インボイス制度の「少額特例」
忘れていませんか?
~適用期限は2026年9月末まで!
- はじめに
- 1. インボイス制度とは?改めておさらい(2025年版)
- 2. 2025年だからこそ要注意!「少額特例」とは何か
- 3. 少額特例の対象期間と“残り期限”に関する注意点
- 4. 少額特例を受けるための要件:対象者・売上基準
- 5. 意外と見落としがちな判定基準:複数商品の購入や日割り計算
- 6. 返品・値引き時のインボイス(変換インボイス)免除措置も再確認
- 7. 2割特例・仕入税額控除の経過措置との違いを再点検
- 8. インボイス関連でまだ利用できる補助金・支援策(2025年版)
- 9. インボイス制度対応の見直しポイント:今からでも間に合う備えとは
- 10. まとめ:2026年9月末まで残りわずか!忘れていた方は今すぐ要確認
はじめに
2023年10月に始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)も、導入から早2年が経過し、現在は2025年を迎えています。制度がスタートした当初は、「請求書の記載内容をどう変えればいいのか」「登録番号って何?」「仕入税額控除が受けられなくなる?」など、大きな話題になりました。しかし時間が経つにつれ、はじめの熱量が落ちてしまい、改めて振り返ってみると“あれ、結局どこまで対応できているのだろう?”と思う方も多いのではないでしょうか。
とりわけ見落とされがちなのが、インボイス制度における「少額特例」です。インボイス制度では、通常すべての課税仕入れに対して「的確請求書(インボイス)」を保存する必要がありますが、金額の小さな取引については事務負担を軽減する特例が用意されています。しかし、この「少額特例」は2026年9月30日で期限を迎えることになっており、あと1年少ししか残されていません。
本記事では、**2025年の今だからこそ改めて思い出したい「少額特例」のポイントを詳しく解説します。あわせて、同じく見落としがちな「2割特例」や「返品・値引き時の変換インボイス免除」**などの関連制度、さらには持続化補助金やIT導入補助金などの支援策も紹介します。
「そういえばそんな制度があったかも…」と思い当たる方は、ぜひ最後まで読み進めてください。期限が迫る軽減措置をしっかり活用して、インボイス制度対応を万全にしていきましょう。
1. インボイス制度とは?改めておさらい(2025年版)
1-1. インボイス制度の導入背景
インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税の課税取引をより透明化し、公平性を高めることを目的に、2023年10月1日にスタートしました。それ以前の区分記載請求書等保存方式では不十分だった点を補完し、売り手側が13桁の登録番号を記載した的確請求書(インボイス)を発行し、買い手がそれを保存することで、仕入税額控除を確実に行えるようにしています。
1-2. 2025年現在のインボイス普及状況
制度開始から2年近く経った2025年、多くの事業者がインボイス制度に対応済みですが、一部の免税事業者などは登録を行わずにいるケースもあります。そのため取引によっては、「インボイスがない」「インボイスを交付できない」といった状況が続いているところも。
こうした中で、仕入税額控除に必要なインボイスがそろわない、または手間がかかり過ぎている等の問題が顕在化しやすいのが「金額の小さな取引」。そこで役立つのが、**今回取り上げる「少額特例」**です。
2. 2025年だからこそ要注意!「少額特例」とは何か
2-1. 少額特例の概要
「少額特例」とは、税込1万円未満の課税仕入れについては、インボイスがなくても仕入税額控除を認めるという負担軽減措置です。インボイス制度は本来すべての課税仕入れに適格請求書の保存が必要ですが、小額の取引にまで一々インボイスを受け取り・保存するのは事務負担が大きいと考えられています。そのため、1万円未満の取引は特例でインボイス不要とする仕組みが設けられました。
2-2. なぜ2025年に思い出す必要があるのか?
この少額特例には期限があり、導入時から3年間のみ有効です。具体的には、2023年10月1日~2026年9月30日が適用期間となります。すでに2025年を迎えている今、残り期限は1年強しかありません。
「導入時に話題になっていたけれど、今はもう頭にない…」という方も少なくないでしょう。期限が迫っている今こそ、改めて思い出しておかなければなりません。
3. 少額特例の対象期間と“残り期限”に関する注意点
3-1. 適用期間
- 2023年10月1日~2026年9月30日
この期間内に行われた税込1万円未満の課税仕入れには、インボイス(適格請求書)の保存がなくても仕入税額控除が認められます。
3-2. 2025年現在の残り時間
2025年時点で、インボイス制度開始から2年近くが経ちました。少額特例の終了時期である2026年9月末までは、残り1年ほど。2026年10月以降は、どんなに取引金額が少額であってもインボイスがないと仕入税額控除が受けられません。
ワンポイント:
特例が切れる直前になって慌てると、結果的にシステム改修や取引先とのやり取りが間に合わず、混乱を招きかねません。早めのうちに今後の対策を考えることが得策です。
4. 少額特例を受けるための要件:対象者・売上基準
4-1. 対象者の要件
少額特例が使えるのは、以下の条件を満たす事業者です。
- 基準期間の課税売上高が1億円以下
または - 特定期間の課税売上高が5,000万円以下
基準期間・特定期間とは?
- 個人事業主の場合
- 基準期間:前々年
- 特定期間:前年1月~6月
- 法人の場合
- 基準期間:前々事業年度
- 特定期間:事業年度開始の日から6か月間
上記のいずれかの期間で売上規模が基準を下回っていれば、少額特例を利用できます。多くの中小企業やフリーランスはこの要件を満たすと考えられますが、1億円超の売上を持つ大企業や一部中堅企業は対象外になる点に注意しましょう。
4-2. 2025年時点での確認ポイント
2025年現在であれば、2023年・2024年の売上実績を照らし合わせて、要件を満たしているかを再確認してください。事業拡大などで売上が増えて基準を超えてしまった場合、少額特例は適用できない可能性があります。
5. 意外と見落としがちな判定基準:複数商品の購入や日割り計算
5-1. 税込み1万円未満がポイント
少額特例で言う「1万円未満」は税込み価格です。ここを間違えないようにしましょう。
5-2. 複数商品をまとめて購入した場合
- 例:9,000円の商品と8,000円の商品を同時購入(合計17,000円)
→ 合算金額が1万円を超えるため、少額特例の対象外
少額特例は1取引の合計金額で判断します。商品ごとではなく、一括で決済された取引全体が1万円未満かどうかを見なければなりません。
5-3. 日割り計算は認められない
- 例:月額20万円の外注費を日割りすると1日あたり約6,666円
→ 日割りして1万円未満にする理屈はNG
取引形態が月単位であれば、それは「1件当たり20万円の支出」という認識になります。契約形態を変えずに日割りで少額特例を適用することはできません。
6. 返品・値引き時のインボイス(変換インボイス)免除措置も再確認
6-1. 変換インボイスとは?
返品・値引きが発生した際、売り手は買い手に対して**金額修正の的確請求書(変換インボイス)**を交付しなければなりません。本来は値引き・返品後の金額を的確請求書に反映する必要があるからです。
6-2. 少額の返品や値引きなら交付義務は免除
税込1万円未満の返品・値引きであれば、変換インボイスの交付義務が免除されます。
- この免除措置に売上高基準はなく、全事業者が対象
- かつ、適用期限は設けられていない恒久措置
6-3. 振込手数料の差し引きケース
代金支払い時に振込手数料を差し引いて入金されるケースでは、差し引いた手数料が“値引き”扱いになります。本来なら変換インボイスを発行すべきですが、金額が1万円未満であれば免除対象となり、わざわざ書類発行しなくても済みます。
注意: 1万円以上の値引き・返品は通常どおり変換インボイスの交付が必要です。
7. 2割特例・仕入税額控除の経過措置との違いを再点検
インボイス制度には、他にも負担軽減措置がいくつか存在します。2025年時点でも有効な代表例を整理しましょう。
- 2割特例
- 2023年10月1日~2026年9月30日
- 課税売上高1億円以下などの要件を満たす事業者なら、納付税額を「売上×消費税率」の2割に簡略化
- 仕入税額控除の計算を簡略化できる
- 少額特例(本記事のメインテーマ)
- 同じく2023年10月1日~2026年9月30日まで
- 税込1万円未満の課税仕入れはインボイス不要で仕入税額控除が可能
- 仕入税額控除は通常通り100%受けられる
- 返品・値引きの変換インボイス交付免除
- 税込1万円未満の値引き・返品なら変換インボイス不要(恒久措置)
7-1. 経過措置との違い
インボイスを保存しなくても仕入税額控除を認める段階的な経過措置(2023年10月~2026年9月は80%、その後2029年9月まで50%控除可能)もありますが、**少額特例は「1万円未満なら100%控除可」**という点で異なります。
- 少額特例:1万円未満ならインボイスなしでも100%控除
- 経過措置(インボイスなし):2023年10月~2026年9月は80%、2026年10月~2029年9月は**50%**控除
少額特例と経過措置では適用条件がまったく異なるので、混同に注意しましょう。
8. インボイス関連でまだ利用できる補助金・支援策(2025年版)
8-1. 小規模事業者持続化補助金
- インボイス対応に係る経費を計上すると、通常枠に加え最大で+50万円が上乗せされる枠があります。
- 2023年から継続中の特例措置で、2025年現在でも公募が続いている可能性大。
- 商工会・商工会議所へ問い合わせ、最新公募要領を確認しましょう。
8-2. IT導入補助金
- 会計ソフトやレジシステムなど、インボイス対応のITツール導入に使える補助金。
- 下限額の要件撤廃などで、少額のシステム投資でも補助を受けられやすくなっています。
- こちらも年度ごとに公募時期や要件が変わるので要チェックです。
9. インボイス制度対応の見直しポイント:今からでも間に合う備えとは
9-1. 仕入先や支払い方法の洗い出し
- 小口現金が多い業態(飲食店、サービス業など)は、少額特例を活用する場面が多い反面、2026年10月以降はすべての取引でインボイスを確認・保存する必要があります。
- 取引先との契約内容や支払い方法、頻度などを今一度洗い出して、特例終了後の対応を考えましょう。
9-2. インボイス発行事業者の登録状況
- もし自社が免税事業者で、「取引先からインボイスの交付を求められている」などの状況なら、登録を検討する必要があります。
- 取引先がインボイスを発行できない場合は、将来の仕入税額控除ができない可能性も。2026年10月以降の影響を見据えて早めの対応を。
9-3. 会計システムや経理フローの更新
- 少額特例をどう管理するか、期限後にどう切り替えるかなど、会計ソフトや請求書システムを今のうちにアップデートしておくと安心です。
- IT導入補助金の対象になり得るため、予算や補助対象を調査してみましょう。
10. まとめ:2026年9月末まで残りわずか!忘れていた方は今すぐ要確認
2025年に入り、インボイス制度の開始から2年近くが経ちました。当初は大きく取り上げられていた**「少額特例」**ですが、日常の業務に忙殺されるうちに、意外と忘れてしまっている方が多いのではないでしょうか。
- 少額特例:税込1万円未満の課税仕入れなら、インボイス不要で仕入税額控除ができる
- 適用期限:2023年10月1日~2026年9月30日(残り1年強)
- 2割特例や変換インボイスの免除措置など、他の軽減策も併せて再確認が必須
この特例が使える期間はあと1年ほどで終わり、2026年10月以降はどんなに金額が少額でもインボイスが必須になります。慌てないためにも、今のうちから経理体制やシステム対応を再点検し、2026年10月を見据えた準備を進めましょう。
今からできること
- 自社の売上規模の確認:少額特例を使える対象かどうか
- 取引先とインボイス発行の有無の確認:仕入先が免税事業者の場合、要注意
- 会計ソフトや請求書発行ツールの見直し:少額特例・経過措置をどのように管理するか
- 補助金情報を収集:持続化補助金・IT導入補助金などでコストを抑えられる可能性
**“期限が来るまでにたっぷり時間がある”**と思っていても、1年はあっという間に過ぎてしまいます。制度が終わる直前の駆け込み対策ではトラブルのリスクも大。ぜひ、2025年の今、少額特例の存在と残り期限をしっかり認識し、必要な措置を講じてください。
この記事は2025年時点の法令や制度に基づき執筆しています。補助金や経過措置などの詳細は年度ごとに変更される可能性があるため、必ず最新の情報を確認し、不明な点は税理士や公的機関にご相談ください。
さいごに
インボイス制度は一度導入すれば終わりというものではなく、期限付きの特例や経過措置を正しく理解し、その節目ごとに見直す必要があります。「少額特例」は最も身近でありながら、最も忘れられがちな負担軽減措置といえるでしょう。
今からチェックを始めれば、2026年10月以降の大きな混乱を回避できるはずです。「そういえばそんな特例があったな」と思った今この瞬間こそ、行動開始のタイミングです。しっかり準備を整え、インボイス制度を適切に乗りこなしていきましょう。