250社以上のグループ企業の連結決算を担当した実務経験者が教える!‐連結パッケージ作成‐のポイントとデータ収集の方法

連結決算実務
‐連結パッケージ作成‐

‐連結パッケージ作成‐

はじめに:連結財務諸表作成のための連結PKG作成の重要性と目的

連結財務諸表とは、複数の会社からなるグループの財務諸表を一体化して作成することを言います。その目的は、グループ全体の財務状況を把握することです。

一つの企業だけでなく、複数の企業からなるグループになると、各企業の単独の財務諸表だけではグループ全体の財務状況を正確に把握することができません。そこで、連結財務諸表を作成することで、グループ全体の財務状況を把握し、投資家や債権者などの利害関係者に対して、正確かつ公正な財務情報を提供することができます。

連結財務諸表の作成によって、以下のような目的があります。

  1. グループ全体の財務状況を把握すること 単独の財務諸表だけではグループ全体の財務状況を正確に把握することができません。連結財務諸表を作成することで、グループ全体の財務状況を把握し、経営判断の基礎となる情報を提供することができます。
  2. 投資家や債権者などの利害関係者に対して、正確かつ公正な財務情報を提供すること 連結財務諸表には、グループ全体の財務状況が反映されます。投資家や債権者などの利害関係者に対して、正確かつ公正な財務情報を提供することが求められるため、連結財務諸表の作成は重要な役割を果たします。
  3. グループ全体の経営戦略の立案や評価に役立つこと 連結財務諸表は、グループ全体の財務状況を把握することができるため、経営戦略の立案や評価に役立ちます。例えば、どの子会社が成長しているか、どの部門が利益を生んでいるかなど、グループ全体の状況を把握することできるため、経営戦略の立案において重要な指標となります。
  4. グループ内の相互取引の情報を把握すること グループ内での取引は、単独の財務諸表だけでは把握することができません。しかし、連結財務諸表を作成することで、グループ内の相互取引の情報を把握することができます。これにより、グループ内での相互取引の適正性や公正性を評価することができます。
  5. 法的要件の遵守 法律によって、一定の条件を満たす企業グループは、連結財務諸表の作成が義務付けられています。これは、投資家や債権者などの利害関係者に対して、正確かつ公正な財務情報を提供することが求められるためです。

一方で、連結財務諸表作成には、時間やコストがかかることがあります。例えば、子会社が多数存在する場合には、各社の財務情報を個別に収集・整理する必要があり、作業量が増えるために作業期間が長くなることがあります。また、財務情報を適切に評価するためには、専門的な知識やスキルが必要であり、それを持たない人材が担当する場合には、評価が誤ったものになる可能性があります。

そこで、連結パッケージを作成して、子会社から情報を収集します。グループ全体で財務情報と開示情報を標準化したベースで収集することにより、信頼性や統一性の向上、コスト削減、規制対応の強化などのメリットがあります。連結パッケージ作成においては、これらのメリットを最大限に活用することが重要です。

‐連結パッケージ作成‐の基本的な手順と注意点

連結パッケージの作成にあたっては、以下のような手順が考えられます。

  1. 必要な情報を洗い出す まず、収集すべき財務情報や開示情報を決定し、どのような情報を収集すべきかを洗い出します。例えば、収益や利益のデータ、資産や負債のデータ、設備投資や研究開発費などの財務情報、取引先や取引内容、社員数や従業員の年収などの開示情報が含まれます。
  2. 収集する情報の種類に応じたフォーマットを作成する 収集する情報の種類に応じたフォーマットを作成します。ここで、フォーマットには、必要な情報の種類や項目、データ型などが含まれます。
  3. データ収集のためのインターフェースを構築する 子会社からデータを収集するためのインターフェースを構築します。会社によって異なりますが、電子メール、Webベースのデータ共有プラットフォーム、オンラインアプリケーションなどが考えられます。
  4. 収集したデータを格納するためのデータベースを構築する 収集したデータを格納するためのデータベースを構築します。単純にExcelを一つのシートにまとめる場合からサーバーにデータベースを構築してデータを格納したり、クラウドサービスを活用してデータを格納する場合があります。
  5. 収集したデータを連結する 収集したデータを元に、連結決算に必要な情報を集計します。ここで、会計基準に沿った集計方法や式の設定などが含まれます。収集するだけでなく、連結財務諸表作成や開示情報の集計などをある程度、自動で集計されると理想的です。
  6. レポート出力のためのフォーマットを作成する 最後に、連結決算のレポート出力に必要なフォーマットを作成します。ここで、必要な情報の種類や項目、表の形式などが含まれます。

上記の手順に従って、子会社から必要な財務情報や開示情報を収集するための連結パッケージを作成することができます。効率的な連結パッケージを作成には、財務経理の高度な知識だけでなく、ちょっとしたプログラミングやデータベース設計の知識などのITスキルが必要となるため、適切なスキルを持った人材を揃える必要があります。

報告してもらう必要な情報を洗い出す方法 ‐連結パッケージ作成‐

連結パッケージ作成のために、子会社から報告してもらう必要な情報を洗い出すことが重要です。以下の事を抑えておくと良いでしょう。

  1. 会計基準を把握する:会計基準には、IFRS、US GAAP、J-GAAP、会社法に伴う基準などがあります。各会計基準には、収集する情報の種類や報告形式などが異なるため、会計基準に伴って収集する情報を把握しておく必要があります。
  2. 財務諸表の収集:連結パッケージを作成するには、各子会社から財務諸表を収集する必要があります。財務諸表には、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー情報などが含まれます。また、財務諸表の過去数年分を収集する必要があります。
  3. 非財務情報の収集:連結パッケージには、財務情報以外の非財務情報も含まれます。例えば、子会社の事業概要、リスク管理情報、社員数や従業員の質、将来の展望などです。金融商品取引法や会社法に基づく「法定開示」(有価証券報告書、目論見書等)、金融商品取引所の定める適時開示規則に基づく「適時開示」(決算短信、コーポレートガバナンス報告書等)、企業自身が任意で行う「任意開示」(統合報告書、アニュアル・レポート等)などを勉強して洗い出せるようにしておく必要があります。
  4. 関連会社の取引情報の収集:親会社と子会社、または子会社間での取引情報も収集する必要があります。関連会社間での取引は、連結パッケージに影響を与える可能性があるため、詳細な情報を収集する必要があります。
  5. 会計処理の適正性の確認:連結パッケージ作成の際には、各子会社が行っている会計処理が適正であることを確認する必要があります。適正な会計処理に関する情報は、監査報告書や子会社から提供された内部統制報告書などから収集することができます。
  6. 法的事項の確認:連結パッケージ作成には、法的な問題が生じる可能性があるため、法的な情報を収集する必要があります。法的な情報には、子会社の訴訟、紛争、規制の変更などが含まれます。

3の非財務情報というのが簿記などで勉強したこととは違い、非常に特殊な事なのでしっかりと勉強して知識を蓄えておく必要があります。開示漏れというのが非常にリスクです。

収集する情報の種類に応じたフォーマットを作成 ‐連結パッケージ作成‐

財務情報のフォーマット

財務情報については、各子会社から提出される財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー情報)があります。これらの情報を効率的に収集するためには、標準化された財務諸表のフォーマットに入力して報告してもらう必要があります。例えば、財務諸表の勘定科目を統一することで、連結合算が非常に簡単になります。

非財務情報のフォーマット

一方、非財務情報については、企業のCSR活動や環境対策、人事制度などが含まれます。非財務情報は財務情報とは異なり、定量的なデータだけではなく、定性的な情報も含まれます。項目が非常に多いためフォーマットは複数になります。効率的にするために、各社の報告内容を比較しやくするために報告書のフォーマットを統一しておくと良いでしょう。

データ収集のためのインターフェースを構築 ‐連結パッケージ作成‐

財務情報と非財務情報のデータ収集のためのインターフェースには、電子メール、Webベースのデータ共有プラットフォーム、オンラインアプリケーションなどが考えられます。

電子メール

予算がないところですと、電子メールを利用となります。四半期毎に定期的に財務諸表データをエクセルで作成した連結パッケージを報告してもらうようになります。

Webベースのデータ共有プラットフォーム

GoogleスプレッドシートなどのWebベースのデータ共有プラットフォームを利用する場合、子会社が入力した財務データをオンライン上で閲覧し、自動的に集計できるようになります。この場合も、フォーマットを定めて共有することで、正確なデータを収集することができます。

ERPのようなオンラインアプリケーション

独自で開発及びカスタマイズしたERPのようなオンラインアプリケーションを利用する場合、子会社からデータを自動的に取り込んで集計することができます。この場合、財務データだけでなく、非財務情報の収集も容易になります。

収集する情報の種類や方法が増えれば増えるほど、時間とコストがかかりますので自動化の程度などが異なってきます。会社に合わせて最適な方法を選択し、財務情報と非財務情報の収集を行うことが重要です。

収集したデータを格納するためのデータベースを構築 ‐連結パッケージ作成‐

Excelによるデータ管理

一番、簡便な方法ですとExcelによる管理となるのでしょうが、複数のExcelファイルが混在するので子会社が多くなればなるほど財務情報・非財務情報データの管理は非常に複雑になります。子会社が数社ぐらいであればこれでも問題ないでしょうが、ミスが起こりやすい状態ではあります。

社内サーバーにデータベース構築

社内のサーバーにデータベースを構築して、オンラインで財務情報と非財務情報を取得したらデータベースに直接データが格納するという方法もあります。これですとわざわざデータをまとめる必要がないのでミスが軽減されます。何かミスがあれば入力した子会社に直接修正してもらうことができますので、連結担当者の手作業ミスを回避でき、チェックのみに集中できます。

外部のクラウドストラテジー

昨今では、クラウドによる連結作業というのも行われています。外部のクラウド連結ソフトを活用してオンライン上ですべて完結します。ソフトウェアをパソコンにインストールせずにできるのでどこからでもデータベースにアクセスが可能です。

収集したデータを連結する ‐連結パッケージ作成‐

Excelによる連結精算表

予算がないところですと、Excelによる連結精算表をつかって、連結財務諸表作成を行ったり、連結キャッシュ・フロー計算書を作成したりしますが、連結担当者においては非常に負担のかかる作業でしょう。かなりのExcel力が求められたりしますし、集計ミスが発生する可能性が高いです。

連結ソフトウェア

データベースに格納した財務情報と非財務情報データに連動した連結ソフトがあれば、設定した計算式によって連結財務諸表や連結キャッシュフロー計算書が作成されます。また、非財務情報も比較された状態で出力されますので、記載がしやすくなります。

レポート出力のためのフォーマット ‐連結パッケージ作成‐

開示作成支援システム

金融庁の電子開示制度(EDINET)によって、有価証券報告書等の全ページがXBRL化され電子化されました。XBRLで有価証券報告書等を作成するために開示作成支援システムがないと非常に難しいです。

開示作成支援システムには、PRONEXUS WORKSX-Smart.があります。一般的には、このどちらかの支援ソフトを使って、「EDINET」に提出する各種報告書類をXBRLデータで作成します。有価証券報告書等のフォーマットをこのソフトを使って作成しておく必要があります。

連結パッケージもこちらのフォーマットを意識して作成しておくと非常に効率的になります。

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