法人税をざっくり計算!
税理士に頼らず
自分で税額を把握する方法
「うちの会社、税金っていくら払ってるんだ?」
中小企業の経営者であれば、一度は頭を悩ませるこの疑問。
税理士に丸投げで、何となく税金を払っているという方も少なくないのではないでしょうか。
しかし、税金は会社の利益を左右する重要な要素。
税金の仕組みを理解し、少しでも節税に繋げることができれば、会社の成長を加速させることも可能です。
この記事では、元IT大手上場企業の財務経理幹部であり、現在は「エンジョイ経理」編集長を務める筆者が、顧問税理士にチェックポイントを聞いて中小企業の法人税をざっくりと計算する方法を徹底解説します。
難しい税法の知識は一切不要。
「税金のことはよくわからない…」という方でも、この記事を読めば、法人税の計算を自分でできるようになります。
なぜ法人税を理解する必要があるのか?
法人税は、会社の利益に対して課税される税金です。
利益が大きければ税金も大きくなり、会社のキャッシュフローを圧迫する可能性があります。
しかし、税金の仕組みを理解すれば、合法的に節税することも可能です。
具体的に、法人税を理解することで得られるメリットは以下の通りです。
- 節税対策: 無駄な税金を払うことなく、会社の資金を有効活用できる
- 経営判断の精度向上: 利益と税金の関係を理解することで、より正確な経営判断ができる
- 税理士とのコミュニケーション円滑化: 税金の仕組みを理解することで、税理士とより建設的な話し合いができる
- 資金繰りの安定化: 税金の額を事前に把握することで、資金繰りの計画が立てやすくなる
この記事では、難しい税法の専門用語は極力使わず、中小企業の経営者が「これなら自分でも計算できる!」と思えるような、わかりやすい解説を心がけています。
法人税とは?中小企業が知っておくべき基本の「き」
法人税とは、会社が事業活動によって得た利益に対して課税される税金です。
個人事業主の場合には所得税が課税されますが、法人の場合には法人税が課税されるという違いがあります。
法人税の種類:法人税だけじゃない!?
会社が支払う税金は、法人税だけではありません。
法人税に加えて、以下の税金も支払う必要があります。
- 法人住民税: 法人の所在地である都道府県や市区町村に納める税金
- 法人事業税: 法人の事業活動に対して課税される税金
これらの税金は、法人税と合わせて「法人税等」と呼ばれることがあります。
法人税の計算の基礎:利益から算出される
法人税の計算は、会社の利益を元に行われます。
具体的には、以下のステップで計算を行います。
- 会計上の利益を算出: 売上から経費を差し引いた利益を計算します。
- 税務上の所得を算出: 会計上の利益に税務上の調整を加えて、所得を計算します。
- 法人税額を算出: 所得に法人税率をかけて、法人税額を計算します。
税務上の調整とは?:会計上の利益と税務上の所得の違い
会計上の利益と税務上の所得は、必ずしも一致しません。
税法上、経費として認められないものや、逆に税法上、利益に加算しなければならないものがあるためです。
例えば、以下のような項目が調整対象となります。
- 交際費: 税法上、一定額までしか経費として認められない
- 減価償却費: 税法上の減価償却方法と会計上の減価償却方法が異なる場合がある
- 寄付金: 税法上、一定額までしか経費として認められない
- 役員報酬: 税法上、不相当に高額な役員報酬は経費として認められない
- 税額控除: 一定の要件を満たす場合に、税額が控除される
このように、会計上の利益と税務上の所得には、ずれが生じます。
税務上の所得を正しく計算することが、法人税を正しく計算するために非常に重要です。
法人税は赤字でも払う必要がある?:均等割という税金
法人の場合、利益が赤字の場合でも、法人住民税の均等割という税金を支払う必要があります。
これは、法人が存在するだけで課税される税金であり、利益の有無に関わらず支払う必要があります。
税額は、法人の規模によって異なりますが、中小企業の場合には、年間数万円程度となることが多いです。
中小企業の法人税の計算:ざっくり計算の3ステップ
それでは、中小企業の法人税をざっくりと計算する方法を解説します。
複雑な計算は一切不要。
以下の3つのステップで、簡単に法人税を計算することができます。
- 利益を把握する: 決算書を元に、会社の利益を把握します。
- 実効税率を把握する: 中小企業の実効税率の目安を把握します。
- ざっくりと計算する: 利益に実効税率をかけて、法人税をざっくりと計算します。
ステップ1:利益を把握する
まず、会社の利益を把握する必要があります。
決算書の損益計算書を参照し、「当期純利益」を確認しましょう。
この当期純利益が、法人税の計算の基礎となる利益です。
ステップ2:実効税率を把握する
次に、実効税率を把握する必要があります。
実効税率とは、法人税、法人住民税、法人事業税などを合算した、実際に会社が負担する税率のことです。
中小企業の場合、利益によって実効税率が変動します。
以下は、中小企業における実効税率の目安です。
- 利益400万円以下: 約21%
- 利益400万円超800万円以下: 約23%
- 利益800万円超: 約33%
ステップ3:ざっくりと計算する
利益と実効税率がわかれば、あとは掛け算をするだけで、法人税をざっくりと計算することができます。
計算式: 利益 × 実効税率 = ざっくり法人税額
例:利益が1000万円の場合
- 400万円以下の部分:400万円 × 21% = 84万円
- 400万円超800万円以下の部分:400万円 × 23% = 92万円
- 800万円超の部分:200万円 × 33% = 66万円
- 法人住民税均等割:7万円(概算)
- 合計:84万円 + 92万円 + 66万円 + 7万円 = 249万円
この例の場合、ざっくりと249万円が法人税となります。
補足:赤字の場合の法人住民税均等割
利益が赤字の場合でも、法人住民税の均等割(年間数万円程度)は支払う必要があります。
これは、法人が存在するだけで課税される税金です。
赤字の場合には、この均等割が、会社が支払う唯一の税金となります。
節税のポイント:800万円の壁を意識する
中小企業の法人税計算において、最も重要なポイントは「800万円の壁」を意識することです。
利益が800万円を超えると、実効税率が大幅に上昇します。
そのため、利益を800万円以下に抑えることができれば、税金を大幅に節約することができます。
具体的な節税対策としては、以下のようなものが挙げられます。
- 経費の計上漏れがないか確認する: 経費として計上できるものをしっかりと計上することで、利益を減らすことができます。
- 少額減価償却資産の特例を活用する: 一定の要件を満たす少額減価償却資産は、全額経費として計上することができます。
- 税額控除を活用する: 雇用促進税制や中小企業投資促進税制など、税額控除を活用することで、税金を減らすことができます。
- 役員報酬を調整する: 役員報酬を適切に調整することで、節税効果を得ることができます。
まとめ:法人税の仕組みを理解し、経営に活かそう
この記事では、中小企業の法人税をざっくりと計算する方法を解説しました。
法人税は、会社の利益を左右する重要な要素です。
税金の仕組みを理解し、節税対策を行うことで、会社の成長を加速させることができます。
この記事を読んだ皆様が、税金に振り回されることなく、本業に集中できることを願っています。
税金に不安を感じたら、まずは税理士に相談することも検討しましょう。
税理士は、税金の専門家として、皆様の会社の状況に合わせた適切なアドバイスをしてくれます。