【経営者向け】役員社宅で賢く節税!持ち家を社宅にして手取りを増やす具体的な方法を税理士が徹底解説

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役員社宅を活用し持ち家を社宅化して節税する経営者のイメージイラスト 税金実務教育

経営者の皆さん、毎月の手取りを増やしたいとお考えですか?会社の利益を増やしたり、役員報酬を上げたりすることももちろん重要ですが、合法的な「節税」も、手取りを増やす上で非常に効果的な手段です。そして、その節税対策の中でも、特に大きなインパクトがあるのが「役員社宅」制度を活用する方法なんです。

「役員社宅?うちの会社、そんな制度ないけど…」「そもそも賃貸に住んでるわけじゃないし…」そう思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。あるいは、「役員社宅がお得って聞いたことあるけど、具体的にどうすればいいのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。

実は、この役員社宅制度、すでに持ち家がある経営者の方でも、その家を社宅として活用することで、大きな節税メリットを享受できる可能性があるんです。

この記事では、税理士である坂本先生の解説に基づき、役員社宅がなぜお得なのか、そして、すでに一軒家やマンションといった持ち家をお持ちの場合でも、その自宅を役員社宅として活用し、実質的な手取りを増やすための具体的な方法を、分かりやすく丁寧にお伝えしていきます。

「え、持ち家を社宅に?どういうこと?」と思われた方、きっとこの記事を最後まで読めば、その疑問が解消されるはずです。節税に興味のある経営者の方はもちろん、現在持ち家に住んでいて「何か節税できないかな?」とお考えの方も、ぜひ最後までお付き合いください。あなたの手取りを増やすヒントが、きっと見つかるはずです。

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役員社宅活用の最大のメリットとは?なぜお得なの?

まず、役員社宅制度を活用することの最大のメリット、それはズバリ「税金と社会保険料の負担を減らし、結果として役員個人の手取りを増やすことができる」という点にあります。

「でも、結局家賃は会社か自分が払うんだから、どこが得なの?」と思われるかもしれませんね。そのカラクリを詳しく見ていきましょう。

家賃負担を減らし、手取りを実質的に増やすカラクリ

通常、皆さんが個人で住んでいる家の家賃や住宅ローンは、個人の財布から支払われますよね。これは会社の経費にはなりません。当たり前のように感じるかもしれませんが、ここに節税のヒントがあるんです。

役員社宅制度を適切に利用すると、役員が住む家の家賃の一部、または全部を会社が負担することができます。会社が負担した家賃は、会社の「福利厚生費」や「地代家賃」といった勘定科目で経費として計上できます。つまり、会社の利益からその費用を差し引くことができるため、会社の法人税を減らす効果があるのです。

もちろん、役員は会社から家を借りる形になるので、会社に対して「賃料」を支払う必要があります。しかし、この会社に支払う賃料は、税務上定められた方法で計算された「賃料相当額」であれば良いことになっています。この「賃料相当額」が、実際に借りている物件の相場家賃よりも大幅に安くなるケースが多いのです。

例えば、相場家賃が20万円の物件に住んでいるとします。個人でこの20万円を全額負担していた場合、当然ながら会社の経費には一切なりません。しかし、役員社宅制度を利用し、会社が大家さんに20万円を支払い、役員が会社に「賃料相当額」として例えば5万円を支払う仕組みにしたとします。この場合、会社は20万円を支出しますが、5万円は役員から受け取るため、差額の15万円が実質的な会社の負担となります。そして、この15万円(または20万円全額)を会社の経費とすることができるのです。

一方、役員個人は、本来20万円を負担するところ、会社に5万円を支払うだけで済みます。差額の15万円は、実質的に会社からの「住宅補助」のようなものですが、この「賃料相当額」を会社に支払っていれば、原則としてこの住宅補助部分に所得税や住民税が課税されることはありません。給与として受け取ると、税金や社会保険料が差し引かれてしまうのに対し、社宅という形で受け取ることで、税負担なく、実質的な手取りを増やすことができるのです。

つまり、役員社宅制度は、単に会社が家賃を肩代わりするだけでなく、税務上の特別な計算方法を用いることで、市場価格よりも大幅に安い金額で役員が家に住むことを可能にし、その差額部分に税金がかからないようにする、非常に強力なスキームなのです。

会社側のメリット(福利厚生以外にも)

役員社宅制度は、役員個人の手取りを増やすメリットが大きいですが、会社側にもメリットがあります。

まず、会社が支払う家賃は経費となりますので、会社の利益を圧縮し、法人税の負担を軽減することができます。これは、会社のキャッシュフローにも良い影響を与えます。

さらに、もし会社が役員に貸し出す物件を「所有」する場合、その物件に関する様々な費用を会社の経費にすることができます。これには以下のようなものがあります。

  • 減価償却費: 建物はその価値が年々減少していくと考えられており、その減少分を費用として計上できるのが減価償却費です。大きな金額になることも少なくありません。
  • 固定資産税: 不動産を所有していると毎年かかる税金ですが、これも会社の経費になります。
  • 都市計画税: 固定資産税と合わせて課税される場合が多い税金で、これも会社の経費になります。
  • 修繕費: 建物の維持管理にかかる費用(修繕やリフォームなど)も会社の経費となります。
  • 火災保険料、地震保険料: 建物にかけている保険料も会社の経費です。

これらの費用は、個人で持ち家に住んでいる場合には個人の負担となり、原則として経費にはできません(一部の控除はありますが)。しかし、会社が物件を所有することで、これらの費用を会社の経費にできるため、さらなる節税効果が期待できるのです。

役員社宅制度は、役員個人のメリットだけでなく、会社全体の税負担を減らす効果もある、まさに一石二鳥の制度と言えるでしょう。

持ち家でも役員社宅にできる!その驚きの方法とは?

さて、役員社宅制度がお得なことは分かったけれど、「うちはもう既に一軒家を建てちゃった(あるいはマンションを買っちゃった)から関係ないや…」と思われた方、いらっしゃるかもしれません。

実は、冒頭でも触れた通り、既に持ち家がある場合でも、その家を役員社宅として活用する方法があるんです。これが、今回最もお伝えしたい「驚きの方法」です。

自宅を会社に「売却」する?その仕組みを解説

その方法とは、あなたが個人で所有している自宅(土地と建物)を、あなたが経営する会社に「売却」するというものです。

「え、自分の家を会社に売るの?」とびっくりされたかもしれませんね。そうなんです。所有権を個人から会社に移転させるのです。

売却と言っても、実際にあなたが引っ越して会社がその建物を他の誰かに貸す、というわけではありません。所有権が会社に移った後も、あなたはそのままその家に住み続けます。ただし、住む形態が変わります。これまではあなたが所有者として住んでいましたが、これからは「会社が所有する物件を、役員であるあなたが会社から借りて住む」という形になるのです。

この形にすることで、前述した役員社宅制度が適用できるようになります。会社はあなたから物件を買い取ることでその不動産を会社の資産として計上できますし、あなたは会社に「賃料相当額」を支払うことで、税務上のメリットを享受できるわけです。

もちろん、これは形式的なものではなく、法務局で正式に所有権移転登記を行い、不動産の所有者をあなた個人からあなたの会社へ変更する必要があります。

売却に伴う税金(譲渡所得税)の考え方と注意点

自宅を会社に売却するということは、個人から法人へ不動産を譲渡することになります。この譲渡によって利益(譲渡所得)が出た場合には、所得税と住民税が課税されます。これが「譲渡所得税」です。

譲渡所得税は、不動産の売却価格から、その不動産を取得したときの費用(取得費)や、売却にかかった費用(譲渡費用)を差し引いて計算される「譲渡所得」に対してかかります。

譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)

ここで重要になるのが、「取得費」の考え方です。特に建物の場合、取得費は購入価格や建築費そのままではなく、所有していた期間の「減価償却費」を差し引いて計算されます。建物は年々劣化し価値が減少するという考え方に基づいているためです。

例えば、3000万円で建てた建物でも、10年経過していれば、その間の減価償却費を差し引いた金額が取得費となります。土地は原則として減価償却しないため、購入時の価格がそのまま取得費となります。

したがって、仮にあなたが5000万円で購入した不動産(土地2000万円、建物3000万円)を、10年後に4000万円で会社に売却したとしても、建物の減価償却が進んでいるため、取得費は5000万円よりも低くなっている可能性が高いです。その結果、売却価格4000万円から減価償却後の取得費を差し引くと、譲渡所得が発生し、税金がかかる、ということが起こり得ます。

また、この譲渡所得税の税率は、その不動産の所有期間によって大きく変わります。

  • 短期譲渡所得: 所有期間が売却した年の1月1日時点で5年以下の場合。税率が約39%(所得税30% + 住民税9%)。
  • 長期譲渡所得: 所有期間が売却した年の1月1日時点で5年超の場合。税率が約20%(所得税15% + 住民税5%)。

ご覧の通り、所有期間が5年を超えるかどうかで税率が半分近くも変わってきます。自宅の購入や建築からまだ5年以内である場合は、譲渡所得が出ると非常に高い税率で税金がかかってしまうため、住宅ローン控除の兼ね合いも含めて、売却のタイミングは慎重に検討する必要があります。多くの場合は、住宅ローン控除の適用期間が終わった後(多くの場合は10年間)や、所有期間が5年を超えて長期譲渡所得になるのを待ってから売却を検討するのが賢明です。

会社への売却価格についても、適正な時価で行う必要があります。時価よりも著しく低い価格で売却すると、税務上問題となる可能性があります。不動産鑑定士に依頼するなどして、客観的な時価を把握することが望ましいでしょう。

自宅を会社に売却する際は、この譲渡所得税の発生可能性と税率、そして売却価格の決定が重要なポイントとなります。事前に税理士に相談し、シミュレーションを行うことを強くお勧めします。

役員が会社に支払う「賃料相当額」の正確な計算方法

役員社宅制度を適正に利用するためには、役員が会社に支払うべき「賃料相当額」を、税務上定められた方法で正確に計算する必要があります。この賃料相当額を支払っていれば、会社が負担する家賃と賃料相当額の差額部分について、役員に給与としての課税はされません。

なぜこの計算が必要なのか? – 税務上のルール

もし、役員が会社に対して適正な賃料を支払わないで会社所有の物件に住んでいた場合、それは「家賃を無償または著しく低い金額で提供されている」とみなされ、その無償または低額であった差額部分が「役員報酬」として課税されてしまう可能性があります。これでは、せっかくの節税効果がなくなってしまいます。

そのため、税務上、役員から受け取るべき「賃料相当額」の計算方法が明確に定められています。この定められた計算方法によって算出された金額以上の賃料を役員が会社に支払っていれば、税務上の問題は生じません。

賃料相当額の計算方法は、社宅の床面積によって大きく2つに分けられます。

小規模な社宅(99平米以下)の場合の計算式を徹底解説

まずは、比較的小規模な社宅(床面積が99平方メートル以下)の場合の計算方法です。この「小規模な社宅」に該当するかどうかは、一戸建ての場合は延床面積、マンションなどの区分所有建物の場合は専有部分の床面積で判断します。ただし、マンションの場合は、共有スペースの床面積も按分して含める必要がある点に注意が必要です。エントランスや廊下、ごみ置き場、最近のマンションにあるジムやコミュニティスペースなども共有スペースに含まれます。総床面積に占める自室の割合で共有スペースの面積を按分し、専有部分の床面積に合算した合計面積で99平米以下かどうかを判断します。

この共有スペースの按分計算を見落としていて、実は99平米を超えてしまっていた、というケースは少なくないようです。事前にしっかりと確認することが重要です。

99平米以下の場合の賃料相当額は、以下の①から③の合計額となります。

賃料相当額 = ① + ② + ③

  • ① (その建物の固定資産税の課税標準額) × 0.2%
  • ② 12円 × (その建物の総床面積) ÷ 3.3平方メートル
  • ③ (その敷地の固定資産税の課税標準額) × 0.22%

ちょっと聞き慣れない言葉が出てきましたね。「固定資産税の課税標準額」です。これは、固定資産税を計算するために市町村(東京23区は都)が定めた不動産の評価額のようなものです。実際に不動産を取得した価格や時価とは異なります。この金額は、不動産の所在地の市町村役場(東京23区は都税事務所)で確認することができます。「固定資産税課税明細書」に記載されていることが多いですが、所有者でなくても、賃貸借契約書などを持参すれば教えてもらえる場合もあります。ただし、東京都のように所有者でないと教えてくれない自治体もあるようなので、事前に確認が必要です。

一般的に、建物の固定資産税の課税標準額は、建築費用の50%程度、土地の固定資産税の課税標準額は、時価の60%〜70%程度になることが多いようです。

では、具体的な数字を使って計算してみましょう。

(例)

建物の固定資産税の課税標準額:1,500万円

土地の固定資産税の課税標準額:1,200万円

建物の総床面積:99平方メートル

この場合の賃料相当額は…

  • ① 1,500万円 × 0.2% = 30,000円
  • ② 12円 × 99平方メートル ÷ 3.3平方メートル = 12円 × 30ツボ = 360円
  • ③ 1,200万円 × 0.22% = 26,400円

賃料相当額 = 30,000円 + 360円 + 26,400円 = 56,760円

この例の場合、役員は会社に対して毎月56,760円を支払えば、税務上の問題なくその社宅に住むことができます。もしこの物件の相場家賃が20万円だったとしたら、個人で20万円全額負担するよりも、会社に56,760円を支払う方が、圧倒的に個人の負担は軽くなりますよね。この差額が実質的な手取り増につながるわけです。

この計算式を見ると分かるように、賃料相当額は物件の固定資産税評価額に連動します。築年数が古く、固定資産税評価額が下がっている物件ほど、賃料相当額も安くなる傾向があります。

小規模以外の社宅(99平米超)の場合の計算式と注意点

次に、床面積が99平方メートルを超える社宅の場合です。この場合の計算方法は、その物件を会社が「所有しているか」、それとも会社が「他から借りて役員に貸し出しているか」によって異なります。

ケース1:会社がその物件を「所有」している場合

この場合は、以下の合計額の1/12が月額の賃料相当額となります。

月額賃料相当額 = [(その建物の固定資産税の課税標準額 × 12%) + (その敷地の固定資産税の課税標準額 × 6%)] ÷ 12

先ほどの例の固定資産税の課税標準額を使って計算してみましょう。

(例)

建物の固定資産税の課税標準額:1,500万円

敷地の固定資産税の課税標準額:1,200万円

この場合の月額賃料相当額は…

  • [(1,500万円 × 12%) + (1,200万円 × 6%)] ÷ 12
  • [180万円 + 72万円] ÷ 12
  • 252万円 ÷ 12 = 210,000円

このケースでは、月額21万円が賃料相当額となります。小規模な社宅の場合と比較すると、かなり金額が大きくなります。ただし、建物の固定資産税の課税標準額は年々下がっていきますので、築年数が古い物件であれば、この金額はもっと低くなります。

ケース2:会社がその物件を「他から借りて」役員に貸し出している場合

会社が外部のオーナーや不動産業者から物件を借り上げて、それを役員に社宅として貸し出す場合です。この場合は、以下のいずれか多い方の金額を役員が会社に支払う必要があります。

  • (イ)会社がその大家さんに支払っている家賃の50%
  • (ロ)上記「会社がその物件を所有している場合」で計算した金額

つまり、会社が外部から家賃20万円で借りている物件を役員社宅とする場合、役員が会社に支払うべき賃料は、まず「会社が大家さんに支払っている家賃の50%」、つまり10万円を計算します。次に、その物件の固定資産税の課税標準額を使って、上記ケース1の計算式で賃料相当額を計算します。例えばその計算結果が8万円だったとします。この場合は、10万円(イ)と8万円(ロ)を比較して、多い方の10万円を役員が会社に支払う必要がある、ということです。

ほとんどの場合、このケース2においては、(イ)の「会社が大家さんに支払っている家賃の50%」の方が、(ロ)の固定資産税ベースで計算した金額よりも高くなるようです。そのため、99平米を超える物件を会社が外部から借りて役員社宅とする場合は、家賃の50%を役員が負担するというケースが多いのです。

これは、賃貸で99平米超の物件に住む場合、相場家賃の半額で住めるということですから、個人で全額負担することを考えれば、非常に大きなメリットと言えるでしょう。

ただし、ここで注意が必要なのは、床面積が99平米以下であるにも関わらず、一律で家賃の50%を役員に負担させているケースがあるという点です。前述の通り、99平米以下の小規模な社宅の場合、賃料相当額は固定資産税ベースで計算され、多くの場合、家賃の2割〜3割程度になります。それなのに、計算方法を知らずに一律50%を負担させていると、本来払うべき金額よりも多くの賃料を役員が会社に支払ってしまっている、つまり損をしてしまっている可能性があるのです。ご自身の住んでいる社宅の床面積が99平米以下であれば、一度正しい計算方法で賃料相当額を計算してみることをお勧めします。

持ち家を会社に売却し、役員社宅として利用する際の手続きと流れ

では、実際に個人所有の自宅を会社に売却し、役員社宅として利用するためには、どのような手続きが必要になるのでしょうか。大まかな流れをご説明します。

不動産の売買契約と所有権移転登記

まず、個人であるあなたと、あなたの会社の間で、不動産の売買契約を締結します。これは、親子間や兄弟間での不動産売買と同じように、売主が個人、買主が会社となります。売買契約書には、物件の所在地、種類(土地・建物)、面積、売買代金、引渡し時期などを明記します。売買代金については、前述の通り適正な時価を参考に決定することが重要です。

売買契約を締結したら、次に法務局で不動産の所有権移転登記を申請します。これにより、登記簿上の所有者があなた個人からあなたの会社へと変更されます。この所有権移転登記の手続きは、専門家である司法書士に依頼するのが一般的です。司法書士は、登記申請に必要な書類の作成や、法務局への申請代理を行ってくれます。登記には登録免許税という税金がかかります。

売買代金の支払いも必要です。会社からあなたの個人口座へ、売買契約で定めた金額が支払われます。この資金の出所は会社の資金となります。

会社との賃貸借契約の締結

会社が不動産の所有者となったら、次に会社と役員であるあなたの間で、その不動産に関する賃貸借契約を締結します。これは、あなたが会社からその家を借りて住むための契約です。

賃貸借契約書には、貸主が会社、借主が役員であるあなたとなります。契約期間、賃料、敷金・礼金の有無、修繕義務の所在などを定めます。ここで定める賃料は、前述した税務上の「賃料相当額」以上の金額とします。毎月、この定めた賃料をあなたの個人口座から会社の口座へ支払うことになります。

これらの手続きを経て、法的には会社が自宅の所有者となり、あなたは会社から家を借りる役員、という形が整います。

よくある疑問と落とし穴

役員社宅制度、特に持ち家を社宅にする方法には、いくつか疑問や注意すべき点があります。

99平米以下なのに家賃の50%を払っているのは損?

これは先ほども触れましたが、非常に重要な落とし穴です。特に会社が外部から物件を借り上げているケースで、床面積が99平米以下であるにも関わらず、一律で家賃の50%を役員負担としている会社が見受けられます。

繰り返しになりますが、床面積99平米以下の小規模な社宅の場合、賃料相当額は固定資産税の課税標準額に基づき計算され、これは通常、家賃の相場よりもかなり低くなります(家賃の2割〜3割程度になることが多いです)。それなのに、家賃の50%を負担していると、本来支払うべき賃料相当額よりも多くの金額を支払っていることになり、その分、役員個人の手取りが減ってしまっています。これは非常にもったいないことです。

もし、ご自身の住んでいる社宅が99平米以下であれば、一度ご自身の物件の固定資産税の課税標準額を確認し、正しい計算方法で賃料相当額を算出し、現在の負担額と比較してみることを強くお勧めします。もし、現在の負担額が計算された賃料相当額を大きく上回るようであれば、会社との賃貸借契約を見直すことで、役員の負担を減らし、手取りを増やすことができる可能性があります。

税理士に相談し、正確な賃料相当額を計算してもらうのが最も確実でしょう。

リフォーム費用や固定資産税の負担はどうなる?

持ち家を会社に売却し、会社が所有者となった場合、その物件にかかる固定資産税や都市計画税、さらには建物の修繕やリフォームにかかる費用は、原則として「所有者」である会社が負担することになります。

そして、会社が負担したこれらの費用は、会社の経費として計上できます。これは、個人で負担していた時には経費にできなかったものが、会社の経費にできるようになる、ということです。前述の通り、これも会社の税負担を減らす効果につながります。

ただし、社宅として利用している以上、あまりにも豪華すぎるリフォームや、役員の個人的な趣味嗜好に基づくリフォーム費用などを会社の経費として計上することについては、税務調査で否認されるリスクもゼロではありません。あくまで、建物の維持管理や通常の住居として必要な範囲内の修繕・リフォーム費用を計上するのが適切です。

自宅に住宅ローンが残っている場合はどうなる?

自宅に住宅ローンが残っている状態で会社に売却する場合、通常、その住宅ローンは売却時に完済する必要があります。金融機関との契約では、所有者が変わる場合は原則として住宅ローンの一括返済が求められるからです。

ただし、会社の資金繰りに余裕がない場合や、金融機関との交渉次第では、例外的な対応が可能になるケースもゼロではありませんが、一般的には住宅ローンを完済できるだけの資金を会社が用意できるか、あるいは個人が別途資金を調達できるかが、この方法を実行できるかの大きなハードルとなります。

住宅ローンが残っている場合は、事前に金融機関に相談し、対応を確認することが不可欠です。

この方法は全ての経営者に有効?

この「持ち家を会社に売却して社宅にする」という方法は、一定の節税効果が期待できますが、全ての経営者や会社にとって最適な方法とは限りません。

例えば、会社の資金繰りが厳しい場合、自宅を高額で買い取ることが難しいかもしれません。また、譲渡所得税が高額になる場合は、売却によって手元に残る金額が少なくなる、あるいは税金負担が重くなる可能性もあります。

さらに、不動産の所有者が個人から法人に変わることで、将来的にその不動産を売却したいと考えた際に、個人の場合とは異なる税金(法人税等)がかかることになるなど、出口戦略にも影響が出てきます。

この方法を実行する際は、単に目先の節税効果だけでなく、会社の財務状況、役員個人の資産状況、将来的な計画などを総合的に考慮し、慎重に判断する必要があります。専門家である税理士に相談し、ご自身の状況に合わせたシミュレーションやアドバイスを受けることを強くお勧めします。

まとめ:役員社宅を活用して、賢く手取りを増やそう!

この記事では、税理士の解説を基に、役員社宅制度を活用した節税方法、特に既に持ち家がある場合でもその自宅を社宅にすることで手取りを増やす具体的な方法について詳しく解説してきました。

役員社宅制度の最大のメリットは、会社が家賃を負担することで、会社の経費を増やし法人税を減らすとともに、役員個人は税務上の「賃料相当額」という市場家賃よりも低い金額で住むことができ、その差額部分に税金がかからない点にあります。これにより、実質的な手取りを増やすことができるのです。

そして、「もう持ち家があるから無理だ…」と諦める必要はありません。個人が所有する自宅を会社に売却し、会社が所有者となった上で、役員が会社からその家を借りるという形にすることで、既に住んでいる家を役員社宅とすることが可能です。この方法により、自宅にかかる様々な費用(固定資産税、修繕費など)を会社の経費にすることもできるようになります。

ただし、自宅を会社に売却する際には譲渡所得税がかかる可能性があること、その税率は所有期間によって大きく変わること、そして役員が会社に支払うべき「賃料相当額」は税務上の計算式で正確に算出する必要があることなど、いくつかの注意点も存在します。特に、床面積が99平米以下であるにも関わらず、家賃の50%を負担している場合は損をしている可能性があるため、ご自身の状況をご確認いただくことが大切です。

役員社宅制度は、経営者にとって非常に魅力的な節税策ですが、その内容は複雑であり、個々の状況によって最適な方法は異なります。また、手続きにも専門的な知識が必要です。

この記事が、役員社宅を活用した節税にご興味を持たれた経営者の皆さんの一助となれば幸いです。そして、実際にこの方法を検討される際は、必ず税務の専門家である税理士に相談し、ご自身の状況に合わせた正確なアドバイスとサポートを受けるようにしてください。専門家の力を借りることで、安心してこの制度を最大限に活用し、賢く手取りを増やしていくことができるでしょう。


免責事項

本記事の内容は、一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談や法的アドバイスを提供するものではありません。税法や関連法規は改正される可能性があります。また、個々の状況によって適用される税法や取扱いが異なります。本記事の内容に基づいて行動される際は、必ずご自身の状況に精通した税理士や弁護士等の専門家にご相談ください。本情報の利用により生じたいかなる損害についても、当社は一切の責任を負いかねます。情報の正確性には万全を期しておりますが、その完全性、網羅性、正確性等につきましても、いかなる保証もするものではありません。

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