『ユダヤの商法』
藤田田が説く
78対22の法則・女と口を狙う秘訣・憧れ心理
を活かす最強ビジネス戦略
はじめに
「日本マクドナルドの創業者として知られる“商売の神様”藤田田(ふじた でん)」。彼が約半世紀前に世に送り出したビジネス書『ユダヤの商法』は、多くの起業家や経営者にとって“金儲け”のバイブルとして語り継がれています。本書では、ユダヤ人から学んだと言われる商売のエッセンスをふんだんに盛り込み、実際に大成功を収めた藤田田の体験が赤裸々に紹介されています。
なぜ今でも『ユダヤの商法』が読まれ続けているのか? それは、時代の変化を超えて通用する普遍的な“お金の原理原則”がぎっしり詰まっているからです。今回はその中から、特に現代のマーケティングやビジネスにも応用しやすい3つの鉄則「78対22の宇宙法則」「女と口を狙え」「憧れ心理」を中心に解説していきます。
さらに、ただ単に原則をなぞるだけでなく、2020年代以降にも活きる形でアップデートした考え方や具体例を交えながら、いかにしてビジネスを加速させるかを探っていきましょう。この記事を読めば、あなたも“銀座のユダヤ人”と呼ばれた藤田田の思考回路や『ユダヤの商法』のエッセンスをつかみ、明日から使えるマーケティング戦略のヒントが得られるはずです。
1. 『ユダヤの商法』とは何か?
『ユダヤの商法』は、1970年代に藤田田が書き上げたビジネス書でありながら、いわゆる“自己啓発書”としても読まれるほどのパワーをもっています。ユダヤ人といえば、世界人口のわずか 0.2% にも満たないにもかかわらず、ノーベル賞受賞者の約40%を占めるとも言われるほど突出した才能を誇る民族です。Google創業者であるラリー・ペイジや、Facebook(現・Meta)を立ち上げたマーク・ザッカーバーグ、天才物理学者アインシュタインなど、名だたる人物がユダヤ系として知られています。
彼らは国や民族の血筋を超えて「ユダヤ教」という宗教的バックボーンによって結束し、タルムード(ユダヤ教の経典)を中心に“お金”や“知識”の扱いを学んでいます。藤田田はアメリカ占領下の1950年頃、GHQで通訳のアルバイトをした際に、下級兵士でありながら羽振り良くリッチな生活を謳歌するユダヤ系軍人たちを見て衝撃を受けました。同じ黄色人種で差別対象でもあるはずの彼らが、なぜ大金を動かせるのか。その疑問から彼らに直接教えを請い、学んだのが「ユダヤの商法」だと言われています。
本書の魅力は、その教えを忠実に実践して日本マクドナルドを成功させ、さらに宝飾品や輸入業など多数のビジネスで大きな成果を上げた藤田田自身の成功談が随所に盛り込まれている点。極端で刺激的な表現も多いですが、それこそがビジネスの本質を突き、読む者を奮い立たせる要因となっています。
2. “商売の神様”藤田田とはどんな人物?
藤田田(ふじた でん)は1926年に大阪で生まれ、2004年に78歳でこの世を去った実業家です。その名を全国に知らしめたのは、日本マクドナルドの創業者としての偉業。1971年に銀座・三越デパートの一角に1号店を出店して以来、“ハンバーガー”というアメリカ的ファストフード文化を一気に日本中へ広めました。
しかし、藤田田が有名なのはマクドナルドだけではありません。大学生の頃から輸入ビジネスを手掛け、卒業後は高級宝飾品の輸入販売で大成功。豪快なキャラクターと一歩先を読むマーケティングセンスで多くの事業を立ち上げました。78歳で亡くなる時の遺産総額は491億円ともされ、当時の国内6番目という莫大な資産家だったのです。
成功を支えたのが「ユダヤの商法」に書かれた考え方です。藤田田は自らを「銀座のユダヤ人」と呼ぶほどユダヤ商法を信奉し、アグレッシブかつ緻密にお金を動かしていきました。さらに当時高校生だった孫正義(ソフトバンクグループ代表)にアメリカ留学のアドバイスを与えるなど、多くの起業家にとってロールモデルとなりました。
3. 78対22の宇宙法則:ビジネスにおける黄金比
本書で最も印象的な“怪しい”フレーズの一つに「78対22の法則で宇宙は動いている」という言葉があります。現代ビジネスシーンでは「80対20の法則(パレートの法則)」がよく知られていますが、藤田田はより厳密に「78対22」という数字にこだわっています。
3-1. 人体・空気・海と陸にも78対22のバランス
- 人体:人体の約78%は水分で、残り22%はその他の組織。
- 空気:空気中の約78%は窒素で、残り22%が酸素などその他成分。
- 地球表面:地球表面の約78%は海で覆われ、残り22%が陸地。
こうした自然界のバランスを根拠に、藤田田は「この世界(宇宙)では、何事も78対22に収束していく」という大胆な仮説を立てています。では、ビジネスにどう使うのか?
3-2. 売上の78%は22%のお得意様が支えている
本書では「売上の78%は22%のお客がもたらしている」という点に注目せよと説きます。ほとんどのビジネスでは、“ヘビーユーザー”と呼ばれる上位2割程度の顧客が売上の大半を支える構造になりやすいのです。
そのため、全てのお客に万遍なく手間をかけるのではなく、濃い顧客である22%のために特別待遇や商品ラインナップを充実させる戦略が有効。これによりリピーター化が進み、利益率を高められるというわけです。
3-3. 価格設定にも78対22を応用
藤田田は、日本マクドナルドを展開する際に「3(サン)キューセット」=390円のメニューをヒットさせました。ワンコイン500円を出すと110円のお釣りが返ってくるのですが、この390円と110円の比率は実は78対22に近い数字になっています。
「なんだか中途半端に見える価格設定」の裏にある狙いは、この“法則”に基づいて人々の感覚に心地よさを与えること。事実、390円セットは当時大人気となり、その年の流行語大賞を獲得するほどの社会現象を巻き起こしました。
4. 女と口を狙え:現代版サブスク&ターゲット戦略への応用
本書で繰り返し強調される“衝撃的”な鉄則のひとつが「女と口を狙え」です。一見すると際どいフレーズですが、狙いは明快。「金を使う人」「リピートを生む仕組み」を徹底的に取り入れろという意味です。
4-1. なぜ“女”を狙うのか?
- 家計の財布を握っているのは女性が多い
一般家庭において、夫が稼ぎ、妻が家計を管理するケースは少なくありません。お金の最終的な使い道を決定しているのは女性の場合が多いわけです。 - 女性は付加価値に敏感
ブランドや流行、デザイン性など「プラスアルファの価値」に男性よりもお金をかける傾向があります。そのため、高付加価値の商品でも買ってもらえる可能性が高まるのです。
藤田田自身、マクドナルドをはじめる前は「高級宝石販売」で莫大な利益を上げました。高級宝飾品はまさに「女性向け」の商品であり、しかも高価格帯でも需要が高いという商売です。
4-2. なぜ“口”を狙うのか?
- 口に入るものは消耗が早い
食べ物や飲み物、あるいは嗜好品や医薬品など、人の“口”に入るものはすぐに消費され、再購入(リピート)が発生しやすいのが特徴です。これは一度販売すれば長く使われる耐久消費財と比べて売上が安定し、拡大しやすい強みといえます。 - マクドナルドの成功事例
ハンバーガーは食べれば数時間後には体外へ排出され、また買いに来なければ味わえない。こうした“商売サイクル”が早い商品こそ、大きな利益を生みやすいのです。
5. 憧れ心理を活用しろ:大衆の“本物志向”より“ブランド志向”を突く
3つ目の鉄則は「人は本当の価値ではなく、憧れにお金を払う」というものです。本書の有名な逸話として「豊臣秀吉にとんでもない値段で売り付けた壺が、実は欧州で“トイレの便器”に使われていた」という話があります。結局のところ、真の機能性より「これは海外の珍品で、めったに手に入らない価値がある」といった“見せ方”こそが、価格を釣り上げる鍵になると藤田田は喝破しているのです。
5-1. まず金持ちに流行らせろ
藤田田は「大衆向けにすぐ薄利多売をするのは、商売下手のやることだ」と語っています。むしろ、お金持ちやセレブ層に先にブームを作ってしまうことで「高級感」を醸成し、大衆が「憧れ」を抱くように仕向けるほうが長期的に儲かると考えました。
- 大衆に流行るものはブームが短い
すぐに一般人の手に渡ると、大抵の流行は1年ほどで終わります。 - 金持ちや海外でのブームは長持ち
「あちらの国では話題」「都会の富裕層が熱狂」といった情報に触れると、大衆は一気に「自分も欲しい」と憧れを抱きます。購買意欲は数年かけて高まり、その分しっかりとブランド価値を高められるわけです。
5-2. マクドナルドは“薄利多売”ではない?
マクドナルドは安価なハンバーガーを大量販売する“薄利多売”の代名詞のように思えますが、藤田田によればそれは誤解。当時の本社との交渉力を駆使して、パティやバンズ、紙コップなどを非常に安価に仕入れることで、実は大きな利益を確保していました。
ユダヤの商法では「たくさん売れるなら、もっと高い利益を乗せるべき」という発想が基本。「利益が大きい商品を薄利価格で売るのは論外」というのがスタンスです。数を売るほど利益が薄くなるのではなく、数を売るからこそ厚い利益を確保する――“これが本当の高回転ビジネス”だと語っています。
6. 『ユダヤの商法』で語られるユダヤ人の強さ:タルムードの教えとは?
書名にもなっている「ユダヤの商法」は、ユダヤ教の教典である“タルムード”に由来しているとされています。タルムードには、お金に関する格言や商売哲学が無数に詰め込まれ、子供の頃から繰り返し叩き込まれます。
ユダヤ人は歴史的に迫害を受けてきたため、土地や武力に頼れず“商売”と“金融”によって生き延びてきた背景があります。そのため、「頭と信用さえあればどこでも稼げる」ノウハウを血肉化しているのです。藤田田はそれらの教えに衝撃を受け、日本の常識と異なるダイナミックな金の動かし方を学び取ったといいます。
7. 藤田田式・お金儲けの本質:お金はあくまで手段である
『ユダヤの商法』はそのタイトルから誤解されることもありますが、決して「金の亡者になれ」と教えているわけではありません。むしろ、本書には「働くために食うな、食うために働け」という言葉も出てきます。
これは、“仕事を早く片付けるために立ち食いそばで済ませるような生活は本末転倒だ。食事を楽しむためにこそ仕事をするべきだ”という意味。ユダヤ人の商売観は、あくまで「お金は手段であって、人生の目的は豊かな暮らしを楽しむこと」という思想に根差しています。
7-1. 藤田田は日本の“早寝早起き早飯”を嫌った
日本には「早起きは三文の得」「仕事優先、食事は二の次」という美徳が根強くありますが、藤田田はこれを「貧乏根性」だとバッサリ否定。仕事で成果を出すなら、まず自分が楽しむ贅沢を知ることが大事と説きます。
7-2. 金儲けをゲームのように攻略せよ
“稼ぐこと”自体はゲームの攻略法と同じで、知れば知るほど上達していきます。ただ、そのゲームをクリアした先に待つのは“自分の人生を豊かにすること”。お金に振り回されるのではなく、あくまでお金を活用してこそ真のビジネスマンだと言えるでしょう。
8. まとめ:金儲けは手段、人生を謳歌することがゴール
最後に、本記事のポイントをおさらいしましょう。
- 『ユダヤの商法』はなぜ根強い人気か?
- ユダヤ人のタルムードの教えをベースに、藤田田が実践して得たビジネスノウハウが凝縮。
- 銀座のユダヤ人と呼ばれたほど、その内容を自分のビジネスで活用し、日本マクドナルドなどで成功を収めた。
- 藤田田はどんな人物か?
- 輸入ビジネスや宝飾品販売で大成功し、後に日本マクドナルドを創業。
- 世界を股にかけた交渉力とマーケティングセンスで莫大な利益を手にした実業家。
- 3つの鉄則を現代のビジネスに活かすには?
- 78対22の宇宙法則:
- ビジネスでも上位2割ほどの顧客が売上の8割を支える傾向。
- ターゲティングや価格設定にこの比率を意識するとヒットを狙いやすい。
- 女と口を狙え:
- 家計を握りやすい層を狙う&消耗スピードが早くリピートされる商品を扱う。
- 現代でいえば「お財布がゆるい層 × サブスク」のような仕組み作りが重要。
- 憧れ心理:
- 人は本当の価値ではなく、“希少性”や“ブランド感”に惹かれてお金を使う。
- まずは金持ちや海外での流行を作り、大衆に向けてブームを波及させると長期的に儲かる。
- 78対22の宇宙法則:
- お金は手段であって目的ではない
- 金儲けを人生そのもののゴールにすると、本末転倒になりがち。
- 人生の豊かさや楽しみを充実させるために、ユダヤの商法を活用すべきだというのが藤田田の考え方。
こうした原則は、時代やテクノロジーが変わっても応用可能です。新たなマネタイズの仕組み(サブスク、D2Cなど)に置き換えれば、より多くのチャンスが転がっているとも言えます。ぜひ、この“ユダヤの商法”の要点を自身のビジネスに落とし込み、楽しむように攻略していきましょう。
さらに学ぶには
『ユダヤの商法』本書を読む
過激な言い回しやエピソードが満載なので、いっきに読めるはずです。書店やオンラインストアで今でも入手可能。
藤田田の自伝や関連書籍
藤田田自身の自伝やビジネス論を補足的に読むと、彼のマインドセットがより深く理解できます。
ユダヤ人関連のビジネス本やタルムード解説本
もともとのタルムードの教えがどのようにビジネスへと転用されているのか、背景知識も得られます。
終わりに
現代のビジネス環境は、SNSの発展やAI技術の進歩により、かつてないスピード感で変化しています。しかし『ユダヤの商法』のエッセンスは色褪せるどころか、いっそう輝きを増していると言えるでしょう。なぜなら、78対22の宇宙法則や憧れ心理といった人間の根源的な欲求や行動パターンは、最新技術に左右されにくい“普遍的なルール”だからです。
結局、お金をどう稼ぎ、どう使うかは一人ひとりの生き方そのものを映し出します。あくまで仕事は人生を楽しむための手段。ユダヤ人が長年培ってきた商売の知恵を学び、藤田田のように大胆かつ柔軟に応用できる人は、きっとこの先も新しいビジネスチャンスをつかめるはずです。あなたも“銀座のユダヤ人”の思考回路を取り入れて、明日からのビジネスを飛躍させてみてはいかがでしょうか?