【中小企業経理】
2025年は「経理の自動化」
で中小企業が生き残る！
はじめに
皆さん、はじめまして。「エンジョイ経理」編集長の○○と申します。私はかつてIT大手上場企業で財務経理の幹部として働き、数多くのDXプロジェクトを主導してきました。しかし今、こうして中小企業の方々と情報交換をする機会が増えるたび、**「使える予算が限られた状況で、どうやって経理業務を自動化するのか？」**という問いが頻繁に寄せられます。
確かに、大企業のように高価なソフトウェアやRPA（Robotic Process Automation）ツールに潤沢な資金を投入するのは難しいかもしれません。しかし、予算が乏しいからといって、経理部門の退職者続出・属人的作業・煩雑な手作業を放置すれば、企業経営に大きな支障が出ることは明らかです。
実は今、エクセル（Excel）やGoogleスプレッドシートといった、ほぼどの中小企業でも使っているツールに、生成AIを組み合わせてスクリプト（プログラム）を自動生成させるという方法が急速に注目されています。クラウド型の業務システムやRPAツールを導入しなくても、少し工夫すれば「ほぼノーコスト」で劇的な業務改善が可能な時代になりつつあるのです。
この記事では、私の大企業での経験を踏まえつつも、「ソフトウェアに大きな投資をかけられない」中小企業が、エクセル／スプレッドシート×生成AIという最低限の環境で、どうやって経理業務を効率化できるのかを、約9000字で詳しく解説します。退職者が相次ぐ経理現場をどう立て直し、少人数であっても回せる仕組みを構築するか――そのポイントを、できるだけ具体的にお伝えしますので、ぜひ最後までお付き合いください。
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第1章：中小企業の経理担当者が退職を決意する理由
大企業でも人材不足や業務過多は問題になりがちですが、中小企業ではさらに厳しい事情があります。少人数で多くの業務を兼任しているケースが多く、経理担当者が退職する原因は複合的です。
- 手作業が多く、残業が慢性化
- 紙の請求書を手入力する
- 納品書や領収書をエクセルに打ち直す
- 各種帳票をバラバラに管理している
こうした「コツコツ地味に、でも大量に発生する手作業」が、担当者の精神的な負担となりがちです。
- 引き継ぎが難しく、属人化が進む
中小企業では、経理の担当者が2～3名しかおらず、特定の人にノウハウが集中しているケースが多いです。結果、引き継ぎもままならないまま担当者が退職すると、業務が一気に回らなくなるリスクがあります。 - ITやシステム導入の予算不足
経理業務の効率化といえば、会計ソフトやクラウドシステム、RPAなどが思い浮かびますが、その導入コストやランニングコストは中小企業にとっては大きな負担。そのため、ずっとエクセルと手作業で乗り切っているところも多いのが実情です。 - キャリアパスが見えない
大企業であれば、経理部門の中に多様な専門部署があり、移動や昇進のチャンスも比較的得やすいですが、中小企業ではワンストップでなんでもやらなくてはならない分、将来的なスキルアップや資格取得の支援体制が脆弱（ぜいじゃく）です。その結果、優秀な若手が「将来が見えない」と退職してしまうことがあります。 - 経営陣の理解不足
経理は「ミスなく確実にやって当たり前」という風潮が強いため、経営者からは新しいシステムやツールの導入に否定的な態度をとられることもしばしば。これは担当者にとって大きなストレスとなります。
第2章：中小企業にも押し寄せる2025年の波
中小企業だからといって、外部環境や制度改正、テクノロジーの進化の波を避けられるわけではありません。2025年にかけて、以下のような変化が加速していくと考えられています。
1. 電子帳簿保存法やインボイス制度対応の厳格化
日本国内では電子帳簿保存法やインボイス制度が段階的に導入・厳格化され、紙ベースの請求書や領収書の取り扱いが一層難しくなってきています。対応しきれないと税務リスクや信用問題にも直結します。
2. 資金繰りの見直しとキャッシュフロー管理の重要性
コロナ禍以降、金融機関からの貸し出し条件が厳しくなっている一方、原材料高や為替の変動も激化しており、中小企業にとってはキャッシュフロー管理の精度が死活問題です。正確でリアルタイムな数字把握が求められます。
3. 人材採用難と即戦力期待
若年層の人口減少に伴い、特に地方の中小企業では人材確保が困難です。「一人が幅広く業務をこなしつつも、業務を自動化して効率化する」ことが生き残りの鍵になります。
4. 生成AIの普及
ChatGPTをはじめとする生成AIの進化はすさまじく、2025年にはさらに精度が向上すると予測されています。IT予算が乏しくても、ネット環境さえあれば無料または低コストで利用できるサービスが増え、業務効率化のハードルが一気に下がる可能性があります。
第3章：エクセル／スプレッドシートと生成AIの連携で何が変わるのか
ここからが本題です。中小企業の多くが使っているツールといえば「エクセル」もしくは「Googleスプレッドシート」。そして、急速に進化している「生成AI」。この2つを組み合わせると、どのようなシナジーが生まれるのでしょうか。
1. データ入力と集計の自動化
これまで経理担当者の時間を奪い続けてきた「手入力」と「集計作業」。たとえば、エクセルで売上データをまとめていたとして、毎月やってくる請求書や領収書の数字をひとつひとつキーボードで打ち込むのは非常に手間ですよね。
しかし、生成AIに「このPDFやスキャン画像の数値を抽出して、エクセルの特定セルに貼り付けたい」と指示すれば、OCRサービスと組み合わせて自動化シナリオを作ることも可能になります。また、エクセルのマクロ（VBA）やGoogle Apps Script（スプレッドシート用スクリプト）を、生成AIが自動生成してくれる時代です。
2. 複雑な計算式や関数の生成
VLOOKUP、SUMIF、COUNTIF……経理担当者にとってエクセル関数は日常茶飯事ですが、時には複数の条件を組み合わせた複雑な集計や、クロス集計が必要になるケースもあります。そんなとき、生成AIに「こういう条件のときに合計を求める関数を書いて」などと説明すれば、ほぼ正確な関数式やマクロを提案してくれます。
これまで書籍やネット検索で調べながら試行錯誤していた時間が大幅に短縮されるのです。
3. データの整形と標準化
中小企業では取引先から送られてくるデータの形式がバラバラで、**「同じようなデータをまとめるのに手間がかかる」**という声をよく聞きます。生成AIを活用すれば、どの列にどんな情報が入っているかをAIに説明し、「同じフォーマットにまとめたい」「日付の形式を統一したい」などと指示するだけで、自動でスクリプトを生成してくれます。
4. アラートやリマインド機能の自動化
エクセル／スプレッドシート上での数値管理だけでなく、一定の条件（売掛金の入金遅れ、月末の残高不足など）に達したらメール通知をしたり、Slackなどのチャットツールにアラートを送る仕組みがあれば業務効率は格段に向上します。
GoogleスプレッドシートとGoogle Apps Scriptの組み合わせであれば、メール送信処理はすぐに実装可能です。ここでも生成AIが役立ちます。
第4章：具体的な導入ステップ
それでは、エクセル／スプレッドシートと生成AIを組み合わせて、実際に業務を効率化する際のステップを具体的に見ていきましょう。
ステップ1：現場の業務フローを「見える化」する
- まずは、経理担当者が日々どのようなタスクを何時間くらいかけて行っているのかを洗い出します。
- 請求書の処理、仕訳の作成、支払予定表の作成、経費精算、月次決算、納税関連など、一連の流れと所要時間を可視化しましょう。
これにより、「どの作業を自動化すればもっとも残業を削減できるか」「どこでミスが多発しているか」が明確になります。
ステップ2：小さな部分から自動化の実験をする
- いきなり全面的な自動化を狙うと、担当者が抵抗を感じたり混乱したりすることがあります。
- たとえば、「請求書の金額をエクセルに転記する作業だけ、自動化してみる」など、小さな成功事例を積み重ねるアプローチがおすすめです。
生成AIを活用してエクセルのマクロやGoogle Apps Scriptを組んでみましょう。失敗しても、規模が小さいのでリスクを最小限に抑えられます。
ステップ3：生成AIによるスクリプト生成を試す
- 具体的には、ChatGPTなどのAIに対して「エクセルVBAで○○という処理をしたい」「Google Apps Scriptでシートのデータをこういう形に並び替えたい」といった文章を投げます。
- するとAIが、それらしいコードを返してくれます。最初から完璧な場合もあれば、一部修正が必要な場合もありますが、コードを自分でイチから書くよりは遥かに時間を節約できます。
ステップ4：動作確認とテスト環境の用意
- 作ってもらったスクリプトをいきなり本番データで試すのは危険なので、必ずテスト用のシートやファイルを用意して検証しましょう。
- ここでエラーや想定外の動きがあっても、最初の段階であれば修正コストは低いです。AIに聞けば「エラーが出たんだけど、どう修正したらいい？」といったやりとりも可能です。
ステップ5：本格運用とメンテナンス
- テストを通過したら、本番データへの適用です。担当者同士で運用マニュアルを共有し、トラブル発生時の連絡ルートも決めておきます。
- スクリプトは企業のルールや制度変更に応じて随時アップデートが必要となるため、バージョン管理を行うなど、メンテナンスの仕組みを整えましょう。
第5章：中小企業だからこそ活きる「エクセル・スプレッドシート活用」のメリット
大企業ではすでにクラウドERP（Enterprise Resource Planning）や高価なRPAツールを導入しているところも多いですが、中小企業は必ずしもそうした解決策が最適とは限りません。エクセル／スプレッドシートにこだわることには以下のようなメリットがあります。
- 導入コストがほぼゼロ
- Microsoft 365（旧Office 365）やGoogle Workspaceの利用料が多少かかる場合はありますが、高価な専用システムよりは圧倒的に安いです。
- フリーランスや個人事業レベルであれば、Googleスプレッドシートは無料プランでもある程度利用できるので、初期投資ほぼゼロでスタート可能。
- 担当者の習熟度が高い
多くの経理担当者は、日々の仕事でエクセルを使い慣れています。新しいシステムに一から慣れるストレスより、既存ツールを活用したほうがスムーズです。 - 汎用性が高く柔軟にカスタマイズできる
エクセルやスプレッドシートの良いところは、**「思いついたらすぐに数式を追加したり、レイアウトを変えられる」**点です。クラウドERPではカスタマイズに大きなコストがかかる場合がありますが、エクセル・シートならスクリプトを少し変えるだけで対応できます。 - 他のツールとの連携が容易
Googleスプレッドシートを使えば、GoogleフォームやGoogleカレンダー、Gmailなどのサービスと連携しやすいのが強みです。メール通知、ファイルの自動保存などもスクリプトで簡単に設定できます。
第6章：実際にあった「エクセル×生成AI」活用事例
ここでは、私が中小企業のDXを支援する中で見聞きした、いくつかの具体的な事例をご紹介します。どれも高価なシステム導入なしで実現できたケースばかりです。
事例1：請求書の合計金額と消費税額を自動で計算・仕訳作成
- 背景: 請求書のPDFを印刷し、担当者がエクセルへ手入力していた。作業時間が膨大でミスも多い。
- 導入内容: 生成AIで「PDFから金額を抽出し、消費税を○％として合計金額と税額を別セルに書き込むVBAマクロを作って」と依頼。数回のやり取りで動くマクロを完成させ、請求書1枚あたりの入力作業が数十秒で完了。
- 効果: 月に数十時間かかっていた作業が大幅に削減され、担当者の残業がほぼゼロに。ヒューマンエラーも激減した。
事例2：支払予定表の自動更新とリマインド
- 背景: エクセルで支払予定表を作っていたが、支払日が近づいても誰が何を確認していいのか曖昧。うっかり支払遅延が発生することもあった。
- 導入内容: GoogleスプレッドシートとGoogle Apps Scriptを連携。日付が近づいたら担当者へメール通知やSlack通知が行くように設定。生成AIを使い、必要なスクリプトを自動生成。
- 効果: リマインド漏れが減少し、支払ミスがゼロに。担当者は余裕を持って支払い処理を行えるようになった。
事例3：経費精算フローの自動化
- 背景: 紙の経費精算書を社員から集めてエクセルに転記する手間が大きい。
- 導入内容: Googleフォームで経費精算入力を受け付け、スプレッドシートにデータが蓄積されるよう設定。そこからApps Scriptで仕訳データを自動生成して、会計ソフトにインポート可能なCSVを吐き出す。生成AIを使ってスクリプトの試作品を作り、担当者が微調整。
- 効果: 完全にペーパーレス化。担当者はチェック作業に集中できるため、承認もスピーディに行えるようになった。
第7章：中小企業が抱えやすい「AI導入」への不安と対処法
エクセルと生成AIの連携は便利ですが、中小企業の経営者や担当者が抱える不安も大きいです。ここでは、よくある不安とその対策例を整理します。
- 「AIに仕事を奪われるのでは？」
- 実際には、AIによる自動化によって削減されるのは「繰り返し作業」や「単純入力作業」です。人間にしかできない判断・交渉・分析などに時間を回せるようになると考えれば、むしろ仕事の質が向上します。
- 中小企業では人手不足が慢性化しているため、AI導入による業務削減は歓迎すべきメリットです。
- 「セキュリティは大丈夫？」
- 公開の生成AIに企業情報をそのまま入力するのはリスクもあります。機密情報を含むデータは伏せ字にする、要点だけで質問するなど、一工夫が必要です。
- また、クラウド上でスクリプトを動かす際には、権限管理やアクセス制御をしっかり設定することでリスクを抑えられます。
- 「導入後のトラブルに対応できるか不安」
- スクリプトのエラーや、AIの誤った提案に対する修正は必要です。ただし、生成AIを活用すれば不明点を再度質問しながら解決策を見つけやすいという強みもあります。
- また、コードのバージョン管理をGitHubなどで行い、動作確認用のテスト環境を用意しておくと安心です。
- 「従業員が使いこなせるか？」
- 若手社員なら比較的抵抗感が少ないかもしれませんが、ベテラン社員ほど新しい技術に苦手意識を持つ場合があります。
- まずは勉強会や小規模の導入テストを通じて、「思ったより簡単」「確かに作業が減ってラク」という成功体験を積んでもらうのが効果的です。
- 「予算がない」
- 生成AIの導入そのものには、大規模なシステム投資は必要ありません。ChatGPTの無料プランや、Google Apps Scriptは基本的に追加コストなしで使えます。
- 一部有料プラン（ChatGPT PlusやMicrosoft 365など）を使う場合でも、大企業向けRPAツール導入に比べれば圧倒的にコストを抑えられます。
第8章：中小企業の経理担当者が目指すべきキャリアパス
経理担当者として、エクセル×生成AIのスキルを身につけることで、自身のキャリアにも新たな可能性が開けます。
- 経理×業務改善リーダー
- 中小企業にとって、「業務を最適化できる人材」は宝のような存在です。単なる数字の管理ではなく、ツールを駆使して仕事の進め方を変えられる人は重宝されます。
- 経理だけでなく人事・総務など他部門の自動化も牽引できれば、社内での存在感は飛躍的に高まるでしょう。
- 経営企画や管理部門へのステップアップ
- 日々の経理データを自動化し、可視化・分析ができるようになると、経営企画的な視点も自然に身についてきます。**「数字をどう見るか」「経営判断にどう活かすか」**を提案できるようになると、経営層からも信頼を得られます。
- フリーランスやコンサルタントへの道
- 自社で培ったDXノウハウを、他の中小企業にも展開したいと考えて独立する方もいます。特に地方や特定業種には、エクセル／スプレッドシートしか使っていない会社も多く、生成AIを組み合わせた提案ができる専門家は大いに求められています。
- 大企業やスタートアップへの転職
- 中小企業で現場を知り、限られた予算での効率化ノウハウを身につけた人材は、大企業やスタートアップでも活躍できる可能性があります。組織のスケールは違っても、**「どうやって業務フローを自動化するか」**という本質は共通だからです。
第9章：まとめ―中小企業こそ「エクセル／スプレッドシート×生成AI」で勝者に
それでは、本記事の要点をおさらいしましょう。
- 中小企業の経理担当者が退職を決意する背景
手作業の多さ、属人化、IT予算不足、キャリアパスの不透明さなど、多面的な課題が山積しています。 - 2025年に向けた外部環境の変化
電子帳簿保存法やインボイス制度の厳格化、資金繰りの重要性、人材採用難など、中小企業も無視できない変化が加速していきます。 - エクセル／スプレッドシートと生成AIの連携
- 手入力や集計の自動化
- 複雑な計算式や関数の自動生成
- データの整形や標準化
- アラート・リマインド機能
これらをほぼノーコストで実現できる可能性が高いです。
- 具体的な導入ステップ
- 業務フローの「見える化」
- 小さく実験し、スクリプトを生成AIに作らせる
- テストを経て本番運用
- 継続的なメンテナンスとアップデート
- 中小企業におけるメリット
- 低コストかつ既存のエクセル資産を活かせる
- 担当者の抵抗感が少ない
- 柔軟にカスタマイズ可能
- 他ツールとの連携もしやすい
- 導入に対する不安と対処法
- 仕事の奪取ではなく業務の効率化
- セキュリティ対策は注意深く
- AIのエラー修正はやりとりで解決可能
- 社員教育と小さな成功体験で抵抗感を減らす
- 経理担当者のキャリアパス
- 経理×業務改善リーダー
- 経営企画や管理部門への展開
- フリーランスやコンサルタントとして独立
- 大企業・スタートアップへの転職
大企業とは違って、**「少ない予算」「少ない人材」**でやりくりしなければならない中小企業こそ、エクセル／スプレッドシートと生成AIという手軽かつパワフルな組み合わせをフル活用して、2025年以降の変化に備えるべきです。先行して導入すれば、同業他社に対して大きなアドバンテージとなる可能性も十分あります。
何よりも、毎日の忙しい手入力作業や紙ベースのやりとりが減り、**「人間にしかできない判断」や「付加価値の高い仕事」**に時間を割けるようになるのは大きな魅力です。仕事の質が高まり、退職率の抑制や、採用時の企業イメージ向上にも寄与するでしょう。
この記事をきっかけに、ぜひ「エクセル／スプレッドシート×生成AI」の世界に足を踏み入れてみてください。最初は小さな一歩で構いません。この一歩が、あなたの会社と経理担当者の未来を大きく変えるかもしれません。
免責事項
- 本記事は筆者の経験や知見に基づく一般的な情報提供であり、特定の経営判断や投資を推奨するものではありません。
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