「副業を始めたはいいけど、確定申告って必要なの?」「20万円を超えたらどうなるの?」「会社にバレたくない…」
近年、働き方の多様化により副業が身近になりましたよね。私自身も、本業の傍らで始めた小さな副業が、いつの間にか税金の壁に直面し、頭を悩ませた経験があります。「これって、どうすればいいんだろう?」そんな不安な気持ち、痛いほどよくわかります。しかし、それに伴い税金や確定申告に関する不安を抱えるサラリーマンも少なくありません。
この徹底ガイドでは、副業所得が「20万円の壁」を超えるサラリーマンが知るべき確定申告の基本から、具体的な手続き、賢い節税術、そして「会社にバレない」ための実践的対策までを網羅的に解説します。副業に関する確定申告の不安を解消し、安心して副業ライフを楽しむための、より基本的な情報は、こちらの副業サラリーマンのための超入門ガイドもご参照ください。2024年(令和6年分)以降の最新情報にも対応し、あなたの疑問を一つ残らず解決します。さあ、一緒に税金の不安を解消し、安心して副業ライフを楽しみましょう!
- 第1章:副業所得20万円の壁とは?サラリーマンのための基本ルール
- 第2章:あなたは確定申告が必要?具体的なケースで判断!
- 第3章:副業の確定申告、これで完璧!準備と具体的な手順
- 第4章:副業で得た所得にかかる税金計算と節税のポイント
- 第5章:副業が本業の会社にバレないための対策とリスク管理
- 第6章:2024年(令和6年分)以降の確定申告の変更点と注意点
- まとめ:副業と確定申告を味方につけて賢く稼ぐ!
- よくある質問(FAQ)
第1章:副業所得20万円の壁とは?サラリーマンのための基本ルール
1-1. 「20万円の壁」の定義と対象者
給与所得者(サラリーマン)に特化した解説
まず、私たちがサラリーマンとして知っておきたい「20万円の壁」とは、一体何なのでしょうか。これは、税法上の特定ルールであり、給与所得者、つまり私たちサラリーマンが本業以外の所得を得た場合に適用される基準です。簡単に言えば、本業の給与以外の所得が年間20万円を超えると、原則として所得税の確定申告が必要になる、というラインを指します。
「たった20万円か…」と思うかもしれませんが、これは収入ではなく「所得」である点に注意が必要です。所得とは、収入から必要経費を差し引いた金額のこと。例えば、副業の売上が30万円でも、経費が15万円かかっていれば、所得は15万円となり、20万円の壁は超えません。このあたりが少しややこしいですよね。
どのような所得が「副業所得」としてカウントされるのか
副業所得と一口に言っても、その種類は多岐にわたります。具体的には、以下のような所得が「副業所得」として20万円の壁の対象となります。
これらの所得を種類ごとに合計し、それぞれから経費を差し引いた「所得」が、20万円の壁に関わってくるのです。
1-2. なぜ「20万円」が境目なのか?税法上の根拠を理解する
所得税法と住民税の申告基準の違い
「なぜ、他の数字ではなく20万円なの?」という疑問、当然ですよね。この20万円という数字は、所得税法第121条によって定められています。正確には、「給与所得者で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円以下である場合には、確定申告書を提出することを要しない」と規定されています。これは、サラリーマンの納税手続きの簡素化を目的とした特例なんです。
しかし、ここに落とし穴があります。この「20万円の壁」はあくまで「所得税の確定申告」に関するルールであり、住民税には適用されません。住民税は、所得の金額に関わらず、所得が発生すれば申告の義務が生じます。つまり、副業所得が1円でもあれば、本来は住民税の申告が必要になるのです。この住民税の申告の有無が、「会社に副業がバレるか否か」の重要なポイントになってくるので、心に留めておいてくださいね。
所得税の確定申告が不要となる条件
改めて、サラリーマンが所得税の確定申告が不要となる主な条件を確認しておきましょう。
1. 給与の年間収入金額が2,000万円以下であること。
2. 給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全額について源泉徴収されていること。
3. 給与所得及び退職所得以外の所得の金額(=副業所得)の合計額が20万円以下であること。
私たちエンジョイ経理編集部は、特に3番の副業所得に焦点を当てていますが、もしあなたの給与収入が2,000万円を超える場合や、複数の会社から給与を受けている場合は、副業所得が20万円以下でも確定申告が必要になることがあるのでご注意ください。
1-3. 副業所得の種類による「20万円の壁」の適用
副業といっても、その内容は実に様々です。それぞれの所得の種類によって、「20万円の壁」の適用や計算方法に少しずつ違いがあります。
雑所得:最も一般的な副業所得(例:ブログ、FX、クラウドソーシングなど)
ブログのアフィリエイト収入、YouTube、プログラミング、Webライティング、デリバリー業務、フリマアプリでの不用品販売益(営利目的の転売は除く)、FXや仮想通貨による利益(総合課税の場合)などは、基本的に「雑所得」に分類されます。
多くのサラリーマン副業家にとって、この雑所得が最も馴染み深いでしょう。雑所得は、収入から必要経費を差し引いた金額が所得となります。この所得が年間20万円を超えた場合に、所得税の確定申告が必要となるわけです。
事業所得:個人事業主として認められるための条件
もしあなたの副業が、継続的・反復的に行われ、社会通念上事業と認められる規模であれば、「事業所得」として申告することができます。例えば、独立してWebデザイナーとして請負業務を継続的に行っている場合や、ブログ収入が主な生計手段となるほど大きくなった場合などです。
事業所得として認められるためには、事業の継続性や独立性、赤字でも事業として継続する意思があるか、規模の大きさ(収入額や事業に投じる時間、従業員の有無など)といった要素が総合的に判断されます。事業所得として認められれば、青色申告による最大65万円の控除や、損失を翌年以降に繰り越せる「繰越控除」といった大きな税制優遇が受けられます。雑所得と事業所得の区分は、税務署との判断が分かれることもあり、曖昧な場合は税務署や税理士に相談することをお勧めします。
不動産所得:アパート経営などからの収入
アパートやマンション、駐車場などを貸し付けている場合の家賃収入は「不動産所得」です。これは、家賃収入から修繕費や管理費、減価償却費などの必要経費を差し引いて計算しますが、大きな特徴として「減価償却費」という、現金支出を伴わない経費を計上できる点があります。これにより、帳簿上は赤字になるものの、実際には手元に現金が残るというケースも珍しくありません。
不動産所得の損失は、原則として他の所得と「損益通算」が可能です。ただし、土地の取得費用にかかる借入金利子など、損益通算できない費用もあるため、注意が必要です。
その他の所得(一時所得、譲渡所得など)と「20万円の壁」
このように、一口に副業所得と言っても、その種類によって計算方法や課税のルールが異なるため、ご自身の副業がどの所得に該当するのかを正確に把握することが大切です。
第2章:あなたは確定申告が必要?具体的なケースで判断!
この章では、あなたが具体的に確定申告をすべきかどうかを、具体的なケースに沿って判断できるよう解説していきます。
2-1. 副業所得が20万円を超えた場合:原則としての確定申告
所得税の確定申告が必要になる具体的なケース
あなたの副業が順調で、年間所得が20万円を超えた場合、原則として所得税の確定申告が必要です。例えば、以下のようなケースです。
副業所得が20万円を超えても確定申告を怠ると、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課される可能性があります。税務署はさまざまな情報源から個人の所得を把握していますので、「バレないだろう」という安易な考えは禁物です。
住民税の申告は別途必要か?(後述の「会社バレ対策」にも繋がる重要ポイント)
先ほども触れましたが、住民税には「20万円の壁」という概念はありません。副業所得が1円でも発生すれば、住民税の課税対象となります。
2-2. 副業所得が20万円以下でも確定申告すべきケース
「20万円以下だから確定申告は不要」と一概に言えないのが税金の奥深さです。実は、20万円以下でも確定申告をすることでメリットがあるケースも存在します。
源泉徴収されている場合:還付申告で税金を取り戻す
副業の種類によっては、報酬からあらかじめ所得税が源泉徴収されていることがあります。例えば、Webライターの報酬や講演料などがこれに該当します。この源泉徴収された税金は、副業の所得が20万円以下で確定申告が不要な場合でも、税金を払いすぎている可能性があります。
このような場合、「還付申告」を行うことで、納めすぎた税金を取り戻すことができます。還付申告は、通常の確定申告期間外でも行うことができ、過去5年分まで遡って申告が可能です。「もしかしたら、払いすぎているかも?」と思ったら、ぜひ還付申告を検討してみてください。
損失が生じた場合:繰越控除の活用
副業が事業所得として認められる場合、残念ながら赤字になってしまうこともあるかもしれません。この場合、確定申告をすることで「損失申告」ができます。事業所得の損失は、本業の給与所得と相殺できる「損益通算」が可能です。それでも損失が残る場合は、翌年以降3年間繰り越して、将来の利益と相殺できる「繰越控除」が適用されます。
これにより、将来の税負担を軽減できる可能性があります。雑所得の場合は原則として損益通算や繰越控除ができませんが、事業所得に該当する可能性のある副業をしている方は、赤字でも申告を検討する価値は大いにあります。
その他の控除を適用したい場合
住宅ローン控除を初めて適用する場合や、医療費控除、寄付金控除など、年末調整ではできない所得控除や税額控除を適用したい場合も、確定申告が必要です。副業の有無に関わらず、これらの控除を適用することで税金が還付される可能性があります。
2-3. 複数副業をしている場合の所得計算方法
複数の副業を掛け持ちしているサラリーマンの方もいらっしゃるでしょう。その場合の所得計算方法も確認しておきましょう。
各副業の所得を合算する
「20万円の壁」を判断する際、複数の副業をしている場合は、それぞれの副業から得た所得を全て合算して判断します。
例えば、
この場合、それぞれの所得は20万円以下ですが、合計すると23万円になります。この23万円が20万円を超えているため、確定申告が必要となります。
所得種類の異なる副業の合計額
雑所得、事業所得、不動産所得など、所得の種類が異なる副業をしている場合でも、これら「給与所得以外の所得」は原則として全て合算して20万円の壁を判断します。ただし、FXや株式投資など、申告分離課税の対象となる所得は合算対象外です。
2-4. 特定の副業ケースにおける確定申告の注意点
特殊な副業をしている場合、さらに注意が必要です。
仮想通貨・NFT:変動が大きい資産の損益計算
仮想通貨(暗号資産)やNFT取引による利益は、原則として雑所得に分類されます。その特性上、価格変動が非常に大きく、損益計算が複雑になりがちです。売却益だけでなく、他の仮想通貨との交換、商品やサービスとの交換、マイニングによる取得なども課税対象となる可能性があります。
特に注意したいのは、取引のたびに利益が確定し、課税対象になる点です。損益計算ツールなどを活用し、正確な取引履歴を記録しておくことが非常に重要です。
FX・先物取引:申告分離課税の理解
FX(外国為替証拠金取引)や先物取引による利益は、他の所得とは分けて税金を計算する「申告分離課税」の対象です。税率は一律20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)と定められています。
申告分離課税の所得は、給与所得や雑所得とは合算しないため、20万円の壁とは直接関係ありません。利益が出れば金額の大小に関わらず確定申告が必要です。また、損失が出た場合、その損失を翌年以降3年間繰り越して、将来のFXなどの利益と相殺できる「繰越控除」が適用されますので、赤字でも申告するメリットがあります。
不動産投資:減価償却費と損益通算
不動産投資による所得は「不動産所得」です。家賃収入から経費を差し引いて計算しますが、大きな特徴として「減価償却費」という、現金支出を伴わない経費を計上できる点があります。これにより、帳簿上は赤字になるものの、実際には手元に現金が残るというケースも珍しくありません。
不動産所得の損失は、原則として他の所得と「損益通算」が可能です。ただし、土地の取得費用にかかる借入金利子など、損益通算できない費用もあるため、注意が必要です。
第3章:副業の確定申告、これで完璧!準備と具体的な手順
確定申告と聞くと、書類の山を想像して「大変そう…」と感じるかもしれませんね。でも、ご安心ください。一つずつステップを踏めば、誰でも確実に手続きを終えることができます。ここでは、確定申告を完璧に進めるための準備と具体的な手順を解説します。
3-1. 確定申告に必要な書類をリストアップ
まずは、必要な書類を漏れなく揃えることが第一歩です。事前にリストアップして、余裕を持って準備を始めましょう。
本業関連:源泉徴収票(必須)
会社員にとって最も重要な書類の一つです。年末調整後に勤務先から発行されます。確定申告書を作成する際、本業の給与所得の金額を正確に記載するために必須となります。紛失した場合は、勤務先に再発行を依頼しましょう。
副業関連:収支内訳書(または青色申告決算書)、帳簿、領収書など
副業の所得を計算するための根拠となる書類です。
控除関連:生命保険料控除証明書、医療費の領収書、iDeCoの書類など
所得税の負担を軽減できる各種控除を適用したい場合は、その証明書類も必要です。
マイナンバーカードまたは通知カード
確定申告書にはマイナンバーの記載が必要です。e-Taxで申告する場合は、マイナンバーカードと対応するICカードリーダーが必要になります。
3-2. 確定申告書の作成方法を徹底解説
書類が揃ったら、いよいよ確定申告書の作成です。現在は様々な方法があり、ご自身のやりやすい方法を選べます。
e-Taxを利用したオンライン申告:メリットと手順
最もおすすめしたいのが、国税庁のe-Taxを利用したオンライン申告です。
* 自宅やオフィスから24時間いつでも申告できる。
* 添付書類の一部提出が省略できる(源泉徴収票など)。
* 還付金がスピーディーに振り込まれる。
* 青色申告特別控除が最大65万円になる(要件あり)。
1. マイナンバーカードの準備:事前に市区町村でマイナンバーカードを発行し、利用者証明用パスワードと署名用パスワードを設定しておきます。
2. ICカードリーダーの準備:パソコンからe-Taxを利用する場合は、ICカードリーダーが必要です。
3. 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」へアクセス:後述します。
4. 必要事項の入力:画面の案内に従って、源泉徴収票や副業の収支データを入力します。
5. 電子署名と送信:入力が終わったら、マイナンバーカードを使って電子署名を行い、データを送信します。
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」活用術
e-Taxでの申告を強力にサポートしてくれるのが、国税庁のウェブサイトにある「確定申告書等作成コーナー」です。
* 誘導形式で簡単:質問に答える形式で、誰でも簡単に確定申告書を作成できます。
* 自動計算機能:入力したデータに基づいて、税額が自動で計算されます。
* そのままe-Taxで送信可能:作成したデータを、そのままe-Taxで送信できます。
* 印刷して郵送も可能:オンラインでの送信が難しい場合でも、作成した申告書を印刷して郵送することも可能です。
まずはここから試してみるのが、確定申告への近道です。
税務ソフト(freee会計、マネーフォワードクラウド確定申告など)の活用
副業の規模が大きくなってきた方や、より効率的に帳簿付けから申告まで行いたい方には、税務ソフトの活用がおすすめです。
* 自動連携:銀行口座やクレジットカードと連携し、取引データを自動で取り込めます。
* 仕訳の自動提案:勘定科目を自動で提案してくれるため、簿記の知識がなくても帳簿付けがしやすいです。
* 決算書・申告書の自動作成:日々の記帳データを元に、収支内訳書や青色申告決算書、確定申告書まで自動で作成してくれます。
* e-Tax連携:作成した申告書をそのままe-Taxで送信できる機能も備わっています。
これらのソフトは、特に青色申告を検討している方にとって、非常に強力な味方となるでしょう。
3-3. 青色申告と白色申告の選択
副業所得を申告する際、「青色申告」と「白色申告」のどちらを選ぶかは非常に重要なポイントです。青色申告と白色申告の比較や節税メリットについて、さらに詳しく知りたい方は、個人事業主の確定申告ガイドもご活用ください。
サラリーマン副業における青色申告のメリット(最大65万円控除、損失繰越など)
青色申告は、白色申告に比べて手間はかかりますが、その分、非常に大きな税制優遇が受けられます。
青色申告承認申請書の提出と要件
青色申告を選択するには、事前に税務署へ「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
* 事業所得、不動産所得、山林所得のいずれかであること(雑所得は対象外)。
* 複式簿記による記帳を行うこと(65万円控除の場合)。
* 上記申請書を提出すること。
白色申告のメリットとデメリット
白色申告は、青色申告に比べて手続きがシンプルで、事前の申請も不要です。
* 事前の申請が不要。
* 記帳が簡易で済む(簡易帳簿)。
* 青色申告特別控除がない。
* 損失の繰越控除ができない。
副業を始めたばかりで、「まずは手軽に」という方には白色申告も選択肢になりますが、節税効果を考えるなら、早い段階での青色申告への移行を検討する価値は十分にあります。
3-4. 申告期間と提出方法
確定申告には、原則として期限が設けられています。期限を守って、スムーズに申告を済ませましょう。
毎年2月16日から3月15日までの原則
所得税の確定申告期間は、毎年原則として2月16日から3月15日までです。この期間内に、前年1月1日から12月31日までの所得について申告・納税を行います。期限最終日が土日祝日の場合は、翌平日が期限となります。
還付申告はいつでも可能
もし、税金を払いすぎていることによる「還付申告」の場合は、この期間に縛られず、対象となる年の翌年1月1日から5年間、いつでも申告が可能です。例えば、2024年分の還付申告は、2025年1月1日から2029年12月31日まで行うことができます。
郵送、e-Tax、税務署持参の選択肢
確定申告書の提出方法も、いくつか選択肢があります。
第4章:副業で得た所得にかかる税金計算と節税のポイント
「せっかく副業で稼いだのに、税金でごっそり持っていかれるのは嫌だな…」そう思うのは当然です。この章では、副業所得にかかる税金の計算方法を分かりやすく解説し、さらに賢く節税するためのポイントをお伝えします。
4-1. 所得税・住民税の計算方法をわかりやすく解説
まずは、あなたの副業所得がどのように税金になるのか、その仕組みを理解しましょう。
課税所得の算出ステップ
税金は、全ての収入にかかるわけではありません。「課税所得」というものに対してかかります。
1. 収入金額の合計:本業の給与収入と副業収入(売上)を合算します。
2. 所得金額の算出:それぞれの収入から必要経費を差し引いたものが「所得金額」です。
* 給与所得 = 給与収入 – 給与所得控除(会社員に認められる概算経費)
* 副業所得(雑所得・事業所得) = 副業収入 – 副業にかかった必要経費
3. 所得控除の適用:所得金額の合計から、様々な「所得控除」を差し引きます。
* 基礎控除、社会保険料控除、生命保険料控除、iDeCo掛金控除、医療費控除など、個人的な事情に応じた控除です。
4. 課税所得の算出:所得金額の合計 – 所得控除の合計 = 課税所得
この「課税所得」が、所得税と住民税の計算の基礎となります。
所得税の速算表と税率
所得税は、「累進課税制度」が採用されており、課税所得が多くなるほど税率も高くなります。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
| :—————– | :— | :—– |
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円超 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 330万円超 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 695万円超 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
| 900万円超 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円超 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
例えば、課税所得が300万円の場合、
所得税額 = 300万円 × 10% – 97,500円 = 202,500円 となります。
この所得税額に、別途「復興特別所得税」(所得税額の2.1%)が加算されます。
住民税の計算方法と税率
住民税は、「所得割」と「均等割」の二つで構成されます。
住民税の計算は、確定申告書を提出すれば、税務署から市町村にデータが連携され、市町村が計算して通知してくれますので、別途計算する必要はありません。
具体的な計算シミュレーション(例:副業所得30万円の場合)
1. 合計所得金額:276万円(給与) + 25万円(副業) = 301万円
2. 所得控除合計:50万円(社会保険料) + 48万円(基礎控除) = 98万円
3. 課税所得:301万円 – 98万円 = 203万円
4. 所得税額(復興特別所得税含まず):
203万円 × 10% – 97,500円 = 105,500円
この所得税に復興特別所得税が加算され、さらに住民税(所得割・均等割)が課されます。
このように、副業所得が加わることで、あなたの所得税率が一段階上がる可能性も出てきます。だからこそ、賢い節税が重要になるのです。
4-2. 適用できる控除の種類と賢い活用術
税金の負担を減らすには、利用できる控除を最大限に活用することが重要です。
社会保険料控除:iDeCoや国民年金保険料
ご自身の社会保険料だけでなく、iDeCo(個人型確定拠出年金)や、国民年金保険料を支払っている場合、その全額が所得控除の対象となります。
小規模企業共済等掛金控除:将来への備えと節税
個人事業主やフリーランスが利用できる制度ですが、副業が事業所得と認められる場合、この控除も利用できます。
医療費控除、寄付金控除など
副業の有無に関わらず、利用できる一般的な所得控除も確認しておきましょう。
所得控除と税額控除の違い
ここで、基本的な違いを理解しておきましょう。
4-3. 経費計上の基本と具体的な例
「副業の経費ってどこまで認められるの?」これは、多くの人が抱く疑問でしょう。経費を適切に計上することは、節税の基本中の基本です。
「副業に必要な費用」とは?判断基準
経費として認められるのは、「副業を行う上で直接必要だった費用」です。売上を得るためにかかった費用、または売上と関連性がある費用が対象となります。
* 事業性:本当に副業のために使ったのかどうか。
* 客観性:領収書など、第三者が見て納得できる証拠があるか。
* 家事関連費との区分:プライベートな支出と明確に分ける。
迷ったら、「この支出がなければ、副業で売上を出すことはできなかったか?」と考えてみてください。
家事按分の考え方と割合の目安(自宅の一部を仕事場にする場合など)
自宅で副業をしている場合、家賃や光熱費、通信費など、プライベートと副業で共用している費用がありますよね。これらの費用は「家事按分(かじあんぶん)」という方法で、副業に使用した割合分だけ経費として計上できます。
按分する割合に明確な決まりはありませんが、合理的な根拠に基づいて設定することが重要です。税務調査が入った際に説明できるよう、割合の根拠を説明できるようにしておきましょう。
具体的な経費の例:消耗品費、通信費、交通費、書籍代、セミナー費用など
以下に、副業でよく認められる経費の具体例を挙げます。
領収書・レシートの保存と管理の重要性
経費を計上するためには、その証拠となる領収書やレシートが不可欠です。
4-4. 青色申告特別控除を最大限活用する
第3章でも触れましたが、青色申告特別控除は、サラリーマン副業家にとって最も強力な節税手段の一つです。
最大65万円控除の要件と準備
1. 副業が「事業所得」として認められること。
2. 「所得税の青色申告承認申請書」を期限内に提出していること。
3. 複式簿記によって記帳していること。
4. e-Taxによる電子申告、または電子帳簿保存を行っていること。
* 税務ソフト(freee会計、マネーフォワードクラウド確定申告など)の導入を検討しましょう。複式簿記の知識がなくても、ガイドに従って入力すれば自動で帳簿が作成できます。
* e-Taxを利用するためのマイナンバーカードとICカードリーダーの準備。
簡易帳簿でも10万円控除は可能
「複式簿記はハードルが高い…」と感じる方もいるかもしれません。しかし、ご安心ください。青色申告では、簡易な方法で帳簿を付けていれば、10万円の青色申告特別控除を受けることができます。
まずは10万円控除から始めてみて、慣れてきたら65万円控除を目指すのも良いでしょう。少しの努力で税負担を大きく軽減できる、非常に魅力的な制度です。
第5章:副業が本業の会社にバレないための対策とリスク管理
副業をしているサラリーマンにとって、最も気になることの一つが「会社にバレないか」という点ではないでしょうか。より具体的な会社バレ対策については、こちらの会社にバレずに副業を続ける裏ワザもご覧ください。ここでは、その不安を解消するための具体的な対策と、万が一の際のリスク管理について解説します。
5-1. 住民税の「普通徴収」を選択する
会社バレ対策において、最も重要なのが「住民税の徴収方法」です。
なぜ住民税で会社にバレるのか?そのメカニズム
通常、会社員の住民税は、会社が給与から天引きして納める「特別徴収」という方法で納付されます。もしあなたが副業をして、その所得に対する住民税額が増加した場合、会社の経理担当者が受け取る住民税の通知書には、あなたの本業の給与額と比べて不自然に高い住民税額が記載されることになります。
「あれ?この社員、給料の割に住民税が高いな。何か別の収入があるのか?」
この疑問から、会社に副業がバレてしまう可能性が非常に高いのです。これが、住民税から副業がバレるメカニズムです。
確定申告書での「普通徴収」選択方法
この会社バレを防ぐために、副業所得にかかる住民税を、会社からの天引きではなく、自分で納付する「普通徴収」に切り替える必要があります。
確定申告書には、「住民税に関する事項」という欄があり、その中に「給与・公的年金等に係る所得以外の所得に係る住民税の徴収方法」という項目があります。ここで「自分で納付(普通徴収)」にチェックを入れることで、副業分の住民税だけが自宅に納付書として送られてくるようになります。これにより、会社に送られる住民税の通知書には、本業の給与に対する住民税額のみが記載されるため、副業がバレるリスクを大幅に減らすことができます。
普通徴収でもバレるリスクはゼロではない?(注意点)
「これで完璧!」と思いがちですが、残念ながら普通徴収を選択しても、会社バレのリスクがゼロになるわけではありません。
普通徴収は最も強力な対策ですが、それだけに頼らず、自己管理も徹底することが大切です。
5-2. 副業規程の確認と会社への配慮
副業を始める前に、必ず確認すべきことがあります。それは、会社の就業規則です。
就業規則を確認する重要性
多くの会社では、就業規則に副業に関する規定を設けています。「副業禁止」「許可制」「届出制」など、その内容は様々です。
自身の会社のルールを把握せず副業を始めてしまうと、最悪の場合、職を失うことにもなりかねません。まずは、人事部や総務部に確認するなどして、就業規則を必ず確認しましょう。
副業が許可されている場合の注意点
もし会社が副業を許可している場合でも、いくつか注意点があります。
会社にバレた際のリスク(懲戒処分、評価への影響など)
万が一、会社に副業がバレてしまった場合、以下のようなリスクが考えられます。
このようなリスクを避けるためにも、事前に就業規則を確認し、適切な対策を講じることが重要です。
5-3. マイナンバー制度による影響の誤解
「マイナンバー制度が始まったから、副業が会社にバレるようになったのでは?」このような誤解を耳にすることがありますが、その真相はどうなのでしょうか。
マイナンバーで副業がバレるという都市伝説の真相
結論から言うと、マイナンバーによって会社に副業が直接バレることはありません。
マイナンバー制度は、行政機関が保有する情報を効率的に連携させるためのものです。私たち個人が提出したマイナンバーは、税務署や市区町村などの行政機関が、税金や社会保障に関する情報を管理・連携するために利用されます。
会社は、従業員の給与支払報告書や年末調整のためにマイナンバーを収集しますが、それらの情報を使って、従業員の副業の有無を勝手に確認することはできません。会社が従業員のマイナンバーを利用して、他の行政機関に保管されている個人情報(副業所得など)を照会する権限はないのです。
会社が副業情報を直接確認できるわけではない
マイナンバー制度は、情報の「突合(つきあわせ)」には活用されますが、会社が従業員の副業情報を直接確認できるような仕組みにはなっていません。あくまで、税務署などが税の徴収漏れがないかをチェックするために活用されるものです。
したがって、「マイナンバーがあるから副業はバレる」という都市伝説に過度に恐れる必要はありません。ただし、確定申告を怠り税務調査が入るようなことになれば、結果的に副業が発覚する可能性はあります。
5-4. 確定申告をしない場合のペナルティ
「少額だから大丈夫だろう」「どうせバレないだろう」と確定申告をせずにいると、後々大きなペナルティが課される可能性があります。
無申告加算税、延滞税、重加算税
確定申告を怠った場合、以下のようなペナルティが課されます。
これらのペナルティは本税に上乗せされるため、本来払うべき税金よりも大幅に多くの金額を支払うことになります。
税務調査のリスクと対応
確定申告を怠ったり、不適切な申告をしたりしていると、税務署から「税務調査」が入る可能性があります。税務調査は、個人の預金口座の動き、取引先からの支払調書、SNSでの活動など、様々な情報源を基に行われます。
もし税務調査が入った場合、適切な申告をしていなければ、上記のペナルティが課されるだけでなく、過去に遡って修正申告を求められることもあります。税務調査は精神的な負担も大きいため、そうならないためにも、日頃から正しい申告を心がけましょう。
社会的信用の失墜
税金を滞納したり、脱税が発覚したりすると、金銭的なペナルティだけでなく、社会的な信用を失うことにも繋がります。住宅ローンや車のローンを組む際に不利になったり、クレジットカードの審査に影響が出たりする可能性も否定できません。
エンジョイ経理編集長としてお伝えしたいのは、税金は義務であり、適切に申告することで安心して副業を継続できるということです。不必要なリスクを負うのではなく、正しい知識を身につけ、誠実に対応することが、豊かな副業ライフを送るための秘訣です。
第6章:2024年(令和6年分)以降の確定申告の変更点と注意点
税制は毎年見直され、確定申告のルールも時代に合わせて変化していきます。2024年(令和6年分)以降の確定申告で特に押さえておきたい変更点と注意点について解説します。
6-1. 電子帳簿保存法の改正と副業への影響
電子帳簿保存法は、会計帳簿や領収書などを電子データで保存することを認める法律です。2022年1月1日に改正され、特に副業をしている私たちにも大きな影響があります。
電子取引データの保存義務化
改正電子帳簿保存法では、電子的に授受した取引データ(例えば、メールで受け取った領収書や請求書、ECサイトからの購入履歴など)について、紙に出力して保存することが原則として認められなくなりました。これらのデータは、電子データのまま保存することが義務付けられています。
* メールで受け取った請求書・領収書
* クラウドソーシングサイトの取引明細
* ECサイトの購入履歴(Web明細など)
* 電子マネー決済の履歴
副業での取引で、これらの電子データを受け取っている方は、保存方法に注意が必要です。真実性の確保(改ざん防止措置)と可視性の確保(検索機能の確保)という要件を満たして保存する必要があります。
スキャナ保存制度の活用
紙で受け取った領収書や請求書なども、スキャナやスマートフォンのカメラで読み取って電子データとして保存する「スキャナ保存制度」があります。この制度も改正により要件が緩和され、より利用しやすくなりました。
* 紙の書類を保管する手間やスペースが削減できる。
* 経費の管理がデジタル化され、効率化できる。
* 一定の解像度やタイムスタンプの付与など、真実性確保のための要件があります。
副業で多くの領収書が発生する方は、これを機に電子帳簿保存やスキャナ保存を導入し、効率的な経費管理を目指してみてはいかがでしょうか。
6-2. インボイス制度(適格請求書等保存方式)と副業への対応
2023年10月1日から導入されたインボイス制度は、消費税の納税義務がある事業者(課税事業者)にとって大きな影響を与える制度です。副業家も無関係ではありません。
登録事業者になるべきか?その判断基準
インボイス制度が導入されたことで、適格請求書(インボイス)を発行できるのは、消費税の課税事業者として税務署に登録した「適格請求書発行事業者」のみとなりました。
* あなたの副業の取引先が課税事業者で、消費税の仕入れ税額控除を求める場合、適格請求書の発行を求められる可能性があります。
* もし取引先が適格請求書を求め、あなたが発行できない場合、取引先は仕入れ税額控除を受けられず、消費税の負担が増えることになります。そのため、取引を打ち切られたり、報酬を減額されたりするリスクも考えられます。
このような場合、免税事業者であっても、あえて適格請求書発行事業者に登録し、課税事業者となる選択肢もあります。
免税事業者のままでいる場合の注意点
もしあなたが免税事業者のままでいることを選択した場合、取引先が課税事業者であれば、仕入れ税額控除ができない分、取引条件について交渉を求められる可能性があります。
ご自身の副業の取引状況や、取引先との関係性を考慮し、インボイス登録をするかどうかを慎重に判断することが重要です。
6-3. その他、副業に関する税制改正の動向
税制は常に変化するものです。最新の動向にも目を向けておきましょう。
雑所得と事業所得の区分に関する議論
以前から、副業における「雑所得」と「事業所得」の区分について、明確な基準を求める声が多くありました。現在は、収入規模だけでなく、記帳の状況や事業活動の継続性・反復性などを総合的に判断して区分されます。今後、より明確な基準が設けられる可能性もありますので、国税庁の発表には注目しておきましょう。
新NISAとの連携と資産形成
2024年から始まった新NISA制度は、生涯にわたる資産形成を非課税で行える強力な制度です。副業で得た収入の一部をNISAで運用することで、さらなる資産増加と節税効果を期待できます。副業で得た資金を、単なる消費に回すだけでなく、賢く投資に回すことで、将来の選択肢を広げることができるでしょう。
まとめ:副業と確定申告を味方につけて賢く稼ぐ!
「副業の確定申告、なんだか難しそう…」そんな不安を抱いていた方も、この記事を読み終えた今、きっと「これならできそうだ!」と感じていただけたのではないでしょうか。私自身も、最初は手探りでしたが、一度やり方を覚えてしまえば、毎年スムーズに手続きできるようになりました。
副業は収入アップだけでなく、スキルアップや自己成長の機会でもあります。税務の知識をしっかり身につけることで、不必要な不安を解消し、安心して副業に取り組むことができます。20万円の壁、確定申告、そして会社バレ対策。これらは一見すると複雑に見えるかもしれませんが、一つ一つのルールを理解し、適切な対策を講じれば、決して恐れるものではありません。むしろ、税金を味方につけることで、手元に残るお金を増やし、より豊かな副業ライフを送るための強力なツールとなります。
この記事で得た知識を活かし、賢く税金と向き合い、あなたの副業をさらに発展させ、豊かな未来を築きましょう!エンジョイ経理編集部は、これからもあなたの副業ライフを応援しています!
よくある質問(FAQ)
Q1: 副業が赤字の場合、確定申告は必要ですか?
副業が赤字の場合でも、確定申告を検討するメリットは大いにあります。特に、その副業が「事業所得」に該当する場合、赤字を他の所得(本業の給与所得など)と相殺できる「損益通算」が可能です。これにより、本業の給与から天引きされた税金が還付される可能性があります。さらに、それでも残った損失は、翌年以降3年間繰り越して将来の利益と相殺できる「繰越控除」も利用できます。
ただし、雑所得の損失は原則として他の所得と損益通算や繰越控除ができません。ご自身の副業がどの所得に該当するかを確認し、メリットがある場合は積極的に確定申告を行いましょう。
Q2: 確定申告を忘れてしまったらどうなりますか?
確定申告の期限(原則3月15日)を過ぎてしまった場合でも、自主的に申告する「期限後申告」が可能です。しかし、期限後申告には以下のようなペナルティが課される可能性があります。
税務署からの指摘を受けてから申告するよりも、自主的に申告する方がペナルティは軽減されますので、忘れていたことに気づいたら、できるだけ早く申告手続きを行いましょう。
Q3: フリーランスとサラリーマンの副業では確定申告に何が違いますか?
基本的な確定申告のプロセスや税金の計算方法は共通していますが、いくつかの違いがあります。
Q4: 雑所得20万円以下でも確定申告するメリットはありますか?
はい、雑所得が20万円以下で所得税の確定申告が不要な場合でも、申告することでメリットがあるケースがあります。
20万円以下だからと諦めず、メリットがあるかどうかを一度確認してみることをお勧めします。

