  • 期間限定措置が終わると「結果的に以前よりも税負担が増えた」と感じる層が出る恐れがあり、不満がくすぶるリスクも否定できません。

6. 住民税はどうなる?所得税との違いと注意点

6-1. 所得税と住民税の基礎控除は同額ではない

一般的に、所得税の基礎控除は48万円(現行)ですが、住民税の基礎控除は43万円という別の枠が設定されています。税制改正で所得税側の控除を大幅に引き上げたとしても、必ずしも住民税側が同調するわけではありません。

6-2. 給与所得控除の最低保障額との連動

給与所得控除の最低保障額(現行55万円 → 改正65万円)については、住民税も概ね合わせる方向になると想定されますが、確定ではありません。過去の例を見ると、多くの自治体では国の動きにあわせることが多いものの、タイムラグが生じるケースもあります。

6-3. 「所得税が非課税でも住民税が課税」という可能性

所得税の基礎控除が95万円など大幅に引き上げられても、住民税の基礎控除が43万円のままなら、所得税はゼロでも住民税だけかかるという状況になり得ます。低所得層の方が、結果として「住民税だけ負担が残る」ことに驚き、不満を持つケースも出てくるでしょう。


7. 国民民主党「178万円案」と公明党の立場:合意形成の行方

7-1. 国民民主党の主張:年収178万円まで非課税枠拡大

国民民主党は自民党案よりも広い層に恩恵を与えるため、年収178万円まで非課税とするラインを提案しています。これは「200万円以下」とするよりも、もう少し柔軟な区分を狙ったものと考えられます。

7-2. 公明党は低所得支援の強化を重視

公明党は、もともと軽減税率給付付き税額控除など、低所得者対策に積極的な姿勢を取る傾向があります。ただし、国民民主党ほどは踏み込まず、最終的には自民党の案に近い形で合意を狙う可能性があります。

7-3. 少数与党の自民党:法案可決には公明・国民民主の協力が不可欠

現在、自民党は少数与党であるため、公明党や国民民主党の協力が不可欠です。もし両党が合意しなければ、税制改正関連法案の成立は困難になるため、

  • 160万円より少し拡大する
  • 年収制限の段階的適用
  • 2年間限定措置の延長

など、何らかの妥協点を模索する可能性が高いです。


8. 160万円の壁がもたらすメリット・デメリット

8-1. メリット

  1. 年収200万円以下の負担軽減
    • 生活が厳しい層の手取りが増え、消費が多少活性化することが期待される。
  2. 所得税申告手続きの簡略化
    • 非課税枠拡大により、「所得税がかからない人」が増えれば、確定申告不要のケースが増える可能性もある。
  3. 社会的な平等感
    • 低所得者に配慮するという政治的メッセージが強まり、一定の支持を得ることが見込まれる。

8-2. デメリット

  1. 年収200万円を超えた瞬間に起きる「崖」問題
    • 新たな壁が生じ、200万円を少し超える層が所得税を重く感じる懸念がある。
  2. 中間層への恩恵が薄い
    • 2年間限定で基礎控除を+10万円するだけでは、200万~500万円層へのインパクトが小さく、「一部の低所得者だけ優遇」との批判につながる可能性。
  3. 住民税や社会保険料との整合性不足
    • 所得税が非課税でも住民税や社会保険料で負担が生じ、トータルの手取りで思ったほど改善しない人も出てくる。

8-3. 経済全体への影響

年収200万円以下の層が多少消費を増やしたとしても、経済全体でみれば大きなエンジンになるかは不透明です。また、年収の壁が増えることで、働き方がさらに複雑化し、長期的に労働意欲や雇用の流動性が削がれるリスクも否定できません。


9. 就労調整と企業現場への影響:新たな壁は働き方にどう作用するか

9-1. パート・アルバイトの就労調整

従来の103万円の壁や130万円の壁でも見られたように、年収の壁を超えないようシフトや労働時間を調整する人が多く存在します。今回、160万円の壁と年収200万円以下という大きな制限が加わることで、「200万円は超えたくない」という心のブレーキがかかり、労働時間を抑える人が出る可能性があります。

9-2. 企業の人材確保・シフト管理に影響

飲食や小売、介護など、パートやアルバイトを多く雇用している企業では、年末や繁忙期に人手不足が深刻化するリスクがあります。特に、

  • 年収200万円ギリギリのライン
  • 週あたりの労働時間調整
    などを巡って、企業と労働者の駆け引きが激化する可能性があるでしょう。

9-3. 生産性向上への逆行

働き方改革の一環として、人々の生産性向上を狙う施策が進められている中、「壁」を意識して稼働をセーブする動きが広がると、日本全体の労働力不足や生産性の伸び悩みを助長しかねません。政策としては「低所得者保護」を目指しつつ、経済成長を妨げる結果を招く可能性もあるため、バランスをどう取るかが大きな課題です。


10. 税制改正対抗は覆るのか:法案成立までの道筋と最新情報の重要性

10-1. 税制改正対抗の運用慣例

毎年末、与党がまとめる「税制改正対抗」は、通常そのまま翌年度の税制として形づくられます。しかし、今回は自民党が少数与党であり、国民民主党や公明党の意見調整なくして法案を通すのは容易ではありません。

10-2. 覆る可能性と修正の余地

「160万円の壁」がそのまま法案化されるかどうかは流動的です。審議のなかで、

  • 年収ラインを200万円からもう少し引き下げる/引き上げる
  • 「2年間限定」を3年・4年に延長する
  • 「178万円案」を部分的に取り込む

など、さまざまな妥協策が検討される可能性があります。

10-3. 常に最新動向を追う必要性

個人で働き方を決める際や、企業が人件費管理を行う際には、最終的に成立する法案の正確な内容を把握することが大切です。政治情勢や財源問題、景気動向などに左右される要素が多いため、ニュースや政府公表資料、専門家の意見を定期的にチェックする必要があります。


11. まとめ:複雑化する年収の壁と今後の展望

  1. 年収160万円の壁とは
    • 自民党税制調査会が、給与所得控除と基礎控除を合計160万円まで拡大し、年収200万円以下の人を大幅に非課税にする案を提示。
  2. メリットとリスク
    • 低所得者層への手取り増・生活支援というメリットがある一方、年収200万円を超えた瞬間に新たな「壁」が生まれ、さらに税や保険料計算が複雑化する。
  3. 2年間限定の上乗せ措置
    • 年収200万超~500万円以下の人に対しては基礎控除を一時的に10万円上乗せするが、あくまで2年間だけの暫定施策。
  4. 住民税との違いに要注意
    • 所得税だけが非課税でも、住民税の基礎控除は43万円であり、負担が残る可能性がある。
  5. 国民民主党の178万円案・公明党との調整
    • 少数与党の自民党には公明党や国民民主党の協力が不可欠。法案化の段階で修正が入る可能性が高い。
  6. 就労調整や企業管理への影響
    • 年収200万円を意識して労働時間をセーブする人が増えれば、生産性や雇用流動に負の影響が及ぶ。
  7. 今後の展望
    • 税制改正対抗が最終決定される前に、政治的・財政的折衝が続く見込み。法案成立後も、実際の制度運用に不明瞭な点が生じる可能性があるため、最新情報をウォッチし続けることが重要。

結論として、低所得者支援の名目で大幅な非課税枠拡大を実施しようとする一方で、財源や住民税との不整合、年収200万円を超えた層との不公平感など、課題が山積しています。「新たな壁」が増えることに対しての批判も根強く、政策が最終的にどのような形で落ち着くかは未定です。働き方や家計管理を考える上で、引き続き政府・与党の動きや国会の審議状況を注視し、自分自身の年収水準や家族構成に合わせた対策を検討していくことが大切でしょう。


12. 免責事項

  • 本記事は、公開時点で報じられている内容や政府・与党等から示されている案に基づき、一般的な情報提供を目的としています。今後、法案審議や解釈変更などによって内容が変わる可能性があります。
  • 税務や社会保険に関する最終的な判断・申告は、必ず税理士や社労士などの専門家へ相談のうえ行ってください。
  • 本記事内の説明はあくまで概略であり、すべての個別事情に対応するものではありません。自らの具体的状況に当てはめる際には、最新情報や関連法令を必ず確認してください。

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